雑談:初出探しの将来
締切が立て込むと更新が滞ってしまう……ので箸休め。
言葉の初出にこだわる人とこだわらない人がいて、ワタシはそこそここだわる人です。大昔の言葉は難しいけど、せめてここ30年とかくらいの範囲の出来事なら、初出くらい調べればわかるのではないのか?という気持ちが強い。まあ本当に大昔……鎌倉初期くらいまでなら文献の数が限られるので、逆に探すべきところは限られるそうです。なるほどね。
「始めに言葉ありき」と聖書に書いてあるらしいですけども、実際は先に現象ありきです。犬という言葉が生まれてから犬という動物が生まれたのではなく、かならず動物が先にいて、それに後に名前をつけた、はずです。言葉の初出というのは、その言葉が示す概念や事物が人間に認識されたタイミングなので、初出を調べると、その出来事の分岐点がわかります。渋谷系という言葉が1993年10月頃に生まれたとしたら、その前に名前がまだなかった現象があって、その後に言葉によって現象が広まって拡張されていく、そこをポイントとして前後を考えればよくなります。だからまずとっかかりとして初出が必要。渋谷系の話をするのではなかった。
初出を調べる方法として、昔は『日本国語大辞典』(初版は1972~1976年にかけて刊行)という辞書を見るのが常道でした。この辞書は最初のが全20巻くらいあるので家に置くには大きいですが、日本全国のほぼすべての図書館に入ってるはずなので、見たことない人は家の近くの図書館で探してみてください。絶対ある。辞書の王道です。これで言葉を引くと、初出の用例が載ってるんですね。
ただまあ、初版が1970年代前半、第二版が2003年に出たとはいえ、所詮はインターネット以前の編集物であり、今となっては『日本国語大辞典』に載ってる初出の用例は、もっと古い用例がどんどん見つかっています。こういうのは数人の精鋭よりも集合知のほうが強いんですね。その辺は辞書編纂側もわかっていて、同編集部が運営している「日国友の会」という投稿サイトがあり、辞書に載っているものより古い用例を見つけたら投稿できるんです。知らなかったら結構面白いと思うから暇つぶしに見てみてください。
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2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定です(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。テキストを発掘次第追…
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