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アジェンダブログ:ブロックチェーン技術で農家の生活を変える

情報の発信者と閲覧者が固定されていたWeb1.0、発信者と閲覧者の双方向コミュニケーションを可能にしたWeb2.0に続き、ブロックチェーン技術を活用して情報を分散管理することで、データ主権の民主化を図るWeb3の時代が到来しています。このWeb3は発展途上国の農業と貧困をどのように変えるのか ーー本投稿では、This is how blockchain technology is transforming life for farmersと題した記事をご紹介します。

原文はこちら↓

農家を繋ぐデジタルネットワーク

「農家のデータは民間企業や政府によって管理、保有されていることが一般的ですが、これでは農家が多様なサービスを受けるための選択肢や能力が制限されてしまいます」(NPOデジタル・グリーンの共同設立者兼エグゼクティブ・ディレクターのリキン・ガンジー氏)

データ主権のもと、小規模農家が自分のデータをコントロールし、所有すると何が変わるのでしょうか。デジタル・グリーンは「小規模農家が官民・市民社会・企業などと関わる過程で多くのデータが生成され、このような幅広いエコシステムが農家に権限を与え、データ共有や管理、収益化の方法を自分たちで決定できるようにする」と言います。

デジタル・グリーンが注目するのは、分散化されたピアツーピアのデータ共有を可能にするソフトウェアツールです。例えばファームストックと呼ばれるツールでは、データの共有方法、期間、相手に関する合意形成を可能にしています。農家同士が直接繋がったデータ所有と管理のためのデジタルネットワークを活用すれば、協同組合などの信託されたパートナー組織との関係が大きく変化するでしょう。

農家をデータベンダーにすることが焦点ではない

一方で、途上国における農家のデジタル化はボトムアップであるべきで、データのマネタイズが中心であるべきではないとの指摘もあります。

「欧米で開発されたデジタル技術が発展途上国の農家を変革できると言う考えは誤りです。。。(略) 特に低所得国における農業技術の向上の目的は、国連の持続可能な開発目標に沿って飢餓と貧困を緩和することであり、農家をデータベンターにすることではありません」(Yielderマネージングディレクター、アレクサンダー・ヴァレトン氏)

データ主権の目的?

データ流通の促進を目指すさまざまな取り組みは「テクノロジーとガバナンスの枠組みによってデータの価値を解放し、利益とイノベーションの創出を促進する」と説明されることが多く、その潜在的な経済価値も喧騒されています。そのようなナラティブが氾濫するなかで「焦点はマネタイズではなく、まずは飢餓と貧困の解決」という明確な指摘は、まさにデータ主権のありかたを正面から問いかけているように思えます。

世界経済フォーラム第四次産業革命インドセンターでも、農業とデータ流通の取り組みを行なっています。ここでも焦点になっているのは「データ共有の目的」であり、その問いに対する答えとしての同意ツールに注目しています。

Web3などのイノベーションがもたらす「データ主権の民主化」に向けた取り組みは始まったばかりす。「データ共有の目的」を設定するプロセスを含めて、今後とも注目していきたいと思います。

執筆:
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
菅原結衣(インターン)


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