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ダボス・アジェンダ2021 -- Day 1

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターでは、ダボス・アジェンダ(1月25日 - 29日)の会期中、グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(GTGS、4月6-7日)につながる議論をnote発信しています。

■The Davos Agenda 2021 Welcome, 27th Crystal Awards and See Me: A Global Concert

“Trust comes with speaking from the heart”

シュワブ会長によるオープニングリマークスで、ダボス・アジェンダが開幕。より強靭で、包摂的で、サステナブルな社会を築いていくために重要になる「トラストの再構築」のために、グローバルな協力と私たち一人ひとりの貢献を強く呼びかけました。

ダボス・アジェンダでは、以下の政策領域を議論します。
1. 責任ある産業改革(Responsible Industry Transformation)
2. グローバル・スチュワードシップ(Global Stewardship)の促進
3. 公正(Fair)な経済・社会システムの構築
4. 社会のためになる形での新テクノロジーの活用
5. 新しい多極(Multilateral)システムの構築

トラストは、単なる対話や意見交換からは生まれない。頭脳だけでなく、今こそ気持ちを込めてコミュニケーションをとっていきたい―― そんな思いに溢れていたのが印象的でした。

第27回クリスタル・アウォード授賞式

世界経済フォーラムは1995年から、国際社会の文化交流と世界平和に貢献した芸術家や文化人に「クリスタル・アワード」を授与しています。今年1人目の受賞者は、ガーナ系イギリス人で建築家のSir David Adaye氏。障がいを持つ人に対してより良いケアを提供する施設のデザインを含め「地域社会のために、歴史を反映しながら新しいものを生み出す社会行動」として建築を活用してきました。

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“建築はそれ自体で完結するものではなく、建築を通じてどこか別の、より革新的な場所へ行くために存在します。私たちはその道具を利用して実現可能な変化を生み出していくのです。今こそ、私たちが想像することしかできないようなセルフレス(Selfless)で、より深い未来を築いていくときだと思っています。”

2人目の受賞者はブラジル出身の写真家、Sebastião Salgado氏です。英雄主義を押し付けず、同情をせがむことなく、象徴的な白黒の写真で被写体の尊厳を映し出します。写真家として活動する前は経済学者として経験を積み、今日では世界中を旅しながら不平等や持続可能性についての議論を促しています。

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“ストーリーを伝えることは、他者や社会を理解するということです。我々はみなホモ・サピエンスであり、コミュニティ、結束(Solidarity)、愛(Love)を大切にし、希望(Hope)がよりよく生きるためのバッテリーになります。”

グローバルコンサート「See Me」

セッション後半では、「See Me」と題したグローバルコンサートが披露されました。米国、南アフリカ、イタリア、アフガニスタン、オーストリア、中国などの世界を繋いだ壮大で繊細なコンサートは、下記から視聴いただけます。

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■Restoring Economic Growth【日銀黒田総裁登壇】

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経済成長を取り戻すためのカギは何か?――日本銀行・黒田東彦総裁は2021年度末あるいは2022年度にはパンデミック以前の経済レベルに回復するという日本経済の見通しを述べた上で、テレワークやオンライン講義のトレンドや、デジタル庁創設と公共セクターにおけるデジタル化の動きを紹介。「社会・経済活動のどんな側面においてもテクノロジーの重要性が増している」とコメントし、デジタル化による経済成長への期待を表明しました。また、グリーン・エコノミーが新しい成長ドライブになることや、Scarring Effect(若者の失業が生涯のキャリア形成に及ぼす影響)への対応の重要性も指摘しました。

■Tackling Alzheimer’s【エーザイ内藤CEO登壇】

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「アルツハイマー病との戦いには、一般の人の参加こそが必要だ」――アルツハイマー病への取り組みを議論するセッションに登壇したエーザイの内藤晴夫CEOは、予防医学が十分な発展を遂げた今、求められるのは予防措置をとるために活用される睡眠や運動などの日常生活データの取得にあることを強調しました。テクノロジーは、リモート診療による医療アクセスの拡大を可能にし、アルツハイマー病の検査をコレステロール値の検査のように簡便化することを可能にします。日本におけるアルツハイマー病への取り組みの現状を問う質問に「製薬業界に限らず、金融や保険業界からのアプローチの多さには驚かされる」と回答。この先のさらなる分野横断的な協力を予感させました。

■Building Crisis-Resistant Healthcare Systems in a Post-COVID World

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ヘルス・システムの有効性と回復力を抜本的に改善するため必要なことは何か――Pascal Soriot(AstraZeneca Plc)、Catharina Bohme(Foundation for Innovative New Diagnostics)、Kevin Washington(YMCA of the USA)、Mazen S. Darwazeh(Hikma Pharmaceuticals Plc)を迎えたセッションでは、下記を含めた議論が展開されました。

・ 予防、早期検出、治療への投資
・ デジタルを活用したヘルスケア現場の最適化。外来診療所や遠隔治療
・ 医療と地域コミュニティの関係の再定義
・ サイエンスに対するトラストの回復
・ 危機に耐忍性あるシステムの構築

健康をコストではなく資産とするマインドセットのシフトは、確実に起きています。最善の形とはいえなかった国際協力体制や、現在は3%程度のグローバルなヘルス支出など、将来の変化が期待されています。


世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ティルグナー順子
大原有貴(インターン)


Day 2はこちら⇩


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