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IT公共調達改革に関するデジタル庁への提言

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター アジャイル・ガバナンスプロジェクトでは、デジタル社会を支えるためのアジャイル・ガバナンス(機動的で柔軟なガバナンス)を実現する上で不可欠となるIT公共調達改革に取り組んでいます。先月は諸外国の専門家や、日本における公共調達の実務に携わる産官学民の関係者とともに、新しいIT公共調達のあり方について検討する2DAYSワークショップを実施しました。さらに先日には、ワークショップでの議論を踏まえた内容を、デジタル庁に「IT公共調達改革に関する提言書」として共有しています。本ブログではワークショップ及び提言の概要についてご紹介します。

2DAYSワークショップ「Public Procurement 2.0」


2021年12月9日、11日の2日間に渡り、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター主催のもと、ITシステムの公共調達改革を検討する「Public Procurement 2.0」を実施しました。DAY1ではイギリス、カナダ、ブラジルなどで公共調達改革に取り組む実践者が、その先進事例を共有しました。DAY2では諸外国の実践例をベースに、日本の関係者とともに、今後の改革の方向性や、改革のレバレッジとなる取り組みについて議論を行いました。 

Day1:諸外国の先進事例の共有
Day1は調達改革の最新事例として、英国におけるデジタルマーケットプレイス(詳細はアジャイルな調達を実現する「デジタルマーケットプレイス」を参照)と、世界経済フォーラムAI・機械学習プラットフォームの提案するAI調達ガイドラインについてそれぞれ有識者より紹介がありました。そのほか、AI調達の実践例として、英国の運転・自動車基準局( the UK's Driver and Vehicle Standards Agency)とブラジルにおける国立病院と国営企業が運営する地下鉄でのAIシステムの調達及びその活用事例が共有されました。

Day2:日本でのIT公共調達改革のレバレッジを模索する
Day2はデジタル庁等の政府機関や地方行政職員、ITベンダーやガブテック企業、一般社団法人など日本で調達改革に関心を持つ多様な関係者が集い、改革の方向性や、改革のレバレッジとなる取り組みについて議論を行いました。さらに次の4つのトピックについて、官僚有志が現状の課題や改革案について話題提供を行なった後に、小グループに別れて議論を行いました。 

トピック1「プロジェクトライフサイクルにおける調達 一貫した戦略を持ってPJを回す仕組みとは?」
ディスカッションテーマ:
プロジェクトの価値を最大化させるために調達のライフサイクルはどうあるべきか。特に、利用者である市民やサービス供給者の視点でも納得感のある ①評価指標(KPI) ②評価手法は何か
トピック2「デジタルマーケットプレイスの導入に向けて」
ディスカッションテーマ:
①デジタルマーケットプレイスを導入する利点は何か             ②マーケットプレイスを導入する上での障害は何か、どうそれを乗り換えるか
トピック3 「プロジェクトダッシュボードの導入―調達管理情報の一元化ー」
ディスカッションテーマ: 
 ①プロジェクト横断で共有すべき情報にはどの様なものがあるか
②評価情報の信頼性をどう考えるか?省内のみならず、より広く情報活用する上ではどのような課題があり、どう解決するか
トピック4「 調達人材の育成」 
ディスカッションテーマ:  
①PMを育成するために必要な環境は何か、どのように実装するか
②行政と民間人材の役割分担はどうあるべきか

公共調達改革に関する提言書をデジタル庁に提出

ワークショップでの検討内容を踏まえ、デジタル庁に向けて以下の3点を主軸とした提言書を提出しました。

1.  日本版「デジタルマーケットプレイス(DMP)」
・行政、ベンダー双方にとって参加するインセンティブを意識した仕組みを構築し、国民にとってより良いサービスを迅速に届けることを目指す
・国と地方自治体が同じマーケットプレイスを利用し、コスト削減を図る
・他国の先例を早急に調査し、日本に適した形でのDMPを模索する
・本格導入に向けて、意欲ある地方自治体で先行実施する

2.  行政職員の調達スキルの向上と育成
・行政職員のデジタルリテラシー(特に調達スキル)を向上させ、環境変化に左右されないプロジェクトの継続性を担保する仕組みを構築する
・人材育成に向けて、副操縦士的なポジションに行政出身者を配置し、プロジェクトマネージャー見習いとしてノウハウの移転を行う
・産官学を促進してデジタル庁内に専門家を配置し、複雑な契約のバリエーション対応と、行政職員への専門的知見・アドバイスの提供を行う。

3.  評価軸の設定・ナレッジシェアの仕組み
・多角的な観点で検討されたKPIに基づき、プロジェクトのライフサイクルを通じて継続的な改善を行う。
・プロジェクトごとの進捗状況や関連文書、事後評価や引き継ぎ事項等を一元化し、横断的に共有可能にする仕組みを導入する。

提言書全文と賛同者一覧は以下の通りです。

今後について

デジタルマーケットプレイス(DMP)は、売り手買い手双方の負担を軽減し、より効率的な調達を可能にする画期的な仕組みです。多くの中小企業にビジネスチャンスを提供し、公平性・競争性を担保するという点においても重要な役割を果たすことが期待されます。しかし、日本での実装を検討する上では、各国事例を参考にしながら関係者と議論を重ね、法制度や運用の枠組みなど、具体的な論点を明確にし、実装までのロードマップを描いていく必要があります。

引き続き、アジャイル・ガバナンスチームは、行政機関や民間企業、市民社会組織と連携しながら、デジタルマーケットプレイスの国内実装をはじめとしたIT公共調達改革および、アジャイル・ガバナンスの実現に取り組んでいきます。

本件についてのお問い合わせ:


執筆:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 中野佑紀(インターン)
企画・構成:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 隅屋輝佳(プロジェクトスペシャリスト)・ティルグナー順子(広報)・工藤郁子(プロジェクト戦略責任者)

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