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テクノカットのテクノカット以前の呼び方

テクノポップが生まれた時代に流行したヘアスタイル「テクノカット」をご存知でしょうか? モミアゲを剃り落とし、襟足を刈り上げたヘアスタイルです。YMOのメンバーがこの髪型にしており、真似しやすかったため、彼らのファンのあいだで流行しました。

NHK、1979年ニュース「テクノポップ」より。一番左の後ろ向きが坂本龍一、一人置いて細野晴臣、高橋幸宏。全員の耳のあたりから後ろにかけての大胆なカットに注目

YMOの細野晴臣さんが最近テクノカットについて語っていたので思い出しました。

3人でテレビを観ながら雑談してたときに、小澤征爾さんが北京中央楽団に乗り込んで演奏する番組をやっていて。それまで中国では、文化大革命でクラシックが禁止されていたんだよ。それが解放されて、小澤征爾が指揮をして。「へー」って思いながらテレビを観ていたら、中国人の演奏家たちがみんなテクノカットなんだ。さらに、もうね、演奏者の目が輝いているわけ。解放されて。「演奏できる!」みたいなね、ニコニコして、目がらんらんと輝いてて。それを見て、「これだ!」って思ったんだ。

細野ゼミ 10コマ目(中編)細野晴臣とテクノ

このテレビ番組は1978年7月23日、TBS系『北京にブラームスが流れた日 小澤征爾、原点へのタクト』だと言われます。この時の北京の中央交響楽団の人々が演奏する表情を見て、この顔つきで日本人がシンセサイザーを演奏すれば「予想を超えた何かができるんじゃないか」と思ったそうです。そして美容院にいってモミアゲを切ってもらった細野さん……。

クラフトワークがロシア構成主義など20世紀初頭のアヴァンギャルド芸術を参照したのは、その力強く徹底されたビジュアルの統治性が理由だと思いますが、ドイツから見た共産主義国としてのロシアの距離感が、日本からだと中国になる、ということでしょう。一人ひとりの個性を重んじる時代になったがゆえに、全体で統一されたマスゲーム的な美を演出するのが魅力的だった時代かもしれません。

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