アントレプレナー

逆張りのアントレプレナー思考

武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論 第7回土屋尚史さん

 5月29日、株式会社グッドパッチ(Goodpatch)の土屋尚史さんの講義を受講した。ご本人の経歴・体験をベースに、グッドパッチの仕事、デザイン、そして「アントレプレナー思考」について、幅広く話を聞くことができた。特に「アントレプレナー思考」について、一般論ではない、土屋さんご自身のお考えを聞くことができたことはとても良かった。

●アントレプレナー思考とは

 土屋さんが考えるアントレプレナー思考の要素は以下の4つである。
1.Whyから始める Start with why
2.領域を超える Go beyond
3.逆張り思考をする Contrarian think
4.不撓不屈の精神を持っている Indomitable Spirits

 上記のうちで、要素として不可欠だが、語られることが少ないのが、「3.逆張り思考をする」ことではないだろうか。(反対に、現在多く語られているのが「1.Whyから始める」である)そして、この「逆張り思考」こそ、土屋さんご自身における、重要なファクターだと思っている。

●逆張り思考

 「逆張り思考」とは、「大きなマーケットの動きを理解しつつ、そこにはない重要な要素を見つけ出し、マーケットの動きとは反対のことをする。」ことである。
グッドパッチの場合、2011年当時マイノリティだったUIデザインに、事業領域をフォーカスした。スマホというデバイスが生活を大きく変えていくことによって、のちにメジャーになりそうという見立てが、逆の張りどころだった。

さらに、実際の事業展開の仕方も、当時の「マーケットの動き」とは逆をいっている。
・敬遠されていたスタートアップの仕事を中心に引き受ける。
・VCから、多額の資金調達。(デザイン会社が資金調達してどうする、と言われた)
・ベルリンにオフィスを出す。(当時はヨーロッパに行く会社はほとんどなかった)

逆張りの結果、グッドパッチは7年間で、急成長した。

 ●アイディのグッド/バッドの境目

 土屋さんは、逆張り思考について「グッドアイディアとバッドアイディアの境目」という表現をした。グッドアイディアだけだと既存の価値観から離れるのは難しいが、完全にバッドになると、そもそもニーズがなかったことになる。
 「逆張り思考」を実践するためには、今は存在していないアイディア=新しい仕組み・価値観の中に、潜在的なニーズがあるかどうかを見立てる力が重要になる。
もちろん、単に見立てるだけではなく、まだないものの実現に力を注ぎ続けるには、「目的・信念・ストーリー・夢」といった”Why”が必要だし、失敗しても挑戦し続けられる” 不撓不屈の精神”も必要だろう。(最初に呈示されたアントレプレナーの4つの要素は、密接に結びついている)見立てをしたら、思い切って行動に移せるのが土屋さんのようなアントレプレナーなのだと思う。

 そして、この「アントレプレナー思考」は、「デザイナー思考」と置き換えることもできるのではないか、と考えた。
 これからのデザイナーには、自ら課題を発見し、物事の仕組みをリフレーミングすることが求められるようになってくる。リフレーミングに必要なのは、潜在的なニーズを読み取り、新しい仕組み・価値観の顕在化を見立てる力た。そのためには「逆張り思考」が必要であり、それができるアントレプレナー思考を持っている人が、社会に求められるデザイナーになるのではないか。

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