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018.019-理事会・総会の1週間の周知期間と全員参加の意味とは何か

今回は、全員が参加する理事会、総会ができることと各会の開催について周知する期間を1週間設けている意味について考えることにします。
問018、問019は同時に解答と解説します。

問題

018-組合員全員が出席する総会で緊急議案が提案され、議案が規約の改定に関する議案だった時、全員の承認があればこの議案は採択はできるか?

019-組合員全員が出席する総会で緊急議案が提案され、議案が駐輪場の使用に関する細則の改定に関する議案だった時、全員の承認があればこの議案は採択はできるか?

解答
018 できない
019 できる

問019は皆さんに考えても貰うために出題しました。
細則の内容、全員の合意があればできるケースが多くあります。

解説

区分所有法で定めた1週間の意味

区分所有法35条に集会の招集の通知について定められています。


(招集の通知)
第三十五条
 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。

 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。

 第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。

 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。

 第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。

区分所有法35条

ついでなので35条で覚えることは次の事です。

1、集会召集の通知は1週間前が基本。規約に短縮を定めることも可能。
2、日数の数え方は開催日を含めない。
(例:3月10日開催➡3月2日が期限)
3、通知先を事前に届けた場合はその住所、届けがない場合は専有部分住所
4、通知は届いた時が有効(開封の必要ない)。
5、居住している人、連絡先を届けていない人には館内の掲示で招集ができるが、その旨規約に定めている必要がある。
6、共有所有者は代表者に通知すれば良い。
7、集会の目的が次の場合は、その議案の要領(具体的内容)も通知する必要がある。
・共用部分の重大変更
・規約の設定・変更・廃止
・建物の大規模滅失の場合の復旧
・団地規約の設定
・建物の建替え
・一括建替え承認決議
いずれも特別議決以上が対象になる議案です。


1週間の猶予とは郵送で案内を送付する時の配送がされる時間的な余裕を持たせていることがわかります。
規約に定めれば日数を短縮できるとしている点からも1週間程度に特別な理由はないと推測されます。

議案の要綱の通知義務とは

次に特別議決以上が必要な議案については要領(具体的内容)の通知義務を定めています。
元々、特別議決以上が必要な議案は区分所有者にとって権利や資産に大きく影響をする議決を決定する内容です。

・共用部分の重大変更 ➡用途や構造が変わる
・規約の設定・変更・廃止 ➡住民生活ルールに影響する
・建物の大規模滅失の場合の復旧 ➡資産維持
・団地規約の設定 ➡組合運営のルール
・建物の建替え ➡資産維持
・一括建替え承認決議 ➡資産維持

このような重要な議決については総会でいきなり議案内容を聞き、判断するには考慮する時間的猶予がなく、区分所有者が冷静に判断することが出来にくいことが想定できます。
そこで事前に内容を通知することで、総会前に考えてくださいと言う配慮から設定されています。

そのため、建物の建替え等の総会では、周知期間を2カ月、1ヵ月前には説明会の開催を定めることで十分に考える時間を設けるように定め、その期間の短縮はできないとしています。

総会の周知期間と個人が検討する時間を考慮するように区分所有法では定めていることがわかりましたが、次に全員参加が持つ意味を考えてみましょう。

総会手続きを省略

区分所有法では総会手続きを省略することが可能と定めています。

(招集手続の省略)
第三十六条
 集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。

区分所有法36条

全員が同意していれば招集手続きは必要がないことがわかります。
今回の質問では総会は全員参加しています。
全員の参加であれば全員同意をその場で確認できる状況にあると言うことで
今回のケースは全員が同意しています。

例えばマンション管理組合主催のイベントで全員が参加していれば、参加者全員の同意があればその場で通知なしに総会の開催も可能と言うことです。

要綱の事前通知

では、事前に議案を知らせることについてはどうでしょうか。
特別議決以上の議案については事前に要綱を知らせることが義務でした。

問018は規約の改定が議案です。➡ 特別議決
問019は細則の改定が議案です。➡ 普通議決

規約の改定は特別議決、細則の改定は普通議決で行われ、事前に要綱を伝える義務は規約の改定にのみ適用されます。

以上の事より
問018は規約の改定が議案です。➡ 特別議決 ➡ 要綱の必要あり
問019は細則の改定が議案です。➡ 普通議決 ➡ 要綱の必要なし
となります。

全員参加の意味

開催の周知義務、要綱の事前通知にはそれぞれに意味があることはわかりましたが、全員が参加していると言う状況は、その場で全員の意志を確認できると言うことです。
特別議決が必要な議案は、熟考する時間的猶予を与える必要がありこれは法律で定めていますが、普通議決で決める内容であれば全員の合意があれば議決可能と言うことです。

ただし、「少し考える時間は欲しい」と考える人がいれば、緊急議案上程の可決に同意しなければその場での採択はできないことになります。
全員が同意していると言うことは、議案の採択の判断にそれ程考える時間は必要が無いとそれぞれが判断したことになります。

また、組合によっては規約に特別議決による決定以外は、要綱の事前通知なしに総会参加者の過半数の賛成があれば採択することができると定まている場合もあります。

理事会も準用される

理事会の開催も総会に準用されます。
元々、理事会は総会への上程案を作成する機関です。
特別議決、普通議決の区別なく議案の要綱の通知義務はありません。
そのため、理事全員の同意があれば理事会の開催は可能です。
理事会は執行機関であり、権限を規約で制約されています。
その権限以外の決定には総会議決が必要になります。
その際の上程案を話合う場であって理事会で決定されたことがすぐに履行されるわけではありません。

理事会の開催案内には慣例で話合うテーマを記載することが一般的です。
この理由は、理事の皆さんに「考えてきてくださいね」と伝えていることが目的です。
実際の理事会は管理会社から館内で発生する様々な問題が提示され、その場で方針を決定する必要があり、事前に伝えたテーマだけでは執行機関として機能しなくなります。

皆さんに理解して欲しいことは理事会の役目と総会の役目を理解すること。
その上でそれぞれの会の開催についての周知期間、特別議決の持つ意味に基いた要綱の事前通知の意味を理解することです。

注意

細則は規約に準じた大事な決めごとです。
そのため、組合によっては細則の決定を特別議決として定めているケースがあります。
この場合は事前に要綱の通知義務はあると考えるべきです。
ただし、そのことを全員に伝えた後に「それでも皆さんの同意があれば採択することも可能ですが同意いただけますか?」と確認の上採択するケースはあります。
*議事録に必ず記載する必要があります。
このことは覚えておいてください。

組合員の不利益を考える

区分所有法の定めの多くは、特定の区分所有者に不利益を与えないように定めています。
特別な影響がある人➡同意を求める
権利を限定される決定➡弁明の機会を与える
それぞれのケースを暗記することも大事ですが、わからない問題があった時の判断には不利益を与えるかどうかを考えると自然と答えはわかるはずです。




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