伊達はこのまま出場しなくていいのか?試合から逃げなかった最後の四割打者と伊達朱里紗のクランドスラム
今回語る最後の四割打者のエピソードは伊達がグランドスラムを前にして出場すべきかという問題について、示唆を与えてくれるものと思う。
さて最後の四割打者と言えば、言わずと知れたテッド・ウィリズムズである。最後に四割が達成したのは今から半世紀以上前の1941年のことになる。
三冠王 <Mリーグで言うグランドスラムに相当する> にして四割打者 <Mリーグで言えばラス回避率100%に相当するほどの偉大な記録。> でもあったテッド・ウィリズムズ。
あのベーブルースでさえ三冠王は獲得しても四割は記録していない。テッド・ウィリズムズは打撃の神様と称されており、史上最強のバッターだと言っても過言はない。
このウィリアムズが打率四割を達成したときのエピソード少しだけ話をしたい。1941年の最終戦、試合前にウィリアムズの打率は.39955であった。公式記録的には毛を四捨五入するので四割到達と言っても良かった。
そこで当時レッドソックスの監督を務めていたクローニンは、ウィリアムズにフィリーズとのダブルヘッダーを欠場するよう提案した。しかし、ウィリアムズは、四割に5毛足りないと後から文句をつけられるのも癪と、ウィリアムズは正真正銘の四割という数字を求めて、最後に四割を下回るリスクを承知で出場を直訴したのである。
結果は2試合で計8打数6安打。打率.406となり打率4割を見事達成した。
よく日本でも規定打席に達成した打者は首位打者のタイトルを取るために、残り試合を欠場することがある。しかしテッド・ウィリズムズほどの傑出した異才はその欠場をよしとはしなかった。
テッド・ウィリズムズという本物の天才が見据えている認識の次元は他の優秀な選手ともまた少し違ったのかもしれない。
伊達朱里紗のクランドスラム。たしかにこのまま出場しなければ未踏の記録を達成することになるだろう。
しかし「タイトルのためだけに試合から逃げた」と揶揄されることはないだろうか?もし・・・最終戦に伊達が登場したとしたらどうだろう?観客はすっかり瞠目するに違いない。そうした誰もが目を見張る場面で見事にグランドスラムを達成したとしたら、それこそまさにエンターテイメントとしては最高潮に盛り上がるシーンとなるのではないだろうか。
こうしたサプライズの盛り上がりこそ世阿弥は「花」と言った。
果たしてコナミの伊達はこのまま消化試合をこなすだけなのだろうか?あるいは「花」の本質にあるサプライズを起こし、伊達を出場させ最高のクライマックスシーンを見ることはできるのだろうか?
コナミの最終戦は要注目である。
誰もがもう伊達は出場しないであろうと思い込んでいる、その時を狙って、敢えて伊達を登場させる。
世阿弥ならおそらくそういう演出をするに違いない。
最終戦、そこに「花」はあるだろうか?
ちなみにMリーグの平均的な選手でも75%はラスを回避できる。一方MLBの平均的な打者が残り二試合で四割を超える可能性は25%に過ぎない。
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「なぜ四割打者は絶滅種と化してしまったのか?」というタイトルで以下noteを書いています。全くニーズはないとは思いますが、もしこのなぜがわからず興味のある人がいればご覧ください。統計学の知識によってこれを解明しています。
こういうなぜを解明してゆく視点を一つひとつ獲得してゆくことで、物事を複眼的にとらえてゆくことが可能になってきます。
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