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請負・売買契約の契約不適合責任を理解する(1)

売買、請負契約はマンション管理を行う上で日々発生する契約です。
大規模修繕と言われる大掛かりな工事には、施行会社が大規模修繕工事瑕疵保険に加入していることを確認しますことが一般的ですが、それ以外にもマンション管理組合が業者に依頼する保全、修繕はほとんどが請負契約に該当します。

請負工事とは

請負工事は「完成物や成果」に対して報酬が支払われる工事のことです。
管理組合ではメンテナンス契約、保守契約、法定点検、清掃、修繕、改修、設備の交換工事などが請負工事になります。

いずれも契約で事前に「完成物や成果」と「価格」を決めた上で契約します。

トラブルが多い契約

請負契約は「成果物と成果」が契約者同士の認識に違いがあるケースが多く、トラブルが多い契約のひとつです。
例えば清掃の契約は、どの部分をどのような方法で清掃するかを決めますが、清掃の状態を成果にすることは難しいため、清掃後の状況にクレームを起こす組合もあります。

外壁のヒビの修繕では、出来栄えが問題になることがあります。
注文者はヒビの修繕と修理部分の外観の見栄えについても成果として考えていましたが、請負側は見栄えは成果に含まれないと考えていたような場合に「色が違う」「修繕跡が目立つ」などクレームの原因になります。

修理ではよくあることですが、すでにメーカーが発売を終了した部品の交換が必要な修理はよくあります。
業者は良かれと思い代替えの部品を使用しましたが、その結果、設備が壊れてしまう等の事故が発生した場合です。
請負業者は善意で行いましたが、結果として設備は動かなくなりました。
このような場合の責任の所在を明確にすることは難しいと言えます。

マンション管理組合の理事会はこのようなことが起きる可能性があることを踏まえた契約の締結が求められます。

管理会社に依頼する時

トラブルの多い契約では管理会社にすべて一任する契約が多いようです。

理事会は管理会社を通して請負工事を行います。
この時、契約者は管理組合と管理会社になります。
管理会社は、関連会社から施工会社を選び契約します。
管理組合は再委託先を認めることで万が一の時は管理会社が責任を取る体制で修繕を行います。

トラブルのリスクは少なくなりますが、その分値段が高くなります。
「管理会社は工事費が高い」と聞きますが、そこにはリスクを含めた値段も含まれていることを理解すべきです。

直接契約

自主管理組合では直接契約が一般的です。
請負会社を自力で探し契約を確認の上、契約を締結する方法です。
複数の施工会社から見積り等を取寄せ、施行会社を決める方法です。

工事費を優先する傾向があり、しばしば成果物等でトラブルになります。
管理会社に依頼するよりも安価に済むことが多いため、一部委託管理を採用する組合でもこの方法を選択する組合があります。

この契約方法は、管理会社に調整だけを依頼し業者選定に協力を求めます。
業者選定後は、管理組合が施工会社と直接契約を締結します。
一見、良い方法に思えますが、一旦トラブルになった時の責任はすべて理事会が負うことになります。
「管理会社が良いって言ったから・・。」
そんな言い訳は通用しません。
管理会社はあくまでも調整が役目です。

まとめ

今回、理事や監事の皆さんに請負契約について民法で定める契約不適合責任について説明しますが、これは日常に発生する小さな修繕工事でも適用されます。
また、大規模な修繕工事も請負工事になります。

民法で定めている契約不適合責任を理解した上で契約を締結することはトラブル防止になるだけでなく、万が一の事態にもスムーズな解決を可能にします。

また、組合の工事だけでなく、戸々で行うリフォーム工事も同様の請負工事になります。
個人としても身につけておくべき知識です。

次回は売買契約、請負契約に当然にある権利について説明します。

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