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分譲マンション管理組合の監事って何するの?(7)監査の権限

マンション管理組合で重要な役目がある監事について説明しました。

最後のテーマは「監事がもつ権限で出来ることは何か?」についてお話しします。
監事には闇雲に強い権限を発動することはできません。
監事の権限は要件付き権限と要件なし権限があります。

要件付き権限とは「×××が確認された時には・・・・ことができる」と定められている権限です。
具体的に説明します。

監事が持つ要件なし権限について

監事の要件なし権限を表にしましたが、権利はあくまでも権利です。
行使するかしないかは監事の判断です。
ただし、強う権限を持つ役職であることは事実です。

調査権

もっとも強い権限が調査権です。
これまでも何度もお話ししましたが、無条件に理事会に対して資料や質問を行うことが出来ます。
場合によっては個々の役員に対して質問をすることが出来る権利です。調査権は不正や不誠実が確認されなくても理事会の運営状況の確認を名目に行うことができます。

また、調査権は期末に行われる会計帳簿のチェック時に使用することが出来ます。
帳簿に分からない点があれば理事会に聞くことができます。

多くの場合は管理会社のフロントが説明しますが、フロントに対しても理事会の承認を受けた上で内容の説明を請求することができます。

理事会参加権

理事会は理事会開催前に開催日時を周知する義務があります。
監事に連絡せずに理事会を開催しても開催された理事会を無効にすることは可能でしょう。

周知とは個別に連絡をすることではなく、開催日時をマンション内の見易い場所に掲示することでも可能ですが、これを実施するためにひとつ条件があり規約にその旨を事前に定めておく必要があります。

規約に定めがなく、掲示したから周知したと言っても周知行為とは認められません。 

規約に定めがある組合で掲示に気づかず「知らなかった」「気づかなかった」と抗議しても監事の善管注意義務違反と判断されるケースがあります。

監事を引き受けた方はマンションの掲示板の確認はすべきでしょう。

理事会への参加の出欠は監事が決めます。

任期中に一度も理事会に参加しない監事もいるようですが、その状況で万が一理事会の運営に不正があった場合は監事の善管注意義務違反と判断される確率は高いと言えます。

年度末に書類を確認するだけでも大丈夫と考えるのはリスクがあると言えます。

理事会発言権

理事会に出席した時は、会議の中で聞きたいことや確認したいことがあれば議長(理事長)に確認の上、発言することができます。

これを妨害すること、発言を許さない、認めないことは出来ません。

万一、このような事態が発生た場合は速やかに監事が出来る範囲で抗議を行うべきです。


監事の発言を認めなかった理事長
現在の規約に様に監事の権限が明確に示されなかった頃には監事の発言を認めなかった理事長の話はありました。

監事も明確な権限の所在がわからず、困惑していたと思います。

理事長と監事の人間関係、理事長の権限集中、理事達の仲間意識、不正の発覚への恐れなど理由は色々あったようです。

実際、この事態になった監事は孤独な立場で泣き寝入りをするケースが多いと聞きます。
できることは、理事会への文章による抗議を行った後に理事会の開催要求です。
監事の発言を拒否することは不正な運営が認められる事態です。

開催された理事会で「発言拒否への謝罪、再発防止の約束」を理事長に求めます。

これで理事会議事録に記録されます。

理事会の開催要求を無視したり、謝罪や約束が担保されない時は、理事長の理事解任を議題に臨時総会の実施を行うべきです。

かなり手荒な方法の様に思われるかもしれませんが、いずれも法律で認められている権利です。

監事の理事解任を求めた総会開催請求は判例が有、認められています。


監事が持つ要件あり権限について

理事会、総会請求権は理事会運営に不正等があった場合と明記されています。

ここで難しいのは「不正等」とかなり曖昧な書き方になっている点です。

不正等とは不正の証拠がある、不正の動きがあるなど解釈は分かれますが、調査権を持つ監事は不正の事実を理事会以外でも確認が出来る権限を与えられています。

明確な区分所有法やマンション管理適正化法、あるいは規約に違反した行為や事実があったと判断できた時に理事会に報告や進言することが開催請求権と言えます。

疑念や不信は理事会に参加、発言することで解決すべきであると言うことでしょう。

まとめ

7回にわたりマンション管理組合における監事について説明してきました。

監事は理事同様に総会で選ばれたこと、組合員一人一人に対して委任契約があることを忘れないでください。

監事にも善管注意義務があり、理由がない理事会への不参加や未精査での監事監査報告書への記名押印は義務違反になる可能性があること。

事実幾つかの判例で監事の違反が認められていること。

監事の職は決して楽ではなく、一定の知識が求められる役職です。

穏便に何もなく任期を務められることが一般的ですが、一定のリスクがある職であり、リスクを回避するためには自分でひとつひとつの業務を行うことが重要です。

監事をしっかりと経験するとマンション管理の全体の動きがわかるようになります。

より良いマンション生活を過ごすためにも決して無駄な知識と経験ではありません。

是非、監事に選任された方はこのことを自覚して職に当ることを望みます。

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