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分譲マンション管理組合の監事って何するの?(1)

今回のテーマは、分譲マンション管理組合の役員職である監事について説明します。
実は「監事って何をするのですか?」って質問は意外に多く寄せられます。
「理事長、理事とは何が違うの?」「理事会に出席する必要はあるの?」「監事って何をするの?」と色々な質問がありますが、順番に幾つかのテーマに分けて説明します。

初回は理事との違いは何?を中心に説明します。

1、理事会制度を理解する

区分所有法には、管理者と法人管理組合に関するルールが定められています。
多くの皆さんが自分たちの管理組合の運営が区分所有法でどう定められているか理解できない理由のひとつです。
区分所有法で定めている内容は管理者に与えられる権利と義務になります。
以下、区分所有法で定めている管理者に関する規定です。


第四節 管理者
(選任及び解任)

第二十五条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。

 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

(権限)

第二十六条 管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。

 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。

 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。


ここで重要になるには管理者は区分所有者が選ぶこと、解任することができると言うことです。
また、不適当と判断すれば個人の区分所有者が裁判所に解任の請求ができることです。

次に重要なことは「集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。」と定めている点でしょう。

規約に定められたことは行う権利も義務もあります。規約に定めた以外のことは集会で議決によって決めることが出来るとしています。

これだけの強い権利と負担を区分所有者の一個人にすべて押付けることは現実的ではありません。

そこで区分所有法では管理組合法人の運営を方法を定めています。


第六節 管理組合法人

(理事)

第四十九条 管理組合法人には、理事を置かなければならない。

 理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。

 理事は、管理組合法人を代表する。

 理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する。

 前項の規定は、規約若しくは集会の決議によつて、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によつて管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。

 理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。

 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(第四十九条の四第一項の仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。

 第二十五条の規定は、理事に準用する。


理事ついて定めていますが、皆さんが通常行っている理事会に運用が似ていませんか?
区分所有法では区分所有者による選任で管理者を決めることができるとしています。管理者が決めらない場合として法人管理組合による管理方法で定められています。
管理者に代わりに管理組合法人を設置して運用は理事による過半数制度による方法です。
ただし、法人化にはメリット、デメリットがあるため法人化を躊躇する管理組合が大多数です。
そこで、このルールを法人化していない管理組合にも当てはめて運用する方法が理事会制度と言われる方法です。

要約すると次のようなことになります。
1、理事は区分所有者が選任する。(区分所有者の意志を加味)
2、複数の理事による過半数によって運用を行う。(理事長の暴走への歯止め)
3、マンション管理組合の代表者として理事会は理事長を選任する。(理事会の円滑な運用に不可欠)
4、理事長は対外的なマンション管理組合の代表者である。(法的・民法的に代表者は必要な存在)
5、理事長は管理者と同じ権利と義務を持つが規約で定めた以外のことは理事会、あるいは集会による議決で決める。(理事長の権利と義務の明確化)

皆さんが運用している理事会制度は区分所有法ではこのように定められていることになります。

区分所有法で定める管理者は理事長。
(権利と義務は理事長に与える)
理事長を長とする理事会は運営機関。
(意思決定は理事会による管理組合法人の運用ルールを取入れる)

それ故、管理者=理事長と言われます。
理事会制度は理解できたでしょうか。

国土交通省が指針として公表している標準管理規約には理事会制度を前提にした詳細な運用方法が定められていています。(標準管理規約は法律ではありません。)
では、いよいよ監事についてはどのように定められているのでしょうか。

2、監事とは

監事は区分所有法では次のように定めてあります。(管理組合法人の定めの中に書かれています。)


(監事)

第五十条 管理組合法人には、監事を置かなければならない。

 監事は、理事又は管理組合法人の使用人と兼ねてはならない。

 監事の職務は、次のとおりとする。

 管理組合法人の財産の状況を監査すること。

 理事の業務の執行の状況を監査すること。

 財産の状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること。

 前号の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること。

 第二十五条、第四十九条第六項及び第七項並びに前条の規定は、監事に準用する。


良く聞かれるのは、法人化されていない分譲マンション管理組合に監事は必要なのかとよく聞かれますが、答えは「必要」です。

その理由は、理事会制が管理組合法人の運用に準じて行われているためです。
監事は理事と使用人(管理会社と考えると分かり易いかもしれません。)と兼務は出来ないと定めていますが、その理由が職務と大きく関係しています。

一 財産の状況の監査
二 理事の業務の執行の監査

監事の役目は監査であると定めています。

管理組合の運営による問題で財産に損害が発生したり、職務怠慢な理事やいい加減な業務を行っていないことに監視する役目になります。

責任重大です。

そのため、与えられる権限も大きく、単独で集会(総会)を開催することが出来ると定めています。

また、平成28年に標準管理規約の改定では監事の権限を強化する条文が追加されています。(次の回で詳しく説明します。)

また、これ以外に理事長と理事会が利益相反の関係になった場合は、監事が管理組合の代表者になります。

(監事の代表権)
第五十一条 管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する

利益相反とは理事長の運営する会社が組合の修繕工事を受注するような場合のことです。
皆さんの中には「監事か~楽でいいや」なんて思っていませんか。
監事は管理組合にとって理事長に匹敵するほど重要な役職です。

これだけ強い権限を持つ監事はどのように決まれるのでしょうか。

3、監事の決め方

実は区分所有法では監事の決め方について記載はありません。

一般的に法人設立時には監事を記載する必要があり、法人化していない管理組合でも理事の選出と同時に行われることが普通です。

法人(会社組織)では社外監査役などもあり、監査の職務上、会社運営組織とは切り離した存在として置くことが一般的かもしれません。

マンション管理組合の場合は、標準管理規約に次のように定めています。


第3節 役員
(役員)
第35条 管理組合に次の役員を置く。
一 理事長
二 副理事長 ○名
三 会計担当理事 ○名
四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
五 監事 ○名
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。


理事・監事は総会で組合員の内から選任すると定めています。
また、監事は1名以上の複数の設置もできることがわかります。

ここがポイントで区分所有者(組合員)が決めるのは、複数の理事(組合の執行グループ、以下理事会)と複数の監事(執行グループの監視役)を決めていることになります。

運営側と監査役を組合員の意志によって決める仕組みになっていると言うことです。

如何でしょうか。
1回目は監事の法律上の立場とその決め方について説明しました。
次回は監事に与えられた権限と義務についてお話します。

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