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登-10 登記をしなくても物権が守られるケースを覚えよう(2)

民法が弱者を守るための法律だと言うことは理解できましたか。

登記は時間の経過を考慮する

不動産登記法や民法では状態は時間軸によって変化することを考慮します。
むずかしい言い方ですが、不動産登記法で権利の優先順位は届け順で決まりました。
登記は時間を非常に大切にします。

次のような例を考えてみましょう。
詐欺に遭い、所有した土地をBに売ってしまったAは多少の過失がありますが、Bより罪はありません。
例えBがだまし取った土地の登記を済ませていたとしてもAが契約の取消しを請求すれば土地はAに戻ることになります。
ただし、戻った土地の登記をAがしなければ、登記簿上はBの所有権がそのままの状態です。(ポイントは登記の状態にあります。)
このような状態にある時、Bが善意の第三者に土地を売却した場合は誰が所有権を主張できるでしょうか。

詐欺の場合の売買の悪人の順番は次のようでしたね。
詐欺
〇 被害者➡詐欺に遭い土地を失った(見抜けなかった過失)
〇 加害者➡悪者、悪人
〇 善意の第三者➡罪はない
〇 悪意の第三者➡ちょっと罪がある

前回の問題の違いは、善意のCがBから土地を購入して登記を済ませていいた場合は、Aは例え契約の取消しが認められてもCの権利を取消すことはできませんでした。

不動産登記法では、早く登記を済ませた順番になります。
と言うわけで、AとCの登記が早い者が権利を主張できることになります。

契約の取消しを請求する権利と登記を済ませ第三者に対抗できる権利は連動しません。
あくまでも取消が認められた時点でAは登記を済ませる必要が生じます。この点がよく試験に出題されます。

このように登記は時間軸を考える必要があることを覚えてください。
これは区分所有者が死亡時に管理費や賃料の滞納があった時の相続人の債務にも関係します。

時効も時間軸が重要

次に登記をしなくても第三者に物権を主張できるケースは時効です。

時効は不動産を占有していることが条件になります。
(排他的に使用していること)
占有を続けている限り、売買契約により物権が移転し、登記が行われたとしても占有状態は変わりません。
その間も時効は継続されます。
時効が成立した時(時効完成、取得時効など言います)は所有権者が誰であろうと時効成立を理由に不動産の物権を主張できます。
これが登記登録をしなくても第三者に対抗できる場合です。

ただし、このケースでも時間軸は非常に大事になります。
占有を続けている状態です。
この段階では不動産の物権はBにあります。

時効が成立した状態です。

時効の完成(援用時)は、Aが占有を始めた時から物権があったことになります。
そうなると登記簿上はBが所有権に記載され、民法上はAが物権を持つことになります。
当然、Aは時効の完成と同時に移転登記をします。
これでBの物権はAに移転します。
その際の移転理由は「取得時効」と記載されます。

もし、時効完成後にAが登記登録を行わない場合は、登記簿上はBが所有権に記載され、民法上はAが物権を持つことになり不都合が生じます。
この間にBが第三者に不動産の売買を行った時は、AとCは互いに物権の権利者になり、早く登記を済ませた者が登記上の所有者になります。

素朴な疑問
●Aは無条件に物件を主張できるわけではありません。援用する(裁判所に申立てる)ことで初めて物権を認められることになります。
●占有者Aが時効完成後に登記登録をしなかった場合、BがAに「これは俺の土地だよ、返して」と権利を主張された時に「時効完成を援用します」と裁判所に申立てればBは物権を失います。

*この問題は過去にも何度か出題されています

時効は民法で認める権利ですが、時間の要素が含まれます。
問題文では必ず「時間」を特定する表現があります。
時効完成前、時効完成後の区別をはっきりと意識して問題を解く必要があります。

共同相続の場合

登記に関わらず第三者に対抗できるケースの3つ目は共同相続です。
共同相続とはひとつの不動産を複数で相続することです。
例えば、土地を1/2ずつ相続する場合です。

原則として共同相続の移転登記登録は関係者全員の合意が必要です。
共同相続した一人が自分の分だけを移転登記することはできません。
これは重要なことなので覚えておきましょう。

しかし、例えばAが勝手にBの相続分も自分が相続したと善意の第三者Cに売却したとします。
*相続の移転登記をしないことが前提です。
Bは登記をしていません。
身勝手なAの行動でBが不利益を被ることになります。
そこで民法は、共同相続の登記が行われずに移転登記された場合にBの権利を保護するとしています。
Bは相続による登記をしなくても善意の第三者Cに対抗できます。

これも過去に出題されています。

以上3つの場合が、登記登録をしていなくても第三者に対抗できるケースになります。
いずれも重要です。
是非、身につけてください。







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