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マンション管理組合の役員が知っておくべき管理会社との委託契約

1、再委任の契約について

マンション管理業の再委任契約のイメージは右図のようになります。
業務の一部を他の会社にお願いすること再委託、再委任と言います。
皆さんが押さえるポイントは2つです。

1、委任には管理組合の承認が必要です。

2、再委任先が起こした被害の責任は管理会社に求めることができます。

契約段階で再委託先が決定していれば契約書内に記載されます。
また途中で再委託先を変更する場合については重要事項説明と契約書の再契約が必要になります。

再委託のイメージ

再委託先が皆さんに被害を負わせた場合、委託先への責任請求ができるのはもちろんですが、管理会社への責任を求めることが出来ます。
損害請求も同じです。

2、報告義務について

管理組合(委任者)から状況の報告指示があった時は、管理会社(受任者)は報告義務があります。
また、契約終了時には業務の終了報告を行う義務もあります。

委託契約の報告義務の基本は以上の2つですが、マンション管理委託契約の場合は、契約書内に定期的な報告義務を特約事項として定めるのが一般的です。
管理組合の規模によりますが標準委託契約では1カ月毎に報告することを明記しています。

管理組合は各組合の年度末に区分所有者に対して収支決算報告を行う義務があり、管理会社がサポートをします。(実際資料の作成等は管理会社が行います。)

そのため、収支決算報告後に契約書内記載された業務により作成した資料等を管理組合に提出します。

皆さんに覚えて欲しいことは、疑問に思った点があれば管理会社に資料提出の請求や報告を求める権利があることです。

3、善管注意義務について

聞きなれない言葉ですよね。
民法第400条にある「善良なる管理者の注意義務」に記載されている条文です。

委託契約では受任者に求められる義務の1つで、債務者の職業や社会的・経済的地位に応じて、取引上一般的に要求される程度の注意のことをいうと記されています。

管理会社に在籍した経験者として言えることは、管理会社はこの義務に非常に神経質です。

理由は義務である以上、履行の義務があり不履行による賠償請求につながる危険性があることにあります。

よく聞く話として「台風の接近」が想定された場合、管理員に会社から「強風による物干しざおや共用廊下の傘等の危険性に関する注意」を掲示するように連絡があります。これは台風の接近が想定できる以上、危険の通知は善管注意義務に入ると考えているからです。掲示をせずに万が一事故等が起きた時の予防線とも言えます。

これは一例ですが、階段に段差がある場合などの事前に想定できる危険については管理会社は善管注意義務があることは住民として知っておくと良いでしょう。

4、委任者(管理組合)の義務について

委任者(管理組合)である皆さんにも知っておくべき3つの義務があります。

1、報酬を支払う義務
契約書に定めた報酬を決められた期日までに支払う義務があります。しかし、実際には管理費を預けているため理事長が「振込指示書」等に記名押印することで報酬は支払われます。
管理費の未納が多く不足するようなことが無いように注意は必要になります。

2、前払いや必要経費を支払う義務
管理会社から必要経費の支払い請求があった場合や業務で発生した経費が請求された時は、その期間の利息を含めて支払う義務があります。これも管理費を預けているため、その時々で管理会社から発行される「振込指示書」等に理事長が記名押印することで報酬は支払われます。利息が請求されることもありません。

3、管理会社が過失なく賠償請求を受けた時に保証する義務
管理会社に責任がない(民法では無過失と言います)にも関わらず損害賠償請求を受けるケースがあります。

具体的には理事長でもない人が理事長を名乗り第三者と勝手に契約をしたり、管理会社が手配した修繕工事が区分所有者の過失により業者に被害が発生してしまったケース。
また、管理費が不足したため未払いにより管理会社が利息等の請求を受けた場合など特殊なケースですが、管理会社も保護されるべき時には保護する必要があります。

このような場合は、管理組合として管理会社に賠償請求額を代償する必要があります。

以上がマンション管理組合の役員が知っておくべき管理会社との委託契約です。

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