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合法民

今回は、社会学の勉強をふわーとしていて、中国の『社区』という概念について調べていた時に思いついたフィクションです。

良ければ一読ください。
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 合法区とは、1930年代に中国の法学領域に登場した用語で、中国の学者の中ではすでに何年も前から使われているのである。
 合法区地域に人々が集まった人々を、中国の法律では合法民と定ているが、合法区のコミュニティに反旗を翻す者も、政府にはまだ残っている。
 中国都市組織に突如現れた合法民という考え方は日本及びアジア各国に影響を与えた。

 国によっては合法区対策委員会を設置し、合法民の監視を大々的に行っている組織の存在を公表している。

 問題は、合法民の行うことは、中国の法律によれば何でも『合法』となることであって、アジア諸国では、この特別な概念が世界的な組織犯罪の補助につながるとして警戒している。

「教授、合法区では、基層社会のことを農村部としていますが、これは理想的じゃないですか?」とカズは聞いた。
「確かに合法民は、自分たちの社会のことを農家基層社会と言っている。
 『合法民委員会』で定める都市部の市町村を支えるのは百姓であり、住民の全てが何かしら農業とのかかわりを持っている。
 これは驚くべきことで、合法区では完全な自給自足の社会が成り立っていることを表している」
「『合法民委員会』に属し行政の末端組織の『農業部』はいったいどんな組織なんですか?」
「それはまだわからない。
 私も実際に行ったことはないし、彼らの生活がどのようにして成り立っているのか、想像するしかない」
「彼らの言動は非常に過激で、そもそも合法区だけで自治出来ているとは思えません。
 彼らは常に戦争を謳ってしますし、暴力をよしとします」

「それについて一つだけ言えることは、彼らは反語法という法律を自分たちで作って守っていることだ。
 これは相手の言葉を、その正反対の意味で解釈しなければならない、という法律だが、これが一体なぜ制定さえるに至ったのか、彼らの真意を知る者はいないんだ」
 教授はそう言うと、鞄からペンを取り出して、カズの顔に突き立てた。

「これで今から君を刺す。
 反語法の練習だ」と教授は言った。
「え、何を恐ろしいことを言っているんですか?」
 カズは驚いた。
 ペンの先は今にもカズの目を突き刺しそうな気がした。

 教授のペンを持つ手は震えていた。
 カズは教授の気がふれた、と思った。
 すぐにでも逃げ出せるように、カズは自分の鞄に手を添えた。
「いや、待ちなさい。
 反語法を思い出すんだ。
 これは合法区の人々の日常なんだ」と教授は言って、ペンを胸ポケットに入れると、今度は紙を取り出した。

「この紙で、今度は君の指を傷つける。
 ただの紙だと思って侮ってはいけない。
 これは特殊なコーティングがされていて、人の肌なんて簡単に切れるんだ」
「さっきから、何を言っているのか僕には理解できません。
 冗談なら、笑えないですよ」とカズは言った。

 カズは本当に教授の行為を理解できなかった。
 反語法の練習?
 全く面白くもない冗談だった。
 合法民の真似なんてして何のつもりなんだ。

「そろそろ昼休みも終りますよ。
 冗談はやめて、もう少し合法民の話を聞かせてください。
 これ以上やるなら、もうここらでお暇します」
 カズは本当にすぐにでも帰りたかった。
 今日は午前中で授業は全部終わったのだ。
 昼休みに教授を訪ねたのも、『合法民について面白い話がある』と彼から誘ってきたのだ。

 教授はこれ以上は野暮だと思い、ペンをもう一度持つと、紙に文字を書きつけた。

『私は合法民ではない!』と。

 カズは紙に書かれた文字を見て、教授を見て、呆気にとられたようだった。

「つまり、合法民なんですか、あなたは...」

「違うよ...」と彼は言った。

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