見出し画像

倍率「1倍」の推薦入試に落ちた

冬になると毎年思い出す。高校3年生のときのこと。学校から帰宅すると推薦入試の結果が届いていた。不合格だった。

なぜか、受験についてきてくれた母がひどくショックを受けていて、半泣きになるくらい落ち込んでいるその状況に、私はとても動揺した。なぜなら「せっかくあんな遠くに行ったのに……」と、ぼそっとつぶやいたからだ。不合格という事実よりも、頑張って遠くに行ったということの方が彼女にとって重かったらしい。

うん、いやまあ、確かに。わかるよ。愛媛の南の方の山奥から奈良の方まで遠征してくれたんだもの。汽車(愛媛の特急はディーゼル)に乗り、瀬戸大橋を渡って岡山まで約4時間半。新幹線に乗り換えて京都まで。さらに電車で奈良方面へ南下した。気温もどんどん下がって行くし、ホテルは山の中だし、で、とてつもなく遠いところに来てしまった……と、心細く感じていた。ついてきてくれてありがとう、母。
※一般的にはおそらく私の実家の方が「遠い」です。

受験したコースは「音楽療法」。(はあ、おこがましい、私が音楽療法なんて。今となってはそう思うが、それはいったん置いておく。)小論文のみの試験で、テーマは『ピアノの自動演奏機能について賛成か反対か論じなさい』というお題だった。全く興味がないテーマだったので、完全に思考停止したことを覚えている。そしてテキトーに書いた。トンチンカンで何を言いたいのかわけがわからない文章だったに違いない。きちんと着地したんだろうか……してない気がする。いや、そもそも「論じる」意味を理解していなかったし、読書感想文ですら書けなかったのに、なぜ小論一発の入試を選択したんだろう。あわよくばと思っていたのか?思っていたんだろう、アホだ……。教授のみなさま、そんなやつ落として正解ですよ!と自分ですら思っていたので、不合格を知らされても平常心でいられたのだ。

あと、心が無傷でいられた理由はもう一つある。試験帰り、多勢の人々が行き交う京都駅構内の階段の下りで足が絡まりすっ転んだのだ。そんなときに限ってスカートだった。しかも、尻もちではない。豪快に前方にぶっ倒れ、そしてその状態のまま何段か滑り落ちた。両手、両膝は傷だらけで、人々の視線をめちゃくちゃに浴びた。一生分。

恥ずかしい……
それより、一緒にいた母、
恥ずかしい思いをさせてごめんよ!!!
と心の中で叫んだ。

そんなハプニングがあり、私の中ではその時点ですでに入試は「完」となっていた。つまり「落ちた」だ。

よいこともあったので書いておく。大学推奨のホテルがとてもよかった。夕飯は美味しいフランス料理だったし、朝食のクロワッサンはカリっとしてフワッとして完璧だった。きっとリゾートホテルだったのだろう。天井も高かったなあ……もうそんなホテル泊まることはないだろうなあ……悲しくなってきた。やめよう。

それ以来、どうにかこうにか文章を書くことから、逃れ〜逃れ〜辿り着いた(尾崎さん)。ご安心いただきたいのだが、大学は面接が重要視されるところをダメ元で受けたら合格した。一応モーツァルトのソナタを弾いて、指定書籍(ほとんど読めなかったのだが)の感想も述べた。倍率10倍以上だったので、人生の運をそこで使い果たしたのは明らかだ。そして作品創作中心のコースを選択し、大学院も修了した。奇跡だ。ありがたい。両親や教授や周りの方々に感謝だ。

なぜ、今、こうしてここに書いているのか。
それは最近「ライター」という職業の方の、魔法のような技術を目の当たりにしたからだ。まるで私がすべて書いたかのように公開されてしまった記事が実はある。
※私が書いたそのままの文章ももちろんある。
それがこちら。

\生き物としての力を取り戻す/
WILD MIND GO! GO!


校正された記事をいただいたとき、文章でこんなに読み手の心を動かすことができるんだ!と衝撃を受け、「うぉー、私はまさにこんなことが伝えたかったんです!」という感動の雨霰、嵐だった。(とても面白いことをされているライターさんなのでご紹介したいのだが……うずうず)

もう逃げたくない!

そんな気持ちが今更芽生えてしまい、今はなるべく興味を持ちやすい、知人・友人が書く文章や、気になる分野の記事をきちんと理解できるまで読むようにしている。Twitterも同じだ。いや、Twitterこそ、限られた文字数で上手に書く人がいるもんだと感心するばかり。そういう人は必ず読書好き。そうだよね、そうだよね、やっぱりなあ。

私は取説や技術本は読めるが、それ以外の本がほとんど読めない。一文一文は読めてもそれらが繋がらなくて何も入ってこない。だから、もう、読めないものに関しては諦めることにした。せめて自分がどう思っているか、感じているかを「ふつうに」書いて伝えられるようになりたい。それがこのnoteを始めた理由だ。

ハッ!
ポッドキャストが放置されている。年内には更新しなければ。

(最後まで読んでくださったみなさま、ありがとうございました。誤字脱字は気づいたらこっそり直します。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?