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【開催報告】第5回 「企業DXの最前線」

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、まさに経営改革ーーー第5回デジタルガバナンスラボでは「企業DXの最前線」をテーマに、DX先駆者である企業経営者3名をお招きし、経営改革の観点から行政DXに必要な視点や戦略について議論を行いました。

開催報告

デジタルガバナンスラボ 
第5回「企業DXの最前線」2021年2月27日@オンライン

登壇者(敬称略)

横山隆介 (株式会社日本取引所グループ CIO) 
小河義美 (株式会社ダイセル 代表取締役社長) 
北川拓也 (楽天株式会社 CDO)

<モデレーター>
須賀千鶴 (世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長)

接続先を含めた全体レジリエンスの向上を追求

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「JPX(Japan Exchange Group)グループにおけるIT・デジタルガバナンスの取り組み」と題する講義を行った横山さんからは、システムトラブルからの学びを含め、その詳細な取り組みをご紹介頂きました。

まず、金融インフラとしてシステムを停止できない立場を大前提に、05-06年に起きたトラブルが、外部からのCIO招聘、開発と運用プロセスの分離など、現在のITガバナンス基盤の構築につながった経緯が示されました。

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品質を自分たちでコントロールするために、システムを縦割りでなく一気通貫で開発するための抜本的な見直しについても言及。さらに、昨年10月に生じたシステムトラブルについても、障害が起きることを前提に、早期復旧手段の確保、被害の局所化設計といった重要な学びについても共有していただきました。

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また多くの関係者が緊密に接続しながら全体としての機能を果たすシステム構造ゆえに、JPXグループだけでなく、接続先を含めた全体としてのレジリエンス向上を追求していく重要性が示されました。これはまさしく行政DXにも同様に求められる視点です。

言語を統一し、論理的思考力を鍛える

小河さんからは「企業DX最前線とガバナンスー株式会社ダイセルの事例ー」というテーマの下、ダイセルでの徹底した管理システムの事例をもとに、行政DXの着手点につき重要な示唆がありました。

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「クロスバリューチェーン」というキーワードからは、一企業、一工場という概念を捨てて自分の会社をサプライチェーン工程のひとつとして位置付け、迅速な意思決定のために全体構造をシンプルに設計するという発想の転換の重要性が共有されました。

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さらにDX化にあたり①言葉の統一化、②ロジカルシンキング(論理的思考)という2つのステップを強調。言葉を意識的に統一しなければ、接続されたステークホルダー間でのノウハウ共有がうまくいかないこと、ロジカルシンキングを鍛えないとデータに対しての人間の意思決定が追いつかない事態になってしまうことが指摘されました。

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概念・作法・道具

北川さんによるレクチャー「行政DXの戦略」では、人材不足とそれに伴う金余り、人材採用・育成の難しさ、政治家がリスクを取れるガバナンスの欠如など、行政が直面するであろう課題が構造的観点から紹介されました。そのうえで行政のDX戦略に不可欠なこととして、組織構造の疎結合、海外の人材を活かしていくケイパビリティ、リスクが取れるガバナンス構築がキーワードとして提示されました。

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また、部分最適ではなく全体オーケストレーションを図る要素として、文化づくりの重要性が指摘されました。千利休によるお茶の文化を引用して概念・作法・道具という3つの要素を紹介。これを組織変革に落とし込むと、「疎結合によるサービスデザイン」という概念、「エビデンスベースで意思決定をする」という作法、「コミュニケーション」の道具、この3つが一貫してこそ文化になるという考察が示されました。

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小さな成功を賞賛し、失敗を許容する

今回のセッションを通じて、DX実現のためにはリスクを取るガバナンスが必要であることが繰り返し強調されています。今の私たちの社会に、失敗を許容しない風潮や失敗した人を叩くという傾向があるのは否定できないでしょう。これを失敗を挽回するまで見守る、そして小さな成功を賞賛する文化に変えていければ、日本の行政DXも大きく飛躍するのではないでしょうか。風土は一朝一夕で変えられるものではありませんが、まさにDXの「概念」「作法」「道具」を意識的に組織内に埋め込んでいくことがその解になると思えました。

DX推進の目的の明確化、全体的視点という視座、接続されたステークホルダー間での協力、一貫した文化の醸成といった今回の学びは、各参加者にとっても非常に重要な気づきになったとを確信しています。革新的なソリューション創造に向けて、デジタル時代の”ガバメント”をマルチステークホルダーで検討するべく、私たちは今後も活動を続けて参ります。


Author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 甲谷勇平(インターン)
Contributors:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ティルグナー順子(広報)

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