自転車泥棒 #シロクマ文芸部
走らない自転車をひいて図書館へ向かう。
涼しくなって来たとは言え、役割を果たさない自転車を運ぶのはなかなかに面倒だ。
「なぁ君、こないだ借りたチャリンコだがな、うんともすんとも走らなくなっちまったよ」
受付の黒縁眼鏡の兄ちゃんに申し伝える。
「弁償」
兄ちゃんはこっちを見るでもなく、ボソッと呟いた。
「いや君これは経年劣化と言うんだ。こっちの膝が冬は痛むのと同じで、借りた時にはもう痛んでたんだよ」
「修理」
「二文字しか喋れないのか君。あいわかった、修理をして返そう」
「