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雑談:ジャスティン・ヒースクリフ前後

最近読んでた『「湘南ポップス」メモランダム』という本で、「あ~なるほど!?」と思ったことがあったのでメモ。なんの話かというと、ジャスティン・ヒースクリフ。

1971年6月25日にワーナーAtlanticから発売されたジャスティン・ヒースクリフという謎の音楽家のソロアルバム。プロフィール的な情報は載っておらず、作詞作曲演奏のクレジットはすべてJUSTIN HEATHCLIFFで、つまりほぼ一人だけで制作した多重録音作品です。他のクレジットはレコーディング・エンジニアのJACKだけ。内容的にはビートルズ『ホワイト・アルバム』に影響を受けた、少しサイケ入ったブリティッシュロックの習作という感じの音です。

その後、ジャスティン・ヒースクリフは加山雄三のバックバンドでもあったGSグループ=ザ・ランチャーズのメンバー喜多嶋修の変名、エンジニアは吉野金次だったことが明らかになっています。一応、『ニューミュージック・マガジン』の当時のレビュー(1971年11月号p137)でも〈ヒースクリフというのは、実は日本人で、キタジマ・オサムという人なのだが、知る人ぞ知るなので詳しくは書かない〉と名前が触れられていたので、厳密に隠されてたというよりは公然の秘密だったのだと思います。

このアルバムはよく「はっぴいえんど以前」の文脈で語られます。というのは、はっぴいえんどのメンバー細野晴臣さん自身が2006年にこう書いています。

そのロックの核でもある「音」に拘った結果、吉野金次と出会ったわけである。当時東芝にいた吉野さんは元ランチャーズだった喜多嶋修とプライベートで実験的な録音をし、そのテープをたまたま聴いて衝撃を受けたことがあった。それはビートルズの実験精神に触発された、かなり高度な内容だったので、ぼくたちは即座に、その音を手がけた吉野さんと「傑作」をつくることにしたのである。

ミキサー:吉野金次さんのこと(2006年08月29日)

『「湘南ポップス」メモランダム』でも、加山雄三&ザ・ランチャーズ=湘南ポップスからはっぴいえんどをつなぐ視点が登場します。ただ、ちょっと時系列がわかんなくなるな?と思ったので、このアルバムのリリース前後の状況を本を参考におさらいしつつ解説します。

喜多嶋修と吉野金次の邂逅とザ・ランチャーズ

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2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定の定額マガジン(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。あとnoteの有料記事はここに登録すれば単体で買わなくても全部読めます(※登録月以降のことです!登録前のは読めない)。『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』も全部ある。

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