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『Feel The Music』のThe Shaggsの話だけ読む

最近何調べてますか?と聞かれたときに、気になっている問題は並列で頭の中に色々あって、たまたま市場に何かが出たときにその信号が反応し、そこでその問題に取り組み始める、という感じなので、なかなか一概に言えないのですが、今回は微妙だった結果を一つ……。読んでも知識は増えません!

The Shaggs『Philosophy Of The World』(1969)を御存知かと思います。美術教育を受けていない人達によるアート作品=アウトサイダー・アートになぞらえ、アウトサイダー・ミュージックと称されるグループです。

有名ですが軽く説明すると、「貴方の娘達は人気音楽グループになる」と母親が予言したのを真に受けたAustin Wigginという男が、楽器のできない自分の娘達にバンドを組ませ、結成から1年くらい経った1969年に財産をつぎ込んで録音した自主制作アルバムです。まだThe Beatlesすら現役の時代です! 録音を担当したエンジニアが「彼女たちに録音はまだ早いんじゃないかな?」と進言したものの、Austinは「鉄は熱いうちに打て!さ」と答えました。1000枚プレスしたものの、900枚は怪しいプロデューサーと共に消えていったそうです。

このレコードから流れてくる音楽は、楽器を持ち初めて演奏した時の無邪気さを保ち続けた、ドラムとギターと歌がそれぞれ独立して存在しているような無調和さと、しかし確かに一つの統合を目指している楽曲という単位とのせめぎあいです。彼女たちが頭の中で描いている音と実際に出てくる音のズレ、リスナーが持っている「音楽」のイメージと実際に聞こえてくる音のズレ。この「ズレ」を積極的に頭の中で補完することでできあがる、唯一無二の「音楽」の世界があります。こんな音楽は他に存在せず、こんな音楽の魅力があるのか!と誰もが驚いたはずです。

1969年発売当時は当然ながらほとんど誰も知らず、1980年に再発されて初めて多くの人が聴く結果となりました。このレコードを再発したのは、NRBQというバンドのピアノ奏者Terry Adamsと、the Whole Wheat Hornsというバンドのテナーサックス奏者Keith Springの、二人が運営するRed Rooster Records。ボストンのラジオ局「WBCN-FM」がthe Shaggsのレコードを流したのをまずKeithが聴いて、「すごく楽しい女の子たちがいる」とTerryに連絡し、メンバーを探し出して再発にこぎつけた、ようです。1970年代後半の出来事です。

で、ワタシが興味があるのはですね、じゃあWBCN-FMのDJはどこでこのレコードを買ったのか?という謎なんです。世界に広めたのはRed Roosterの再発だとして、その前にThe Shaggsを流してた人達は一体……?

Wikipediaなどによると、ロサンゼルスのラジオ局「KMET-FM」の日曜夜の番組「The Dr. Demento Show」の1973年12月24日放送回に、Frank Zappaがゲスト出演してThe Shaggsの「My Pal Foot Foot」と「It's Halloween」の2曲を流したのが最初の評価、みたいな話もあります。The Shaggsが解散したのは1975年ですから、まだ現役時代にZappaがラジオで曲を流したというのはすごい話。

さて、Zappaがすごすぎるのはひとまず置いといて、The Shaggsのレコードを最初にサイケデリック・ロックとして再評価したのは誰なんだろうと調べてたら、ちょっと気になる話を見つけました。

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2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定の定額マガジン(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。あとnoteの有料記事はここに登録すれば単体で買わなくても全部読めます(※登録月以降のことです!登録前のは読めない)。『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』も全部ある。

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