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日本から4名受賞! Agile 50:公共部門を変革する最も影響力のある50人

Agile 50とは、アジャイルガバナンス(第四次産業革命に対応するガバナンスのアップデート)の実現に尽力した公共部門リーダーを世界から50人選出する取り組みです。
今年度から始まり、世界経済フォーラムGlobal Future Council on Agile Governanceと国際官民連携ネットワークApoliticalにより、2020年12月9日(米国東部時間13:15-14:00)に受賞者が発表されました。

時代にあわないルールをアップデートする

21世紀の社会では、技術革新、政治、国際情勢、そして新型コロナウイルスを取り巻く様々な変化が急速に起こっています。公共部門ではこれらの変化に対応した新しいルールづくりなどの柔軟な対応が求められていますが、構造的な障壁などに阻まれてその体制も法整備も時代に追いついていません。結果として企業やイノベーターが時代にあわないルールに縛り付けられ、イノベーションや新たなビジネスチャンスが失われています。
私たちの未来のためには、ガバナンス体制や規制手段をアップデートし、新しい時代に見合ったルールづくりなど変化への柔軟な対応が必要です。こうした動きに尽力した世界の公共部門リーダーを表彰することでその取り組みと活躍を広め、グローバルにアジャイルガバナンスを促進することがAgile 50の狙いです。

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Agile 50の選考基準

世界各国300人以上の候補者から50人のリーダー等が10個の基準を元に選ばれました。

1.未来志向:
最新テクノロジー・トレンドを積極的に学び、取り入れているか

2.結果重視:
共通の政策ゴール実現を目指した事業者を支援しているか

3.実験環境の提供:
市民の安全を担保しつつ、イノベーションを促進するための実験環境を事業者に提供しているか

4.迅速な対応:
テクノロジーを活用してリアルタイムデータを取得するなど、変化に対する機微な対応をしているか

5.事業者主導:
イノベーションの社会への影響に対して事業者主体でガバナンスできるよう支援しているか

6.連携体制:
組織の垣根を越えて、一体となった政府対応を実現しているか

7.国家行政と地方行政:
地域間を跨る政策の一貫性を確保しているか

8.国際性:
グローバルな視野をもって国際的なアクションを推進し、貿易障壁を削減しているか

9.イノベーター視点:
現在のシステムや要件が、将来のプレイヤーでなく既存プレイヤーに合わせて設計されていることを認識しているか

10.市民中心:
ガバナンスの設計と運用の各段階で市民視点を確実に取り入れているか

米英に次ぎ、日本からは4名が受賞

Agile 50の受賞者は、政治家、公務員、起業家など様々なバックグラウンドを持っています。地域別の内訳はアジア(13人)、ヨーロッパ(12人)、北米(7人)、南米(5人)、北欧(4人)、オセアニア(4人)、中東(3人)、アフリカ(2人)です。国別でみるとアメリカとイギリス(各5人)、日本(4人)、シンガポール(3人)になっています。

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日本からは、村上敬亮氏(内閣府地方創生推進事務局審議官(当時))、中原裕彦氏(内閣官房日本経済再生総合事務局参事官(当時))、久保田秀暢氏(国土交通省自動車局審査・リコール課長)、羽深宏樹氏(経済産業省情報経済課課長補佐)の4名が選出されました。

村上敬亮氏(内閣府地方創生推進事務局審議官(当時))
地域創生イニシアティブ「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を主導。データに基づいて地域の特性と課題を抽出し、戦略的な業務遂行を行う仕組みを整備した。地域経済として循環するバリューチェーン支援に内閣からの交付金が使われる仕組みを構築し、各自治体と伴走しながら計画策定を支援している。また住民合意による規制特例の設定を可能にし、必要なインフラを国が支援するスーパーシティ法(2020年5月成立)の実現にも尽力、異なる事業者間におけるデータやサービスの互換性、連携性を保証するためのAPI原則を導入した。

中原裕彦氏(内閣官房日本経済再生総合事務局参事官(当時))
日本における規制のサンドボックス制度導入を主導。イノベーションのスピードに規制を対応させるために、期間と参加者を限定した実証を行い、実証データを規制の見直しに繋げるサンドボックス制度活用の道を切り拓いた。民間事業者視点を導入して省庁横断的で一元的な政府対応を目指している。既に認定されたプロジェクトは、フィンテック、ヘルステック、モビリティ、環境等多くの分野に亘り、ビジネスとしての実装やルール改革に向けた取組が進展している。

久保田秀暢氏(国土交通省自動車局審査・リコール課長)
AIなどのシステムが運転操作を行う「無人自動運転車」の安全性を審査・証明するためのガイドライン策定を主導。(ア)規制の透明性・予見可能性、(イ)設計の自由度を許与する技術中立的で柔軟な規制、(ウ)事前規制と事後規制のバランスを組み込んだルールを策定した。また国連WP29の議論に参画して国際基準の策定に貢献、特に自動緊急ブレーキを含む先進技術に係るワーキンググループの議論を率いている。

羽深宏樹氏(経済産業省情報経済課課長補佐)
日本とニューヨーク州の弁護士資格を持つ。AIガバナンス、プライバシー保護、データセキュリティ、国内外のデジタルプラットフォームに関する問題など、急速に変化するデジタル技術に対応した新たな規制枠組みの構築を提唱するガバナンス・イノベーション報告書の作成に尽力し、第四次産業革命下での「新しい現実」に対する従来の法的アプローチの課題を明らかにするために、実務者、専門家間での議論を促進してきた。

Agile Nations協定による各国連携の強化へ 

Agile50の発表と同時に、世界経済フォーラムとOECDが議長を務めるセッションにてカナダ、デンマーク、イタリア、日本、シンガポール、アラブ首長国連邦、英国が「Agile Nations」協定に署名しました。

世界初となる本協定は、イノベーターと規制当局との間で新しいアイデアをテストし、新たな試みとその恩恵を社会に導入することを政府が支援する道を開くものです。

私たちアジャイル・ガバナンスプロジェクトが2020年2月にその取り組みを開始してから11ヶ月。ようやく国際的にこうした連携の形ができてきたことをとても嬉しく思っています。アジャイル・ガバナンスの活動がルールづくりの最前線で尽力している公共部門のリーダー達の取り組みに光を当て、その経験をグローバルに共有することが力となり、新しい時代づくりに向けたイノベーションと社会の活力に繋がることを確信しています。

Author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 川田沙梨(インターン)

Contributors(五十音順): 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 大原有貴(インターン)、岡田萌乃(事務局)、隅屋輝佳(アジャイルガバナンスプロジェクト・スペシャリスト)、高田紀子(フェロー)、ティルグナー順子(広報)

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