『The Great Narrative』読書会報告
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターでは、世界経済フォーラム主催で1月17日~21日に開催された「ダボス・アジェンダ2022」の基調ともなった、クラウス・シュワブ会長とティエリ・マルレ氏との共著『The Great Narrative』の読書会を2月3日にオンラインで開催いたしました。
当センターのスタッフ、フェロー、インターンを含む10名以上が参加し、「ナラティブ」の意義、ポストコロナの世界などについて深い議論が展開されました。
書籍の概要
『The Great Narrative』は、世界中の思想家やオピニオンリーダー50名との対話に基づき、グローバルリスクと今後の展望についての「ナラティブ(語り)」を通して、読者の行動変化の基礎を築くことを目指しています。
2020年から2年経過した現在、世界はパンデミックからの回復段階にありますが、各国では経済的・環境的・地政学的・社会的・技術的な課題が山積しています。その解決策として、協力・連携、イノベーション、道徳、公共政策、ビジネスの役割の重要性が増しています。
本書では、日本についてのナラティブも記載されていました。例えば、岸田政権が提唱する「新しい資本主義」が、経済成長と分配の両立において政府の役割が重要視されるという文脈で、米国バイデン政権「より良い復興(Build Back Better)」、欧州「Covid-19復興基金」と並んで紹介されています。他にも、成長を測る指標として経済成長やGDPだけではなく、一人当たりのGDPを使用すると、経済停滞と人口減少というネガティブなナラティブで語られる日本の評価は一変するとの記述もありました。同指標は、幸福度や生活水準の高さなどとの相関がみられており、経済成長にとどまらない、より広義での成長を測ることができると注目されています。
2022年にはパンデミックからの復興にとどまらず、持続可能な社会の実現には、政策立案者、産業界のリーダー、投資家、市民社会が一丸となり、継続的に行動をとることが求められます。
読書会の様子
読書会では、レジュメをもとに私(インターン・シャルマ)が『The Great Narrative』の概要の紹介を行いました。
続いて、ダボス・アジェンダの一部のセッションの内容や本書との関連性についても報告いたしました。その後、質疑応答とディスカッションが行われました。以下ではその一部のコメントを紹介しています。
ナラティブの特徴は、主語が“we(私たち)”であり、結論がないところ。本のタイトルに『ナラティブ』が使われたのは、現在直面している課題は進行中で先が見えないが、だからこそみんなで考えていくことが重要であるというメッセージだと言える。
前著の『グレートリセット』と共通する内容が多いが、「状況は確実に改善してきているから頑張って変えていこう」という前向きな思いが、本書ではより強く感じられる。50人の有識者との対話に基づいている点も説得性を強める。
ナラティブをテコに、自分のプロジェクトにおいてコミュニティを巻きこんでルールメイキングをやっていくことについての議論や意見をより前面に出していきたい。
発表担当の所感
『The Great Narrative』は、パンデミックをきっかけに浮き彫りになった課題と可能性について様々な側面から理解を深められる一冊であるのはもちろん、日本についての言及も含め、全体的に前向きなナラティブであったため、今後の世界に希望が感じられる本でした。
現在世界が直面している状況というのは前例がなくオンゴーイングなため、本書では明確な結論は提示されていません。ディスカッションでも言及されていましたが、結論に飛びつかずに、一人一人が自分事としてオプティミスティックなマインドセットで議論し、結論を考えるように努めることが重要だと言えます。
本書で語られたナラティブを、今後世界経済フォーラム第四次産業日本センター含む各機関や政策立案者、民間企業、そして個人がそれぞれの施策や行動にどう反映していくのか注視したいと思います。
執筆:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター インターン シャルマ グンジャン 貢献:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター インターン 佐藤良磨、竹原梨紗、ペレスベラスコ・ジャンコ 企画・構成:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター プロジェクト戦略責任者 工藤郁子
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