「いいとこメガネ」は職場の必需品

ボーナスの時期です。いい査定だった人もイマイチ納得がいかない人もいらっしゃるでしょう。

ボーナスに限らず、昇給や昇格には必ず「査定」がついてきます。

しかし、この査定というのはなかなか納得感の得られるものではありません。

これは人事評価制度の問題ではなく、はっきり言えば社風の問題です。

「いいとこメガネ」つけてますか??

人事評価制度をどれだけ工夫したとしても、根底となる社風に問題があれば評価制度は健全に機能しません。

経営学の祖、ドラッカーはマネジメントの基本として「その人の強みに焦点を当てよ」と述べています。つまり、できていないことに注目するよりもできていることに注目してあげる方がうまくいくということになります。

しかし、日本は謙遜が美学な人種。自らの長所よりも短所の方に焦点を当てる人が多いくらいですから、当然他者に対しても長所よりも短所に目を向けてしまうものです。

ここが一番の問題となります。

短所に目を向けてしまうというのは、評価の軸が「減点方式」になってしまっているということです。

人間というのは、短所もあれば長所も多い生き物です。どこかにその人ならではの「良さ」というのがある。そこに目を向けて認めてあげられるような文化がなければ、どれだけ素晴らしい評価制度を持っていても宝の持ち腐れとなってしまいます。

だからこそ、求められるのは「いいとこメガネ」なんですね。

ACジャパン(公共広告機構)のテレビCMで一時話題になったこの「いいとこメガネ」。他人のちょっとした気遣いなどに目を向けてどんな人にも「いいとこ」があるからそれを認めようという趣旨のCMです。

人事評価制度などの査定を行う上で求められるのは、他人に対しての厳しい目線ではなく、「いいとこ」を探して評価していく姿勢に他なりません。

査定や評価をする担当者に一番の必需品とも言えるのがこの「いいとこメガネ」ということになります。

「減点方式」の弊害

あいつは遅刻したから減点!

こいつは仕事をさぼってるから減点!

なんだか息苦しいものです。

もちろん、仕事をする上での最低限の決まり事や命令に違反している場合は必要な指導や措置を取るべきでしょう。

しかし、何でもかんでも減点しているとその人の本当の働きぶりというのは見えてきません。

何よりも、減点に基づく社風というのは他者を認めることも称賛することもない文化でしかありません。

いつどんな指摘をされるのかわからない状態だと人間というのは萎縮してしまいます。萎縮した状態でミスをしてしまえば、さらに萎縮してしまいます。

減点だけならまだしも、指導力のない上司は叱責をしたり、大声で怒鳴りつけたり、暴力に訴えたりします。

部下や後輩は絶対的に自分に従うものだという都合のよい思い込みによる誤ったマネジメント方法なのですが、なぜか日本ではこういう文化が育まれてしまいます。

ミスしてしまったところに怒鳴られたりしようものなら、精神疾患になったも不思議ではありません。

そのような環境を健全だと思うのならば、すでに異常です。

他人の粗さがしに終始して、評価は減点方式。そんな上司に心の底からついていく部下は果たして存在するでしょうか?

加点方式を取り入れる

減点方式の反対は加点方式です。マイナスで見るのではなく、プラスの面を見ていく。

仕事は遅いけど、丁寧な人もいます。

逆に、初動は速いけれど雑な対応をする人もいます。

減点方式だけで見るのならば、どちらもどっこいどっこいでしょう。

しかし、方や「丁寧」だし、方や「スピーディー」というプラスの面を持っています。これは、本人たちの特性に過ぎません。

一律の基準を設けて、そこに達していないなら減点する。それはそれでいいでしょう。しかし、そうするならばしっかりとプラスの面も評価しないと釣り合いが取れません。

誰だって、文句を言われるために働いている訳ではありません。自分の力を最大限発揮して、認められたときに喜びを見出すのは誰だって同じです。

査定や評価というならば、「いい面」にも焦点を当てていかなければいけない訳です。

認知と称賛の文化を育む

とは言え、いきなり評価制度だけを改めて「プラス評価」したところで意味はありません。

結局は根底にある社風をどうにかすべきです。

減点方式が蔓延している職場は基本的にギスギスしています。

いつ減点されるかわからない、人事評価の時期が憂鬱。そんな職場に行くのは気持ちのいいものではありません。

そもそも、減点するのは簡単です。できていないというのは割と明確に見えますから。

長所やいい面を評価するのは簡単ではありません。その人をしっかり見ていなければ理解できないからです。

であれば、その人のいい面を見つけるような文化を育てていくしか方法がありません。そして、それは上司・部下という関係性だけでなく全社員参加型で行うのが望ましい。

例えば、掲示板に「サンクスカード」を貼り付けるような取り組みをしている会社があります。

誰かに手伝ってもらった場合などに、その人への感謝を書く付箋を用意して掲示板に貼り付ける。

ありがとうというのは魔法の言葉で、言った側も言われた側も誰も傷つくことはありません。むしろ、心が温まる効果さえあります。

こういう取り組みは、最初はうまくいかないでしょう。誰も掲示板を利用しないからです。しかし、こうした地道な取り組みの結果としてようやく「認知と称賛」の文化が生まれます。文化というのは、一度生まれればなかなか廃れることはありません。

よくない文化は即座に廃止していくべきですが、よい文化は伸ばしていく方が建設的です。

文化をつくるには社長から

では誰が育てていくかとなると、社長以下経営陣が率先していくしかない。

誰にも書かれない寂しい掲示板があるのならば、社長が自ら書いてみましょう。誰かが書き出すまで何枚でも書きます。そうした結果としてでしか文化は生まれません。

もちろん、現場の従業員が率先して取り組んでいるのならばそれが一番いい。そういう場合はトップが変に動くのではなく、おかしな方向に進みそうな時に口を出すくらいでちょうどいい。

しかし、文化を作り社風にまで昇華させるにはやはりトップが率先して動く方が意味があります。「他者の長所に焦点を当て、承認し称賛する文化」をつくるというのは一大事ですから。

最初はなかなか浸透しないでしょうが、我慢して続けていくことで少しずつ状況が変わっていきます。

他者を認めることの意義

人間には他人に認められたいという欲求があります。俗に承認欲求といわれるものです。

これは、コミュニティーに所属している誰もが暗に持っているものです。

何をしても減点しかされないような組織では、承認欲求が満たされることはありません。先述の通り、萎縮してしまうだけで力は発揮されません。

もちろん、誰かの承認欲求を満たすために査定や評価が存在する訳ではありません。取ってつけたように褒めるだけでは逆効果になりかねません。しかし、承認欲求をくすぐるだけで査定や評価が機能し始めます。

「〇〇という部分はよくできているけれど、△△についてはもう少し頑張ろう」という伝え方をするだけで驚くほど効果が高まるのです。

あれもダメ、これもダメでは人は動いてくれません。認めるべき部分はしっかりと認めてあげる寛容さを持つことがこれからの組織の健全なあり方です。

査定や評価に満足いかないというのは、「やったことすら認められていない」というケースがほとんどです。

「何ができたのか、どこがいいところだったのか」という視点を欠いた査定では、誰も納得できないでしょう。

ほんの少し、みんなが「いいとこメガネ」をつけるだけで組織は活発になりますし、査定の意味も増します。

できなかった部分以上にできていることに目を向けて、長所はぞんぶんに伸ばしていくようにしていければお互いに気持ちよく働けるというものです。

そのためにも、経営者は社風を見直してみましょう。ほんの少し「承認と称賛」の視点を取り入れるだけで社風は変わっていきます。

まとめ

「いいとこメガネ」は本来誰しもが持っているものです。そして、それを機能させるための方法は沢山あります。

組織がギスギスしていると「いいとこメガネ」も機能しません。「いいとこメガネ」が機能していない状態で受ける査定や評価は、気持ちのいいものではありません。

自分が気持ちのよい評価を受けたいならば、まずは自分なりに「いいとこメガネ」をつけてみましょう。

上司や経営者は、みんながどうすれば「承認と称賛」ができるのかを必死に考えていきましょう。そして、率先して取り組みましょう。

いい文化はいい社風に繋がります。いい社風はいい組織に繋がります。いい組織は査定や評価が上手です。なぜならば、他人を承認し称賛するからです。

ほんの少し考え方や視点を変えるだけで、組織は好転していきます。「強みに焦点を当てる」ことができればできるほど、組織は成長していきます。

ぜひ一度お試しあれ!

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