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【開催報告】第2回「超巨大企業「日本行政グループ」の基幹システム運営」

行政DXに立ちはだかる課題の本質は何か。政策形成プロセスや規制手法を根本的に見直し、再設計していくための大きな視座・原則を議論するデジタルガバナンスラボ。第2回では「超巨大企業"日本行政グループ"の基幹システム運営」をテーマに、連携で露呈しがちな日本的組織の弱点、海外のデジタルガバメント事例からの学び、霞が関で進む経済産業省のDX化の取り組みなどが議論されました。

開催報告

デジタルガバナンスラボ 
第2回「
超巨大企業"日本行政グループ"の基幹システム運営
2020年12月12日@オンライン

登壇者(敬称略)

木村岳史 (日経BP編集委員)
河本敏夫 (NTTデータ経営研究所情報戦略コンサルティングユニットアソシエイトパートナー)
吉田泰己 (経済産業省情報プロジェクト室長)

<モデレーター>
日置巴美 (東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員)

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中央官庁を超巨大企業に例えると、、

エッジの効いたコラムで知られる木村さんによるレクチャー「中央官庁を超巨大企業に例えてみた」では、縦割り意識の強い日本的な組織が「連携」に対していかに脆弱であるかを、実際の大規模障害や事件を例に指摘。システムトラブルやセキュリティホールが起こった際のリカバリー措置が、事前に連携先を含めて綿密に協議されることなく、ゆるい取り決めのまま稼働に突っ走る傾向について警鐘がありました。また部署や人への依存度が高いシステムの問題のほか、議論では標準化に対する「アドオン」開発が実質的に抜け道になっている実態、横串しのためには「まずは行政DXに関係する官公庁から地方自治体までみな一度集まって議論する」ような意識合わせが早急に実施すべきとの提言がありました。多様なステークホルダーが参加する私たちのデジタルガバナンスラボは、まさにそうした取り組みに向けた礎のひとつと位置付けられています。

海外事例だけで日本の将来像は描けない

「デジタルガバメントに関する諸外国における先進事例の実態調査」の講義を行った河本さんからは、狙いやその国の背景によって各デジタルガバメントのアーキテクチャの重点や進め方が異なるという点が指摘され、デジタルガバメントの進展度として「データ管理の一貫性・データ連携環境の整備状況」「行政機関の横断的な共通アーキテクチャーの採用状況」「政府によるデジタルサービスの社会インフラとしての浸透度」の3つの指標で類型化した考察が展開されました。そのうえで「海外事例をみているだけでは我が国の将来像は描けず、日本が直面する課題と新しい公共の姿を共通認識とする」重要性が訴求され、また行政DXの目的を明確にしたうえでITシステムのサプライチェーン自体を変えていく必要があるとの考えが提示されました。

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行政をハックしよう

吉田さんの講義「行政のデジタル化の課題と方向性」では、行政サービスと民間サービスとの圧倒的な質の差を見過ごすことができないという問題意識のもと、データを中心に行政サービスを改善するサイクルを生み出すことが必要であるとの考えが強調されました。また経済産業省のデジタル化推進に向けた複数の取組みが紹介され、DXには組織変革・職員のマインドセットの改革が必須というご自身の経験から「デジタルトランスフォーメーションは、行政が今のテック企業と同じように働くということでもある。手本となる組織から学んで行政をアップデートしなければならない。行政をハックしよう」との総括がありました。

全体設計図の共有のために

現在デジタル化の出発点として脱ハンコ、ワンスオンリー・ワンストップということが議題に上がっています。その先にある目的に基づいた全体設計図ををつくり、そして同じ設計図をみながらそれぞれのDXを推進するという「アーキテクチャー」の重要性を改めて実感したセッションになりました。

​デジタルガバナンスラボは、デジタル時代の”ガバメント”をマルチステークホルダーで検討し、これからの社会の視座・原則を社会で共有するべく今後も働きかけを続けて参ります。

Author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 岡本直樹(インターン)
Contributors:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ティルグナー順子(広報)

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