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怪しの話

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You Tubeのの星野しづくさんのチャンネル「不思議の館」と、ツイキャス(You Tube)の「怖い図書館」に投稿した、不思議な話や怖い話をほぼ週1回のペースで掲載しています。
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2022年11月の記事一覧

支那事変従軍記章

これはとある中古品買取センターの店長から聞いたお話です。 ある日一人の男性が、買い取り依頼の品を持って店にやってきました。 いかにも遊び人といった感じの若者でしたが、持ち込んできた品は、茶道具の水指(みずさし)や茶碗、掛け軸など、およそその風体に似つかわしくないものばかりでした。 それらの品の中に、ひとつだけ異質な「支那事変従軍記章」というものがありました。 従軍記章は、功績があった人に贈られる勲章とは異なり、従軍したことを国が証明・表彰するものです。 軍功の有無や階級の

埴生の宿(はにゅうのやど)

これは私が会社務めをしていたころ、上司だったUさんという男性が、自身の体験談として語ってくれたお話です。 Uさんは大学時代、夏休みを利用してヒッチハイクでの四国一周の一人旅に出たのだそうです。 香川から愛媛、高知と順調に周(めぐ)り、徳島県に入ってまもなくのことでした。 予定していた市街地まで行く車にでくわさず、しかたなく途中の集落まで乗せてもらいました。 あとはまた別の車をつかまえて、その日の目的地までたどりつければと思い、通りかかる車を待ちながら山裾(やますそ)の一本

市民病院裏

これは私が4歳のころの古い記憶のお話です。 当時、子供用の三輪車を買ってもらったばかりで、兄弟のいなかった私は、 一人で家の周りを乗り回して遊んでいました。 そんな私のお気に入りの場所に、近くの市民病院の裏がありました。 出来てまだ数年しかたっていない新しい病院でしたが、その裏手は人通りや車通りもほとんどなく、何よりもその特殊な構造が遊び場として最適だったのです。 そこは道路と病院の建物の間に、地下へ通じる浅いU字形のスロープが設けられており、そのスロープをジェットコー

今回は、とある骨董店で聞いたうわさ話です。 骨董商や古物商というと、買い取りに行ったり、持ち込まれた品を買い取ったりしているようなイメージですが、実は大半の商品は業者の競り市(せりいち)で仕入れます。 競り市には、コレクターの処分品や、旧家の土蔵から出たばかりという骨董的価値の高い品から、業者の店の売れ残り、遺品整理の品、果ては使い道に困る引き出物のお皿など、ほとんどゴミに近いようなものまで、実にさまざまな物がならびます。 参加者は市(いち)の始まる前に下見をして、お目