飛行機の安全性チェックは珍事件が盛り沢山!
こんにちは!初めての投稿です。お局CAのランです。
今回はバブル期真っ只中の新人CAの頃のお話をさせていただきます。
離陸、着陸前の魔の安全性チェック
離陸前と着陸前にキョロキョロ周囲を見回しながら機内を歩くCAの姿をよく目にすると思いますが、何をしているかご存知ですか?緊急時に備えて客室状態が安全であるかどうかの確認をしています。それを安全性チェックといいます。
全てのCAが安全性チェックOKのサインを出さないと離陸出来ない、という大事な作業です。私一人がチェックが送れると、飛行機全体の離陸が遅くなります。一刻も早くOKサインを出さなければなりません。
CAは一人前になるまで、訓練センターで様々な訓練を受けます。この安全性チェックも素早く且つ正確にできるようになるまで、何度も何度も繰り返し練習します。
「CAはサービス要因である前に保安要員である」と教官から口酸っぱく教え込まれました。訓練センターの訓練の8割は、保安の知識を身に付けるためのものです。実はサービスの訓練は2割程度なのです。CAは、飲み物やお食事を提供する以上に保安という大事な任務があるのです。
大事なことだからこそ教官も安全性チェックの訓練には力が入ります。
ベルトはねじれや緩みのないように締められているか。手荷物は通路や非常口付近ではなく物入れか前の座席の下にしっかりと納められているか。テーブルやリクライニングは所定の位置にあるか。物入れの扉はしっかりと閉められているか。。。。などなど、確認することは多項目に渡ります。
教官CAの意地悪な事例作り(愛のムチ)
訓練センターでは、空席なのにリクライニングされていたり、テーブルのロックを少しだけ斜めにしてあったり、ベルトを毛布で隠したり、教官も意地悪な事例をあれやこれや仕掛けてきます。訓練生もそんな事例を何とか見つけ出そうと必死です。
訓練中は、実際にはこんな事例はないはず、と思っていました。しかし実際の機内ではどうだったかというと…なんと!驚いたことに、訓練センターで教官が仕掛けた意地悪な事例は、実際にもよくあることだったのです。意地悪と思っていた事例は、実例に基づいた愛のムチだったのです。
多岐に渡る声掛けが身を助ける
慣れてくると目を皿のようにして、安全の漏れを確認するよりも、全体にお声掛けする方が効率的だと学びます。
「ベルトは毛布の上からしっかりとお閉めください」
「お母様がベルトをお閉めになり、その上からお子様を抱っこしてくださいね。」
「手荷物は通路ではなく物入れにお入れください。」
「非常口にお荷物を置いて行かれたお客様はどなたですか~?」
「リクライニングは離陸するまでご使用をお控えください。」
このように一人一人にお声がけをしすると、皆さんご自身の状態を確認してくれるのです。安全性に関わることは妥協は許されません。
団体のお客様は事例が豊富(苦笑)
団体のお客様で飛行機に乗り慣れない方が多い時は、搭乗してからすぐに大騒ぎです。離陸前はなんとか定時に出発できるように、時間との戦いでもあります。しかし団体の客様は気分も高揚していらっしゃいますので、離陸前にもかかわらずテーブルを出してお弁当を食べ始める方も大勢いらっしゃいました。
「テーブルは離陸してからお使いください。」
「お茶まだ?」
「お茶は離陸してからお持ちしますので。」
「テーブルないと食べづらいな。」
「あっ!割り箸落としちゃった。持ってきて。」
「あの…テーブルは上空でお使いください・・・」
「ご飯が喉に詰まっちゃう。お茶まだ?」
このようなお客様とCAのやりとりがあちらこちらで聞こえてきます。もちろんこんな時も笑顔は忘れません。ツアーコンダクター方の中には、最初から協力的な方もいれば、寝たふり(?)をして、機内のことはCAさんよろしくね~という方もいます。ツアーコンさんとの協力体制が、団体のお客様滞納の命運を分けます。
正座で孫の嫁探し
こんなこともありました。
毛布の上からしっかりとベルトはしているけど、なんか違う???
と思ってよく見てみると、横並びの3人の履き物が足元に並べられていて、肝心の脚が見えません。
(正座⁈)
(キターーーーーー訓練センターの事例!!!!教官、ありがとうございます。)
「お客様、おくつろぎのところ失礼いたします。大変申し訳ございませんが、離陸と着陸の際は正座ではなく、きちんと脚を下ろしてお座りくださいね。」
「えっ!なんて?正座ダメなの?ベルトが外れないから動けないんだけど」
「お手伝いをさせていただいてもよろしいですか?」と、こんな感じです。
そして間もなく着陸という頃に、念のためこのお客様を確認にいくと、
「お話がはずんでいるところ申し訳ございません。フライトは楽しんでいただけましたか?」
「ちょうどあんたのこと話してたところ。」
「まあ!何でしょうか。」
「うちの孫が市役所に勤めてるんだけどね。」
(やっぱりまた、正座に戻っている!!!)
「さようでしたか!まもなく着陸いたしますので、足を下ろしてベルトをしっかりとお締めください。」
「また正座ダメかい?」「はい、申し訳ございません。正座をお戻しいただけますでしょうか?」
(わ!テーブルも戻していない。)
「恐れ入ります。みかんをお手元にお持ちいただいてもよろしいですか?」
「孫はまだ独身なんだけどね。」
「そうなんですね!テーブルをもとの位置にお戻しください。」
「嫁にならんか?」
「まあ。嬉しいです。」
「28歳。179センチ。」
「座席ベルトのお手伝いをさせていただきますね。」
「顔は若い時の裕次郎そっくり。」
「素敵ですね。次回は是非お孫さんと一緒にご搭乗くださいませ。」
「タカシは真面目でね。」
「みかんのゴミはお預かりします。」
「いい子なんじゃよ。」
「その時はタカシさんと直接お話をさせていただきます。」
「タカシも喜ぶわ。」
「お会いできるのを楽しみにしております。」
せんぱいCA からの多くの学び
多くの先輩CAが、お客様とのコミュニケーションも大切にして、笑顔を絶やさず時間内に任務を遂行し、しかもそれが難なく自然にできてしまう方々でした。そんな先輩方の背中を見て学んだお陰で、自分にも同じように対応できるようになったと感じます。
まだ私が新人CAの頃は、飛行機に乗り慣れていない方がとても多かったような気がします。特にお年を召した方は初めて乗る緊張と興奮で、いつもよりはしゃいでしまう方やお守りを握りしめて目を瞑りお祈りしている方もいらっしゃいました。
到着地で、無事にランディングするとパチパチパチと拍手がおこり
「無事に着陸できてよかったねー」と喜んでいる様子を見るとなんだかほっこりしました。
今、CAを辞めて飛行機に乗った時に、訓練生バッチを付けた新人CAに遭遇するたびに、心の中で「がんばれー」と応援してしまいます。そして安全性チェックを一緒にしている気分になり未だにドキドキします。
訓練生バッチをつけている期間はOJT訓練といって、インストラクターと一緒にフライトします。その期間もいろいろありました。
その話はまたの機会にさせていただきます。お楽しみに!
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