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才能に気づこう。コンビニ人間を読んで。

「コンビニ人間」を読んだ。少し変な主人公が社会の歯車になって生活をする話、と読了した知人から聞いた覚えがあって、本屋で手に取った。

かなり薄い文庫本だったのですぐに読み終わるだろうと思った。その予想は的中して、2時間で読み終わった。

芥川賞受賞とあったので、読みづらい文章なのかと想像していたが、全くそうではなかった。私の芥川賞のイメージは「火花」で、あれも単行本を買って読んだことがあるが2時間ほどで読み切れた。最近の芥川賞作品は読み切る時間設定でもされているのだろうか。

いや、芥川賞について語りたいわけではない。この「コンビニ人間」について語る時間にしたい。

主人公は死んだ鳥を公園の土に埋めるでもなく、焼き鳥が好きな父親に食べさせようとしたり、同級生の喧嘩の仲介をするために相手を殴り倒したりしたことのある幼少期だった。周囲とはズレがあった。中学年の頃にそれを自覚してからは周囲とは関わりをほぼ持たなくなった。

そんな主人公はコンビニでアルバイトを18年続けている。気温の変化によって売り出す商品を買えたり、陳列したり、元気よく挨拶し、週5で毎日出勤する、コンビニ側からしたら非常に使いやすい労働者だ。

ただ、主人公は周りと価値観が違うので苦労する。
30代後半にもなってアルバイト?まだ独身なの?正社員になるか結婚しなさい。
周囲からそう言われる主人公がどんな道を選ぶのか。

多様性の時代と言われるが、それを認めてくれるような恵まれた環境を持つ人間は少ない。
大抵の人間は自分の親や同級生、同僚と違う道を歩む人を「変」だと認定する。
主人公の恵子は1度も恋愛をしたことがなく、結婚したいとも思ったことがないのだが、コンビニで働いていた元同僚と一緒に住むことを妹へ報告した時の反応が印象的だった。

ニート!?起業したくて今は準備してるって?嫌だそんなオトコ。でもお姉ちゃんの病気が治ったんだね、良かった。(たぶんこんなリアクションだった)

人は、他人が「自分の知る領域」に入ってくると安心する。自分が知らない領域は「ない」と一緒。存在しないのだ。

じゃあ他人が知る領域に入ればいいか?というと、それでは自分の精神が不安定になると思う。自分のやりたいことは自分にしか分からないし、他人が入るべき領域ではない。

恵子はコンビニで働くことが得意で、それがアルバイトだろうが関係ないのだ。むしろ、18年も同じ仕事を続けられるなんて、羨ましい。そのスキルがほしい。

恵子には才能がある。そして人をよく観察している。
変だと思うのではなく、自分にない魅力を持っている人なのだと認識すれば、「自分の知らない領域」でも興味深いし、その差異を見て自分の他の魅力に気がつくかも知れない。

他人と比較することは、自分を卑下するためにやるものではなく、自分の才能を見つけるために行うものなのかもしれない。

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