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請負・売買契約の契約不適合責任を理解する(4)請求期限

請負・売買契約の契約不適合責任が発生した時の請求内容は理解できたと思います。
では、契約不適合責任はいつからいつまでに請負側に請求しなければいけなのでしょうか。

請求期限は意外に短い

売買契約・請負契約の瑕疵担保責任の請求期限については改正前民法では納品後1年と定めていました。
しかし民法改正後は、瑕疵担保責任を契約不適合責任に名称を変更、さらに不適合を知った時から1年以内と改正した点です。

改正後の不適合責任の請求期限

改正により納品がスタートではなくなったことで請求のしやすさは改善されたと言えますが、不適合に気づいたまま1年を過ぎると追完請求、減額請求、損害賠償請求、契約解除請求の権利を失う点は十分に注意をすべきです。

理事会や役員は、住民等から請負工事後にトラブルやクレームの報告があった時は、できるだけ早く請負業者に連絡を取り状況を伝えることが重要です。
その上で、まずは追完請求を行うことを覚えておきましょう。

不適合責任の免除はできるの?

売買・請負契約の不適合責任は民法に定められています。
それでは、不適合責任を免除することはできるのでしょうか。
これは可能で、発注者と受注者が同意していれば免除する特約も有効になります。

例えば「多少傷んでいるものもあるけど、味は美味しいよ、返品なしなら安くしておくよ」といった取引は日常にあります。

不適合な商品が含まれていることを承知でその代わりに安いという互いの認識が一致しているような契約をはじめ、売買当事者、発注請負当事者が相互に同意していれば不適合責任を免除することはできることを覚えておきましょう。

気づかないうちに・・

免除ができるということは重要になることは意思確認ができた上での契約かどうかということです。
不適合責任の免除は注文者が同意していることが絶対条件です。
特に高額な取引になる不動産売買契約では、売主に対して契約前に重要事項説明書の提示と説明を義務付けています。
しかし、請負契約ではその義務はありません。

理事長が契約書に署名をする時に、不適合責任が免除されていることに気づかないで契約をしてしまうがあり得ます。
契約書への署名は、事前に十分に内容を確認した上で行うことを忘れずにしましょう。
理事長は管理組合の代表者です。
理事長が不利益を受けるということは区分所有者全員が不利益を受けることになります。
その上、理事長は善管注意義務があることも忘れないでください。
一度契約書に署名をした以上、内容に同意をしたことになります。
だからこそ、専門家の必要性も認識してほしいものです。

不適合の認識

請負契約でもうひとつ注意したいことは不適合の認識のすり合わせと記録です。
これまで当事務所に寄せられた請負工事の瑕疵に関する問い合わせをまとめると次のようなケースがあります。
(代表例)
◎ 塗装の仕上がりの色
◎ 清掃後の床のカビ汚れ
◎ 植栽後の樹木の枯れ
◎ 貯水槽洗浄後の濁り水
◎ 排水管洗浄後の漏水の発生
◎ LED交換後の電球切れ
◎ 各専有部ブレーカー交換後の容量の低下

ほとんどケースは請負業者の工事不良が原因ですが、中には責任の所在が明確にできず不適合と判定ができないケースもあります。
各工事ごとにおおむね発生する不適合の内容は予想され、施工会社によってはそれらの免責を明確に記載している会社もあります。
管理組合としてはできるだけ優位な契約内容で締結したところですが、相手はその工事のプロです。
なかなか難しい現状ですが、専門家の知恵を上手に借りて最悪不利益を受けない契約にはすべきでしょうね。

時効について

不適合責任は不適合が確認されてから1年が請求できる期間です。
では不適合責任は工事後何年経っても請求できるのでしょうか。
残念ながら時効の期限があります。
消滅時効の期間は、「権利を行使することができることを知った時」から5年又は「権利を行使することができる時」から10年とされています。

請負工事で不適合工事と業者に請求できる期間は、工事が終了した後、5年と覚えておきましょう。

品確法や宅建業法で定められている瑕疵担保責任や保証期間の制限は、請負契約の不適合責任とは異なるので注意しましょう。

今回、覚えるべきことは理事会がマンション内の修繕や交換工事を行う請負工事で発生する不適合責任についてです。




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