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ダボス・アジェンダ2021 -- Day 2

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターでは、ダボス・アジェンダ(1月25日 - 29日)の会期中、4月6-7日に開催されるグローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(GTGS)につながる議論をnote発信しています。

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■Reorienting Boards for the Long Term【住友商事兵頭CEO登壇】

「ステークホルダー資本主義」を実現し、長期的な企業価値を生み出すための取締役会のあり方を問うセッションに、住友商事の兵頭誠之CEOがパネリストとして登壇しました。

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セッションでは、社会の持続的かつ長期的な利益のために行動する「ステークホルダー資本主義」を実現する主体としての取締役会の重要性が議論され、経営者である各登壇者からはその実現に非常に意欲的な姿勢が示されました。

兵頭CEOからは、450年前から今日に至るまで一貫して「社会課題とニーズの追求」を持続可能な成長の源泉にしてきた歴史と、気候変動のような大きな課題も企業活動を通して取り組んでいることが紹介されました。

NestleのPaul Bulcke取締役会長は、短期利益と長期利益のバランスを取ることが取締役会の役割だと指摘。四半期ごとの業績報告が資源をキャッシュに変えるような短期的な利益追求になるとの意見が共有されました。

MassellazのAndre Hoffmann会長からは、財務資本に加えて自然資本、社会資本、人的資本を考慮し、財務諸表にSDG活動を計上できるような仕組みを導入することが変化につながるという見方が表明されました。

■Climate Adaptation for Resilience【小泉大臣登壇】

オランダ政府が主催するCAS 2021(Climate Adaptation Summit 2021)のクロージングに位置付けられたこのセッションには、小泉進次郎環境大臣がパネリストとして登壇しました。「気候変動対策と防災におけるリーダー」と紹介された小泉大臣は、経済から国家安全保障まで気候変動対策をあらゆる行政施策に含めていることなど、日本の活動と貢献を世界に向けて発信しました。

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日本が気候変動対策と防災政策を合わせて取り組み相乗効果を生み出していることを「Adaptive Recovery」として紹介。さらに、民間セクターにとって気候変動対策はリスクにもチャンスにもなりうるとし、政府がベストプラクティスを共有する取り組み事例として「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」を挙げました。

■Resetting Consumption for a Sustainable Future【サントリー新浪社長登壇】

サステイナブルな未来のために「消費」サイクルをリセットするーー 何十億という消費者に日々向き合うグローバル企業が、具体的な取り組みと今後について真剣な議論を交わしました。理想やなすべきことを列挙していた数年前から、グローバル・プレイヤーが最前線で確固たる戦略を持って行動段階に入っていることを示すセッションになりました。

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サントリーホールディングスの新浪剛史社長は「社会貢献」が創業以来の企業DNAに根付いていることを紹介し、最優先課題とする「水資源の継承」への取り組みを紹介。地域コミュニティや大学などと連携している水資源運用プロジェクトがすでに米国や欧州にまで拡大しており、今後はASEAN諸国にも展開する予定を明らかにしました。さらに教育と通じたユニークな取り組みとして、子供たちを『水資源アンバサダー』として水資源の重要性を大人や社会に伝えていく取り組みも共有。「時間のかかる作業だが、将来的に成果を生む」と語りました。

廃棄物の循環型再利用をグローバルに推進しているP&G社CEOのDavid Tayler氏は、循環を設計・実行して、インパクトをもたらす重要性を強調。新波社長も「これはCSRの取り組みではなく、戦略として行っている」と明言し、投資が経済的規模を獲得するためには業界横断的な取り組みやパートナー連携が重要になることを強調。テクノロジーによる新たなアイディアへのイノベーションへの期待も表明しました。

最後に、次は「政策」をターゲットして活動スケールを一層拡大していくという提言もあり、今後の更なるインパクトに注目されるセッションでした。

■Rethinking Cities for a Post-COVID Future

パンデミック後の都市のありかたを考えるこのセッションには、市長、テクノロジーエキスパート、ハウジング支援団体、開発事業者など、さまざまな視点から新しい都市のありかたが議論されました。

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ヘルシンキ市長であるJan Vapaavuori氏は、ヘルスケア、ハウジング、隔離、データ収集といった都市の構造的弱点がパンデミックで浮き彫りになったことや、危機対応に際して人と人、市民と行政のあいだのトラスト、そして官民パートナーシップといった連携がパンデミック以前に築かれていた否かが成否を分けたとしました。

スマート都市インフラ開発を手掛けるSridahar Gadhi氏は、社会インフラのデジタル化が加速している一方で、デジタルデバイドの問題が大きな社会課題として顕在化していることを指摘。解決策の事例として、ペンシルバニア州のErie市においてインターネット環境がなく宿題ができない子供たちのために、スマートライティングを導入して電力支出を50%削減し、その節約分を無料WIFI提供にあてたプロジェクトを紹介しました。


世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ティルグナー順子
大原有貴(インターン)


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