どうやってEVの電気を作るか
当然ながらEV(電気自動車)は、電気がなければ走れない。ガソリン車に対してEVは環境に優しい乗り物と思われているが、その電気はどこから来るのか。
もし環境に優しいと思われるEVが、火力発電で作られた電気で走るなら、それは全く環境に優しくない。そこで今回は日本の電気事情を確認した上で、興味深いEVを紹介したい。
電気はどうやって作られるか
そもそも電力会社は、どうやって電気を作っているのかをおさらいしたい。なお、ここで言う電力会社とは、関東地方だと東京電力、関西地方だと関西電力といった具合に、地域ごとに大きな電力会社が存在するが、そういう昔ながらの大きな電力会社のことを示す。
中学の理科の時間に、電線をグルグル巻きつけて作った輪の中に棒磁石を出し入れする実験をやったことのある人も多いと思う。グルグル巻いた電線の端に豆電球でもつけておくと、電線と豆電球だけの閉じた回路なのに、磁石を出し入れすると豆電球は光る。それは電磁誘導と呼ばれる方法で電気が発生したからである。
電力会社のやっていることは基本的にこれと同じである。ただ、理科の実験なら自分の手で磁石を出し入れしていたが、地域全体の電気を作るのに、まさか人の手で磁石を出し入れするワケにはいかない。そこで磁石に歯車をつけて、その歯車が回ることで磁石の出し入れを行うのだが、今度は歯車をどうやって回すかという問題が出てくる。
火力発電は水を沸かした時に出る水蒸気で歯車を回す。水を沸かすのに火を使うから火力発電である。そして、火を燃やし続けるために投入されるのが主に石炭や天然ガスである。石炭であれ何であれ、火を燃やし続けることで水蒸気を作り続けるのだから、二酸化炭素が大量に発生する。さらに言えば、資源の乏しい日本では、火力発電に使う燃料を諸外国から輸入していることも忘れてはならない。輸入の際に用いられる船は、これまた燃料を燃やして動力を得ている。
その点、二酸化炭素を出さないで燃やし続けることができるのが、原子力である。原子力発電ではプルトニウムを燃やすと言うが、プルトニウムには炭素が含まれないため二酸化炭素が出ない。ついでに窒素も含まれないため、公害が起きづらい。しかし原子力発電の危険性は、チェルノブイリや3.11が実証してしまった。語るまでもないだろう。
火力発電と原子力発電が水蒸気を使って発電したのに対し、水力発電は、ダムに溜めた水を落とすことで水車を回し、その水車が歯車を回して発電する。もちろん水はもったいないので、余った電気を使って水車を回すのに使った水をダムに戻すこともしている。しかしダムを作ることそれ自体が自然環境を破壊している。ダムができた後も、ダムは自然環境に様々な悪影響も及ぼしてしまっている。
日本の電力構成比率
主要な電力会社が電気を作る際に、色々と問題があるということを確認したところで、次にそれら問題を抱えた電気がどれくらい流通しているかを確認したい。
少し古いデータで申し訳ないが、2018年における火力発電は、発電全体のうちの76%を占める。水力発電が7.7%で、安全性の問題から操業停止中のものもある原子力発電は7%である。つまり、火力・水力・原子力だけで全体の90%以上を占める。
参考までに、火力・水力・原子力ではない発電としては、太陽光発電・風力発電・地熱発電・潮力発電などが挙げられる。ただし、太陽光発電は設置の仕方によってはダムと同じく自然破壊を引き起こす。風力発電は風車に鳥がぶつかることで死亡する事故が多発するほか、低周波音の問題も懸念されている。地熱発電や潮力発電は、まだまだ研究段階であるという問題にくわえて、できる場所が限られるという問題もある。
残念ながら、今の日本では電気を使うことそれ自体すら環境破壊をしていることになってしまう。このnoteはインターネットを通じて皆様がお読みになれるのだが、それすら地球環境には優しくないということになる…。
ゼロ・エミッションEVという考え方
私が「EV BOSCO」という三輪車(側車付軽二輪)を購入して、その電力を自前で調達できないものかと考えていた折に、なかなか面白いEVを見つけたので紹介したい。
そのEVは、ジムニーというガソリンで走る軽自動車を改造して作られたコンバートEVである。改造したのはZEVEX(ゼベックス)というNGOである。そして驚いたことに、ZEVEXではEVコンバートしたジムニーで南極点を目指すという。
当然ながら南極大陸で充電できる場所はない。電気は自分達で作りながら走る必要がある。そのため、このジムニーにはソーラーパネルと風力発電の装置にくわえ、エアロバイクみたいな人力で発電する装置までもが搭載されている。
正直、人力で発電するなら自転車に乗れば良いと私は思うのだが、南極という充電スポットのない場所でも走り続けるという点はロマンを感じる。私のEV BOSCOも充電スポットを使わないで走り続けたい。
参考までに、ジムニーは30分の急速充電で100km走ることができ、車体重量は705kgとのこと。私の購入するEV BOSCOは全く改造しない状態でも1時間の充電で75kmを走れて、車体重量は345kgだから、ちょっと頑張れば充電スポットを使わないで走り続けられるのではないだろうか。
ジムニーの改造には軽く200万円以上かかっているという。その点、私の改造するEV BOSCOは本体価格と合わせて200万円で収めたい。それくらいで走り続けられるなら、「自分も買おうかな」と思う人が出てくるのではないだろうか。何となくだが250万円を越えるなら300万円を払ってでも大手メーカーのEVを買うという人が増えると思う。
ずっとソーラーパネルを載せて走ることを考えていたが、ここにきて風力発電も視野に入れている。
というのも、どうもソーラーパネルだけで欲しい電気を作るとなると、荷台の10倍ほどの面積が必要になってしまう。さすがにそれはカッコ悪いし、いくら三輪車で小振りだとはいえ他の車に迷惑だろう…。
まとめと次回予告
電気で走るEVは、その電気をどのように作るかによっては環境に優しくない乗り物となりえる。小型車にソーラーパネルと風力発電を組み合わせることで、発電しながら走り続けられるEVは実現できるという見通しが持てた。
私の注文したEV BOSCOは輸入車のため、手元に届くまで半年はかかる。そのため、次回からしばらく、EVの話はお休みして、太陽熱の利活用について書く。
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