見出し画像

【開催報告】第9回 デジタルガバナンスラボ「デジタル庁への提言」

デジタルガバナンスラボでは、2020年11月の開始以来、計8回にわたって行政DXをテーマに必要な視点、マインド、施策について官僚、アカデミア、企業、シビックテック、メディアなど多様な立場のメンバーとともに議論を重ねてきました。

第9回目となるデジタルガバナンスラボでは「デジタル庁への提言」として、デジタル庁発足を間近に控えた平井大臣(開催当時)をお招きし、これまでのデジタルガバナンスラボの議論を元に4つのテーマから成る提言と議論を行いました。

開催概要

デジタルガバナンスラボ 第9回「デジタル庁への提言」
2021年8月20日@オンライン

テーマ一覧

調達改革
省庁横断のデジタル推進(各省庁のデジタル検討会の設置/省庁横断予算の創設 
官僚幹部のリスキリング
OJT型研修の推進

登壇者(敬称略)

<提言>
及川涼介(株式会社グラファ―)
井上裕介(厚生労働省大臣官房人事課総括調整官)
後藤宗明(一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事)
伊藤和真(株式会社PoliPoli代表取締役CEO)
菅野晶仁(Code for Japanプロボノ、株式会社YUIDEA等)

<特別ゲスト>
平井卓也(デジタル改革担当大臣、当時)

<モデレーター>
隅屋輝佳(世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター)

提言① "継続的な改良"のための調達実務改革

テーマの一つ目「調達改革」は、及川涼介氏より提言を行いました。総務省出身の及川氏は、現在、行政のデジタル化を支援するスタートアップ、グラファー(東京・渋谷)にて自治体のデジタルサービス導入に携わっています。

スライド2

組織設計、ナレッジ管理、マインドセットを柱にしたこの提言では、統一化できる事務作業であっても各自治体が独自対応している現状や、各省庁間でベストプラクティスが共有されていない現状と縦割り行政の弊害を指摘。その上でGovTech推進チームの組成、共通入札参加資格の策定、ベストプラクティスの発信環境づくりなどへの取り組みを対策として掲げました。

提言② 府省庁横断のDX推進のための新たな組織・予算

厚生労働省にて新型コロナウイルスの対策に携わっている井上裕介氏からは、府省庁横断のDX推進に向けた提言がなされました。

スライド3

縦割り化された予算編成・執行、政策立案プロセスが、現場が調整に追われることとなる原因となっており、シナジー創出を阻んでいることを指摘。デジタル化を各省庁の連携を促進するきっかけと位置付けた上で、各省庁連携のための委員に裁量を持たせたDX審議会の設置と、府省庁横断で予算編成など、各省庁連携のための「仕掛け」を提言しました。

提言③ 官僚幹部のリスキリング

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事として、リスキリングによるデジタル人材育成に携わっている後藤宗明氏は、官僚幹部のリスキリングについて提言しました。

スライド4

省庁内部の人材が持つスキルを可視化、行政DXに求められるスキルを定義したうえで、必要に応じてデジタルリテラシー向上の機会としてリスキリングプログラムを構築することが必須であると指摘。リスキリング先進国としてシンガポールの事例を取り上げた上で、行政DXを起点としたリスキリングが日本のDXを進めていくと述べました。

提言④ OJT型研修の推進

政策プラットフォームPoliPoliを運営し、政治家と共に政策を共創してきた伊藤和真氏からは、OJT型研修の推進が提言されました。

スライド5

行政内外の緩やかな連帯を基盤としたトライ&エラーを繰り返しながら仮説検証を行うことが必要となっている現状を踏まえ、OJT型研修の一環として官僚が勤務時間の中で外部との連携プロジェクトに携われる機会を作り、縦割り構造を超えた繋がりの機会を作ることが、仮説検証・アジャイルガバナンスの実践力の向上に繋がることを指摘しました。

提言総括

4つの提言の最後には、菅野晶仁氏から多様なステークホルダーが迅速にルールや制度を更新し続ける「アジャイル・ガバナンス」の重要性を提起しました。

スライド6

全体ディスカッション

各提言の後には、参加者に加え平井大臣も交えた議論が行われました。

「(イノベーション創出を目的として、外部と連携するための場所としての)出島の必要性について大賛成だが、どのような形にするかはまだ議論をしているところ」との平井大臣のコメントに対して、参加者からは、オープンソースポリシーを作り外の力を積極的に活用していくことが必要なのではないかとのアイデアが共有されました。また、コーディングができる外部人材が仕様書作成に追われジョブディスクリプションに合った仕事の機会が与えられていない現状などがあることから、小さなプロジェクトを起点とした外部人材の活躍の場を設けることなどについて、会場で議論されました。

210820_デジガバラボ集合写真_名前モザイク加工済1

調達改革にあたっては情報アクセシビリティ確保が重要であることや、最新技術をもつベンチャーの調達への参加機会の確保、省庁システムのクラウドベース化、現状のシステム維持に国と地方合わせ年間1兆円以上の金額が使われているといった論点が提示されるなど、白熱した議論が展開されました。

他にも、リスキリングに関する提言に関しては、平井大臣から「官僚に対するリスキリングは職員間の共通言語を持つ上でも必要不可欠」と言及いただきました。議論の最後には、「(デジガバラボとの)連携を深めていきながら意見交換を進め、行動に移れるものは行動に移していきたい」、「オープンでフラットな組織として今後も外部と連携しながら、身近なものから解決していきたい」との総括コメントがありました。

おわりに

「一人ひとりの多様な幸せを実現する、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を旗印に掲げるデジタル庁。その取り組みにあたっては、解決すべきさまざまな課題が存在し、マルチステークホルダーで知恵を出し合い、小さな失敗を繰り返しながらスケールさせていく”アジャイル”な取り組みが必要です。

本提言をもって、デジタルガバナンスラボ第一期は終了いたしました。世界経済フォーラム第四次産業革命センターでは、産官学での連携を促進しながらデジタル化に向けた課題解決に向け今後も活動を続けて参ります。

全提言内容(パワーポイント)

関連リンク

デジタルガバナンスラボ第9回での提言は日経クロステック/日経電子版でも取り上げられました。


Author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 伊藤龍(インターン)
Contributors: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ティルグナー順子(広報)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?