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4IRアジェンダブログ:テクノロジーをより持続可能なものにするには?

パンデミックの間にも、持続可能な開発目標(SDGs)の達成期限は刻々と迫り、2030年まで10年を切りました。深刻化する不平等・教育・気候変動といったグローバルな課題に立ち向かうため、2021年9月20日~23日に世界経済フォーラムが持続可能な開発インパクト・サミットSDIS21: Sustainable Development Impact Summit 2021)を開催しました。

テクノロジーは気候変動など大きな課題への解決に役立ちますが、コロナ禍はその重要性をより顕著にしました。仕事、学習、買い物のデジタル化に加えて、ワクチンパスポート、接触追跡・確認アプリの登場など、テクノロジーのパンデミック対応は枚挙にいとまがありません。そしてこうしたテクノロジー依存は、インターネットへのユニバーサルアクセス、サイバーセキュリティ、電子機器廃棄物などの課題をより顕在化させています。本記事ではSDIS21開催に際し執筆されたアジェンダブログ「SDIS21: Tech for Good - What are the challenges in making technology more sustainable?」をご紹介します。

原文(SDIS21: Tech for Good - What are the challenges in making technology more sustainable?)はこちら↓

世界的なデジタルシフトと、責任あるテクノロジーガバナンス

パンデミック対応にテクノロジーが活用され、ハイテク製造業が景気回復を牽引しました。国連の「Sustainable Development Report 2021」によると、2020年の第3四半期・第4四半期のハイテク産業は前年比で4%の成長率となり、その理由は在宅勤務・遠隔学習・電子商取引への世界的なシフトによる需要の増加であるとされています。

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一方で世界経済フォーラムとBCGの報告書は、新型コロナウイルスは「デジタルアクセスに存在する格差を明確に露呈させた」と指摘しています。事実、テクノロジー利用に関し、差別的なアルゴリズム、データの非倫理的な使用などを防ぐために責任あるテクノロジーガバナンスへの対応が急務になっています。

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SDGsとテクノロジー

SDGsにおいても、テクノロジーを包摂的にすることと密接に関連するゴールが設定されています。

SDG8「働きがいのある人間らしい仕事と経済成長」             多様化、技術のアップグレード、イノベーションを通じた経済生産性の向上。雇用の創出、起業、零細・中小企業の成長を支援し、銀行・金融サービスへのアクセス拡大。
SDG9「産業、イノベーション、インフラ」                 すべての国の産業部門の技術力の向上、途上国における国内技術の研究開発とイノベーションの支援、情報通信技術へのアクセスの向上など
SDG12「責任ある消費と生産」                      廃棄物の削減、より持続可能な調達の実現、より持続可能な消費と生産に向けた途上国の科学技術能力の強化など

包摂的なテクノロジーとE-waste

最新の国連SDGs進捗報告書によると、2020年には世界のほぼ全人口がモバイルネットワーク圏内に住み、85%が4Gでカバーされている一方で、後発開発途上国(LDCs)でインターネットを利用しているのは5人に1人にとどまっています。経済・教育・社会活動の多くがオンライン化するなかで、質の高い安全なインターネットにアクセスできないことは社会問題の深刻化につながります。

また「E-waste」への対処も急務です。2019年に世界で発生した電子・電気機器廃棄物は2014年から20%以上増加しており、今後も増加する見通しですが、E-wasteのリサイクルは十分に浸透していません。E-wasteは有害な化学物質が放出し、環境と人間の健康を危機に晒し、金やプラチナなどの貴重な原材料のロスにも繋がっています。

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パートナーシップによる取り組み

世界経済フォーラム第四次産業革命センターは、世界の政府、企業、市民社会、専門家のパートナーシップを構築し、テクノロジー政策とガバナンスに関するアプローチを共同設計し、実証を推進しています。AIと機械学習、IoT・ロボティクスとスマートシティ、ブロックチェーンとデジタル資産、自動車と自律型モビリティ、ドローンと未来の空域の6分野に焦点を当てています。

The Centre for Cybersecurityでは、サイバーセキュリティの課題に取り組み、デジタル社会の信頼性向上に向けたグローバルな取り組みを行なっています。独立した公正なグローバルプラットフォームとして、サイバーレジリエンスの構築、グローバルな協力体制の強化、未来のネットワークとテクノロジーの理解という優先事項に沿って、国際的な官民連携を促進しています。

The Platform on Digital Economy and New Value Creationでは、企業がテクノロジーを活用し、不測の事態にもアジャイル(迅速)に対応し、デジタル時代のビジネスモデル構築を支援しています。5Gへの長期的かつ包摂的なアクセス確保に注目しています。

Circular Electronics Partnershipは、世界経済フォーラムのPlatform for Shaping the Future of Global Public Goodsの一環として、産業界、政府、国際機関、市民社会のリーダーとともにE-wasteに対処しています。特にCircular Electronics in Chinaは、20025年までにE-wasteの50%をリサイクルし、新製品に20%のリサイクル素材を含めるという中国政府の目標を達成するために結成されたプロジェクトです。

私たち一人ひとりが出来ること

グローバルな課題に取り組むためには国際機関が旗を振りパートナーシップを推進することも重要ですが、私たち一人ひとりが出来る取り組みも多く存在します。個人データや会社のデータ、ネットワークの安全性を確保すること、E-wasteを適切にリサイクル・廃棄することなど、目標達成のためには私たち一人一人が行動することが求められています。

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター               佐藤良磨(インターン)

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