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追悼。

チバユウスケ氏が亡くなりました。これは盛大なる呟きのようなものです。

昨日、仕事帰りの横浜駅のホームでスマホを開くと、Yahooニュースの通知で「The Birthdayのチバ」だけが見切れた状態でポップアップされた。

でも、なんとなく気づいてしまった。食道ガンの治療で活動休止中なのは知っていたし、Yahooニュースはチバの復帰を速報で知らせてくれるほどロックな媒体じゃない。であれば…。

嫌な予感は当たってしまった。チバユウスケ氏が55歳で死去。信じたくはないが、既に亡くなって1週間以上が経過していたから、誤報ということはない。もうあの優しく愛に溢れたダミ声が聴けないのかと思うと、大きな喪失感を感じた。

最近では映画スラムダンクの主題歌「LOVE ROCKETS」が話題だったが(と言っても10FEETの陰に隠れてしまった印象だが)、その直後に療養に入っていた。

私がチバの歌声と出会ったのは1996年、その年にTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTがメジャーデビューした。当時私は高校2年生で、世間ではbeing系から小室ファミリーに流行りが移り始めた頃だったが、捻くれ者の私は既にメインストリームのポップスより、強烈な個性を持つアーティストを探すようになっていた。地元の側のサンシャインに入っていた新生堂や池袋駅近くのP'PARCOのタワレコに通い、気が済むまで試聴機に齧り付く日々。その中に、デビューしたばかりのミッシェルのシングル「世界の終わり」があった。

イントロのギターで心をつかまれ、チバの歌声で完全に鷲掴みにされた。歌詞もメロディもカッコ良くて、一発でファンになった。

ミッシェルやROSSO、そしてThe Birthdayの楽曲は、表面は激しくて荒々しいが、その実優しくて、愛に溢れている。それはきっとチバユウスケという人間そのものなんじゃないかと思う。

ミッシェルの音楽的ルーツは1960年代辺りのガレージロックだ。そして同じように影響を受けたバンドの多くは硬派であり、わかる奴に伝われば良いというスタンスだった。それが悪いとも思わないし、ロックってそういうジャンルだと思う。けれど、チバの作る音楽には、何処か人懐っこさがあり、ロックに触れたての小僧を拒否せず、優しく引き込んでくれる。

だからこそ、硬派なロックンロールバンドでありながらセールス的にも成功したのだと言える。最初のブレイクポイントは、シングル「バードメン」でダウンタウン司会のHEY!HEY!HEY!に出演したことだろう。ゴールデンタイムの音楽番組で、黒いスーツの一見いかついあんちゃん達がダウンタウンと絡んで笑う姿は、楽曲のスタイルとは違った親近感を感じさせ、世間との距離を縮めたと思う。

ミッシェルと言うと、良くも悪くも付き纏うのがMステでのt.A.T.uドタキャン事件だ。当時世界的に人気だったロシアのお騒がせガールズユニットが、生放送音楽番組のMステをドタキャンした。私もタモリさんの「t.A.T.u.がやりたくねぇと言ってます」という言葉はハッキリと記憶にある。そして急遽穴埋めで追加演奏をしたのがミッシェルだった。百戦錬磨のライブバンドの矜持を生放送で体現した形となり、ロックファンは色めき立ったものだ。残り時間ジャストに合わせたことも素晴らしかったし、タモリさんの賞賛の言葉もやはり嬉しかった。

ミッシェル解散の理由は未だ不明。解散後に組んだのがROSSOだった。ベースに盟友である元BLANKEY JET CITYの照井利幸が参加したことも話題になった。

デビュー曲で代表曲である「シャロン」は、ミッシェル時代よりポップさの増したメロディが印象的で、荒々しいギターサウンドとチバのダミ声によりロックたり得ているが、美しいメロディと歌詞は、アレンジを変えればポップスとして成立する。逆説的に言うと、チバが歌えばロックになるという証明とも言えよう。

ROSSOの活動休止から間も無く、ミッシェルのドラマーであったクハラカズユキらとThe Birthdayを結成した。名曲を上げれば枚挙にいとまがないが、最近のトピックと言えば前述の「LOVE ROCKETS」だろう。映画スラムダンクの主題歌として、大ヒットに貢献した。印象的なイントロから始まる変わらないカッコ良さ。まさかこれが遺作となるとは、残念で仕方ない。

少なくとも、私の知るチバユウスケは、ただただカッコ良くて、優しくて、愛に溢れるロックスターだった。長生きしないのもチバらしいのかも知れないけれど、まだ、もう少しだけ、新しい曲を聴かせてほしかった。あわよくば、もう一度世間に知られてほしかった。こんなにカッコ良いロックスターが、日本にはいるんだということを。

これからも私の血肉の一部として、ずっと一緒に行きていく。

謹んで哀悼の意を表します。

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