見出し画像

【開催報告】第3回 「自治体DX最前線」

市⺠中心のデジタルサービスを実現するために、地方自治体の取り組みが加速しています。コロナ対策サイトでシビックテックとの協働が話題となった東京都、押印義務撤廃を進めている福岡市、ブロックチェーン都市を宣言して改革を進めている加賀市など、複数の先進事例が出てきました。第3回目のデジタルガバナンスラボでは「自治体DX最前線」をテーマに、直面する課題に加え、国と自治体の関係や役割分担の再定義など、現場の最前線に立つシビックテックを含めた有識者視点からリアルな議論が展開されました。

開催報告

デジタルガバナンスラボ 
第3回「
自治体DX最前線
2021年1月9日@オンライン

登壇者(敬称略)

村上敬亮 (中小企業庁経営支援部長/前内閣府地方創生推進事務局審議官)
東博暢 (株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門 プリンシパル)
日高洋祐(株式会社MaaS Tech Japan 代表)
関治之 (一般社団法人Code for Japan 代表理事)
日下光 (xID株式会社 代表)

<モデレーター>
平山雄太 (世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター スマートシティプロジェクトプロジェクト スペシャリスト)

自助・共助の間にある「公助」の領域

先日、スーパーシティの取り組みでAgile50(アジャイルガバナンスの実現に尽力した公共部門リーダーを世界から50人選出する取組み)を受賞した村上さんによるレクチャー「Super City を巡る二つの論点について」では、①自助・共助・公助、②「薄い」データ連携基盤という2つの論点が提示されました。

平成以来の人口減少期には「自助=各分野サービス」と「公助=核となるエッセンシャルのファシリティ」の間に「共助=情報化社会にハイテクで重要な技術的投資が必要なインフラ」があると指摘。複数の「自助」のプレーヤーが支え合うことにより、新たに「共助」のビジネスモデルを作っていくことが重要であり、そのための利益共有型ビジネスモデルをどう発展させていくかが、今後の成否の鍵を握るのではないか、という提案がありました。

またSuper Cityのデータ連携基盤には異なるデータエリア間でのデータコンバージョンを確実にすることが求められているとし、データ分散方式の利点が示されました。

画像2

地域間での共通言語化とデータ統合基盤

東さんからは「ポストコロナ社会における首都圏・地方の再定義、スーパーシティ・スマートシティ」についてお話があり、首都圏一極集中の状態からの分散化・ネットワーク化がDX推進のポイントになることを踏まえ、スマートシティ推進には地域間で言葉が共通言語化されていない点にあるとの指摘がありました。

日高さんからは「Mobility as a Serviceの観点からみた交通分野」に関する取組みが共有され、交通・モビリティ業界の課題は「デジタル化されていない自治体や交通事業者のデータをどう利用するか」にあるとし、その上でデータ形式や頻度、粒度もさまざま交通関連データを企業・自治体が活用できる状態まで引き上げるため、データの受け取り・変換・蓄積・出力を行うMaaSデータ統合基盤を開発する取り組みが紹介されました。

「便利」よりも「幸せ」のために

「スマートシティ=便利なまちではない」というメッセージから始まった関さんの講義は、「便利」ではなく「幸せ」なまちをつくるための都市マネージメントが必要であること強調し、共助の領域に主体的に関わる中間層を育成しなくてはいけないとの意見が示されました。さらに、Code for Japanが目指すDIY都市の実現のための3つのポイントとして①幸せなまちの在り方をKPIにする②市民参加国によるまちづくりのツールキットを作る③複数都市で使えるオープンソースのデータ基盤を活用するということが挙げられました。

画像2

IDのインターオペラビリティを

日下さんからは、xIDを活用して行政サービスのデジタル化を推進する加賀市での事業について共有がありました。加賀市ではマイナンバーカードによる個人認証を進めて行政手続きをオンラインで完結できるサービスを推進しており、これをきっかけに自治体職員から積極的にアイディアが出るようになった事例が紹介されました。一方、日本のデータ連携基盤が乱立しつつあるという現状を指摘し、基盤同士・IDのインターオペラビリティが必要になるとの見方を提示しました。

自分=「幸せなまち」を作る一員

自治体レベルでのデータ活用が進む一方で、現場では「データ生成・活用は情報部門の仕事」と考える職員も多く、自治体内部でも当事者意識にばらつきがある現状が指摘されました。「幸せなまち」の実現にDXを活用するには、職員全体の当事者意識、企業の知恵、そして市民の積極的な参加を喚起していく取り組みが重要になります。

また現場では国、自治体、企業の立場と線引きを巡る混乱も起こっていることから、それぞれの責任や役割を再定義する必要性なども議論されました。

デジタルガバナンスラボは、こうした動きを見据えながらデジタル時代におけるあるべき”ガバメント”の見取り図をマルチステークホルダーで検討して参ります。


Author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 岡本直樹(インターン)
Contributors:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ティルグナー順子(広報)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?