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怪しの話

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You Tubeのの星野しづくさんのチャンネル「不思議の館」と、ツイキャス(You Tube)の「怖い図書館」に投稿した、不思議な話や怖い話をほぼ週1回のペースで掲載しています。
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2023年7月の記事一覧

金魚

今回は6年前、町内会の盆踊り大会の会場で聞いたお話です。 その年の盆踊り大会は、会場となっていた小学校のグラウンドにナイター設備が完成したこともあり、そのお披露目も兼ねて、学区の3つの町内会合同で開催された大規模なものでした。 当時私は町内会の役員をしていたので、会場のテントの設営や、売店の販売に駆り出されることになったのです。 盆踊り大会の当日、私はスーパーボールすくいの夜店の担当になりました。 私のほかにも30代の若いお母さんが三人と、近所のTさんという私と同年代の女

土管のむこう

 今回も私の幼少期のお話です。 以前にも少しお話しましたが、私は小学校1年まで市の中心部に住んでいました。 当時は高度経済成長期が始まったばかりで、私の家の近くでも戦後すぐに建てられたバラックと呼ばれる木造家屋から、モルタル造りの一戸建てにどんどん建て変わっている最中で、あちらこちらに空き地がありました。 また、インフラ整備も進みはじめていて、空き地には下水道工事用の大小の土管が積み上げられていました。 ちょうど「サザエさん」や「ドラえもん」に描かれているような空き地がリ

羽化

「はじめは缶コーヒーやったんです…」 男性はいきなり、そう話しはじめました。 5年ほど前、大学病院の眼科の待合室でのことです。 コロナ流行の前で、広い待合室は廊下にまで人があふれていました。 ざわつく待合室の長椅子で、私は各種検査を終えて診察の順番を待っていたのです。 となりに座っていた老人と付き添いの娘さんらしき二人が席を立ち、そのあとに初老の男性と老婦人が腰をおろしました。 男性は、ねずみ色のポロシャツに濃い同系色のズボン、白髪交じりの短髪で黒縁メガネををかけた、細身