雑談:日本のビートニクの音源?
2021年7月末、『オン・ザ・ロード:書物から見るカウンターカルチャーの系譜~ビート・ジェネレーション・ブック・カタログ』という本がTWO VIRGINGSという出版社から出ました。監修・資料提供は山路和広(Flying Books)、執筆はマシュー・セアドー(神戸市外国語大学)。
これがすさまじい資料集で、よくこんなに集めたな……と感嘆するしかない膨大な量の書籍が掲載されています。最初の方にジャック・ケルアックの『On The Road(路上)』を中心としたビート・ジェネレーションの解説が20ページくらいありますが、以降は基本的にはビジュアルブック。キーワード解説的なキャプションはそこそこあるので、それを読んでいくことで理解を深めていく……という読み方になるのではないでしょうか。
とはいえ、あらかじめビート族についてそれなりに知っていないと完読(ここでは「書いてある文章全部読みきる」の意)は厳しいのではとは思います。誌面に玄人向け感が漂っています。読むと理解が深まるけど、眺めるだけでもわりと楽しい、ので、もしものために(「明日の朝までにケルアックの初版本について調べなきゃ!」という時など)買っておいて損はないでしょう。
で、この本は最後の方に、ヒッピー・ムーブメント/サイケデリック・カルチャーについても出てくるんです。しかも日本のも。バム・アカデミー、プシュケ、部族、名前のない新聞、ドロッパワー、PEAK……といった単語が並ぶとよだれが出る人も多いでしょう。多くはないか。
ビート/ヒッピーの定番人物も並んでいて、順にナナオサカキ、山尾三省、長澤哲夫(ナーガ)、山田塊也(ポン)、ボブ内田、長本光男(ナモ)、おおえまさのり、金坂健二、諏訪優、白石かずこ、片桐ユズル。カウンターカルチャーを愛する人ならもちろん全員把握していることと思います。
で、ですね。定番人物のトップバッター、ナナオサカキ(1923~2008)。この人のことが気になって、ちょっと調べてた時期があるんです。ビート詩人のゲイリー・スナイダーやアレン・ギンズバーグと親交の深かった日本人のビート詩人がいたんだ、と最初は軽い気持ちで調べ始め、バム・アカデミーや部族関連で名前が出てくるのも気になっていました。
バム・アカデミーのバム/BUMは乞食の意味ですが、1960年代当時「ビートニク」という言葉が流行していたものの、それはマスコミに都合のいい流行語にすぎないとして、自分達は乞食・浮浪者である、と自称したんですね。ボヘミアンを意訳したのでしょう。だからバムは日本版ビートってことで、バム・アカデミーは新宿「風月堂」に入り浸る詩人と芸術家たちの集団です。
部族は単純に書けば日本流のヒッピーです。新宿「風月堂」に出入りしていたナナオサカキ、ナーガ、山尾三省らが、日本の国家体制を拒否し、大地に根ざした生活を送る別の社会を築くために1967年に始めた生活共同体=コミューン運動が「部族」です。諏訪之瀬島に「がじゅまるの夢族(バンヤン・アシュラム)」、長野県冨士見高原に「雷赤鴉族」、東京都国分寺に「エメラルド色のそよ風族」などのコミューンを形成し、メンバーは各地を放浪しました。
ま、前提となる豆知識はそれくらいにして、この『オン・ザ・ロード』という本にですね、載ってない日本のビートニクの話を一つ思い出したぞ!となったのでその話を……(※豆知識です、重要ではありません)。
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2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定です(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。テキストを発掘次第追…
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