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年次総会(通称ダボス会議)2022 - Day 1

2022年5月23日、世界経済フォーラム年次総会2022のセッションがはじまりました。約2年半ぶりとなるスイス・ダボスで開催の年次総会です。テーマは"History at a Turning Point: Government Policies and Business Strategies"(歴史の転換点:政策とビジネス戦略)。グローバリゼーションによる平和と繁栄という世界観が揺らぐいま、私たちはどう考え、どう行動するべきなのか。グローバル連携、社会と平等、気候と自然、公平な経済、テクノロジーとイノベーション、仕事とスキル、ビジネス、ヘルスケアなどをテーマに、4日間で開催される約450セッションのうち、オンラインの一部をご紹介します。

年次総会の開幕で流れたビデオはこちら↓


Special Addresses

私たちは歴史の転換点にあるーーシュワブ会長のメッセージでは、この言葉が繰り返されました。ウクライナでの戦争、Covid-19というヘルス・カタストロフィー、気候変動、低成長、貧困と飢餓。スイス・ダボスで再び向かい合って対話と議論ができるという喜びを払拭するほどに世界は大きく揺れており、グローバル・リーダーと私たち一人ひとりが、ステークホルダー・コミュニティのための行動と協調によってインパクトあるイニシアティブをとり、未来を築いていく必要性があることを強く訴えました。

シュワブ会長の紹介を受けて、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで登場。緊急支援を行うグローバルな枠組み「United24」の提案など、戦争と国の再建について国際社会の継続的な支援を要請しました。


AI on the Street: Managing Trust in the Public Square 

この数年、AIと顔認証技術がもたらしたプライバシー保護や社会的偏見について多くの批判と議論が積み重ねられる一方で、多くの政府や企業がその社会実装を行ってきました。「AI on the Street: Managing Trust in the Public Square」に登壇したNECの森田隆之社長は「これはテクノロジーの問題ではなく、トラストの問題だ」と整理したうえで、原則やルールの明示、第三者による監査を含めた透明性の確保が今後の実装を進める鍵となるという見解を示しました。

同セッションの議論は、国・地域によって異なるセンシティビティや、年金受給・免許更新・投票への顔認証技術活用事例、またグローバルサウスを含めた一般の人々のインクルージョンなどに及びました。テクノロジーの恩恵と濫用という議論は、人間社会におけるトラストの合わせ鏡でもあります。バランスを取り続けながら前に進むという意味を込め、最後は「People、People、People」で締め括られたのが印象的でした。


エネルギー危機、食料危機、ディグローバリゼーション

そのほか、同時平行で数多くのセッションが開催されました。「Responding to the Energy Crisis」セッションでは、IEB(国際エネルギー機関)のFatih Birol事務局長が、世界がグローバルなエネルギー危機に直面しているという認識を示したうえで「エネルギーと気候の二択にしてはいけない(We shouldn't have to choose between a climate and an energy crisis)」と警告し、今のエネルギー能力を活用しながらエネルギー・トランジションのための時間を稼ぐ必要があるとの見解を示しました。また「Tackling the global food crisis」セッションではWFP(国連世界食料計画)のDavid Beasley事務局長が進行中の食料危機を「第二次世界大戦以降、最悪の人道的危機」「空腹の人たちから飢餓の人たちに食料をまわしている状態(We're taking food from the hungry to give it to the starving)」との認識を示しました。

製造現場とロボットについて取り上げた「The Augmented Manufacturing Experience」セッションでは、人間中心の製造現場を実現しているという登壇者に対し、ITUC(国際労働組合総連合)のSharan Burrow事務局長が「Let's not sugar coated(甘言はやめよう)」として経済効率を優先してきた製造現場に染み付いた価値観の根深さと闇深さを指摘。「Russia: What Next?」セッションでは、ディグローバリゼーション(deglobalization)をめぐる昨今の議論が西欧的な世界観であるという指摘や「地域化したグローバリゼーション(regionalization of globalization)」について議論が行われました。


2日目も注目のセッションが続きます。プログラムおよび年次総会2022の全ストリーミングセッションはこちらからご覧いただけます。↓


(5/26追記)Day2とDay3についての投稿はこちら!


世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ティルグナー順子(広報)






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