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【開催報告】第二回「安全な国境往来に向けて:グローバルなトラスト設計とプライバシー保護」

開催報告

メディアワークショップ「データトラストの再設計」
第二回「安全な国境往来に向けて:
グローバルなトラスト設計とプライバシー保護」

2020年7月31日@オンライン

登壇者(敬称略)

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長
須賀千鶴

コモンズプロジェクト日本代表/慶応義塾大学医学部医療政策管理学教授
宮田裕章

コモンズプロジェクトグローバル評議員/公益財団法人国際文化会館理事長
近藤正晃ジェームス

朝日新聞記者
宮地ゆう

NEC主席ディレクター
岩田太地

今なぜ、安全な国境往来か

新型コロナウィルス感染症の出⼝戦略を模索する各国は、国内の取り組みの先に、国境を超えた⼈の往来をどのように管理していくかという共通の課題に直⾯しています。国ごとに異なる⼿続き要件、紙による処理負担、検査結果の偽装リスク、プライバシー保護などをどのように担保するのか。国境を超えた往来に関するルールとデータの国際的な相互運⽤性の確保はこれからの時代に必要不可⽋であり、特に2021 年7 ⽉の東京オリンピック・パラリンピック開催地である⽇本にとって、安全な国境往来に向けた仕組みを準備することは急務となっています。こうした現状と課題認識に基づき、メディアワークショップ第二回「安全な国境往来に向けて:グローバルなトラスト設計とプライバシー保護」を開催しました。

産業界100社緊急アンケート結果を踏まえて

冒頭に須賀千鶴センター長は、メディアワークショップシリーズの開催趣旨を「第四次産業革命という時代の変化とそのテクノロジーの統御は、新型コロナウイルスの蔓延によりその重要性が一層実感されるようになった。直面している最重要課題は社会に信頼されるデータガバナンスのありかたであり、誰が、どういったデータに、どのようにアクセスし、どういった価値を創造することを許容する社会にしていくかをメディアのみなさまを含めたマルチステークホルダー方式で考察していきたい」と説明。同センターが7月に実施した産業界100社緊急アンケート結果の一部を紹介し、回答した企業の99%が安全な国境往来を「重要」と回答していることや、検査結果のデジタル化や国際標準化についての高い関心について述べました。

産業界100社緊急アンケート結果については本記事末尾の関連資料欄からダウンロード可能です。

データを公共財とし、非営利かつ中立的に管理する「コモンズプロジェクト」

コモンズプロジェクト日本代表を務める宮田教授は、「電子手続きで往来できる国境」と「複雑な紙の手続きが必要な国境」が国家間の格差につながる危険性と早急なルール作りの重要性を説明し、運営設計のおけるポイントとして個人情報を特定の国や企業に独占させないための規則設定(「プライバシー」)、スマートフォン非保持者を含めた施策設計(「インクルージョン」)、検査結果の国際的な標準化・共有体制(「トラスト連携」)の3点を挙げました。コモンズプロジェクトグローバル評議員の近藤理事長は、データを公共財として非営利かつ中立的に管理し信頼を確保する重要性とともに、国際的に信用できる検査結果・ワクチン接種のデジタル証明のために「検査機関やワクチン接種機関に対する信頼性」「記録そのものの信用性」「本人特定の正確さ」「出入国基準との整合性」という4つの要素を鍵として検査結果の情報コード・データ基盤を世界中でつなぐ枠組みの実現に取り組んでいる状況を説明しました。

プライバシー重視の日本視点をもって国際議論へ

登壇者によるパネルディスカッションおよび質疑応答では、コモンズプロジェクトが仕様策定を進める『Common Pass』(コモンパス:出入国のためにPCR検査結果などを共有する世界共通の電子証明パス)に関し、開始時期やシステムの位置づけ、信頼性や対象機関など踏み込んだ議論が展開されました。プライバシー懸念については「プライバシーを重視し、技術を持っている国の声を反映させること」が日本にとって重要な役割となることが強調されました。須賀センター長は「世界の議論に取り残されないように、日本が狭間に陥らないように、進めていかなければならない」とワークショップを締めくくりました。

執筆
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ティルグナー順子
大原有貴(インターン)

関連リンク・資料


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