【ネタバレ有】アニメ・虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会第11話「みんなの夢、私の夢」感想

今(1−10話)までの感想はこちらから


 2020年12月12日、22時30分。ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のアニメ第11話が放送されました。

 上原歩夢!!!!!!!!
 歩夢のモノローグから始まらないことにどえらい動揺するところから始まってしまいました。最後まで観て更にとてつもなく動揺することになるとは……。
 同好会での今までの結実と広がり、スクールアイドルフェスティバルという大きな目標へ動き出し、夢も走り出していく過程と、その裏で押し込められ続けていた歩夢の感情の対比が苦しくも丁寧に描かれた回でした。

 この記事はアニメ感想ですが、若干スクスタの各種エピソードのネタバレ(中核とかではない部分)を含む可能性があります。
 アニメの内容についてはネタバレし散らかすのでご注意ください。

 歩夢の感情へ思いを馳せると苦しい。けれども同好会の成長や関係性の発展を見ると嬉しい。それはどちらかがどちらかを妨害するものではなくて、別軸で同じように成立しています。
 と書きながら、「別軸で成立している」ということ自体、歩夢の心がひとり離れたところで立ち止まっていること(「みんなの夢」と「私の夢」で色が分たれているように)を浮き立たせるようでつらみを増している気がしてきました。
 苦しいけれど楽しいし、嬉しいけれどしんどい、そんな感じの印象。よって視聴後の感情も情緒もはちゃめちゃです

 なお今回は道路標識、信号、非常口などの隠喩がたくさんあるのですが、一つひとつ詳しく触れることはしないと思います(感想の流れで触れるところはたぶん触れます)。

 これは他の方がよりスマートに解説してくださっている文章があるだろう、という考えはもちろん、そこまで書き出すと筆者の感情と体力がもたないためです。
 赤信号からの非常口だけでもう情緒がしっちゃかめっちゃかになってしまった…………とんでもないものを観た…………。

 では以下より、限界乱文をしたためます。
 なおこれは感想であって、考察や解説とは全く異なります。

上原歩夢

歩夢「聞きたくないよ……
侑「……歩夢?」
歩夢「私の夢を、一緒に見てくれるって。ずっと隣にいてくれるって、言ったじゃない……!」
侑「っ……」
歩夢「私、侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい。だから、私だけの侑ちゃんでいて……?

 虹ヶ咲アニメ史上最も心を置き去りにするEDの入り方。

 ともあれ、2話以降から端々に見えていき、10話で今話へ繋がる布石のようにより明確になっていた「何かを言えずに抱え込んでいる」ような表情や描写。
 それがとうとう今話において爆発しました。
 圧倒されて心がめちゃくちゃになって顔を押さえて頭を抱えてしまいましたが、ただ彼女が今話で言葉をぶつけられて良かったと心底思います。
 歩夢の主張を聞いて、今まで細かく積み重ねられてきた描写にも納得がいきました。
 納得も理解もできます。共感は視聴した人それぞれ0から100まであるでしょうが、どうあろうと彼女の感情を分かることは出来る。だから終盤は見ていて苦しい。そういう感じです。

 思えばスクフェスについて、侑の意見に相槌を打ったり同意したりすることはあるものの、明確に場を進展させる言葉はあまり口にしていませんでした
 OP直後に「私も手伝おうか?」とは言っていますが、侑に「フェスの準備で忙しいでしょ?」と気遣いと共に断られてしまっています。

愛「やっぱり1番の課題は会場かぁー」
侑「どこの会場も良いんだよねぇ〜」
歩夢「ひとつに絞るって難しいね」
侑「歩夢はどこでやってみたい?」
歩夢「え? うーん……どこが良いかなぁ
歩夢「東雲も、藤黄も、私たちも、それぞれカラーが違うから。そのみんなの願いを叶えるって、大変なことだよね」

 前話で「どんなライブをしたいか」に対し具体的な展望が出てこなかったのも、今話で候補地の希望が出てこなかったのにも納得がいきます。
 それは歩夢にとって「一般的な『スクールアイドル』として活動する」ビジョンが明確でないから。

 明確でない理由も今回はっきり示されました。
 彼女の目指すものは「高咲侑のためだけのスクールアイドル」だからです。

 2話で歩夢が果林さんのアドバイスを通して自覚したように、彼女が真っ先に想像するファン、「応援してくれる人」はひとり
 ずっと隣にいてくれると言い、夢を一緒に追ってくれると言ってくれた幼馴染です。

 なので敢えてどんなライブにしたいか、どこでライブをしたいかの問いにこの段階で答えるとしたら、
「可愛い感じで、侑が観てくれる場でのライブ」
 といった感じになるでしょうか。

 方向性としてはめちゃくちゃ明確。ただ、どうしてもそれは停滞と共にあります。良い悪い、正誤の問題ではなくて、それだけは事実です。
 侑も同じ地点に立ち続けてくれれば別にいいのですが当然そうではなく、だからこそ噛み合わないままに今へ至ってしまいました
 この「違い」を描く隠喩が豊富で激つらポイントが満載。描写が上手なアニメであるのを良いことに心をすり下ろしてきます

 それが顕著に表れていたのが、冒頭でも書いた交通に関わる物を使ったメタファーたちです。宣言通りにちょっとだけ触れます。

 せつ菜との会話後、帰宅の直前に映るのは「赤信号」。そこから侑の「話したいことがある」というメッセージが来た後には「非常口」
 停滞し進めない心の前に現れた、この閉塞から脱出できるという希望を示すような緑色

 少し明るい気持ちで向かった先には、止まる自分に気づかないまま、どんどん先の道の未来へ進もうとしている幼なじみの姿がありました。
 非常灯の緑かと思ったら青信号のほうの緑だったとか頭の中で謎の拡大解釈が始まりそうです。

 詳しい会話や感情の内容は下で触れますが、前話ではひとり立ち上がれず、今話では「止まれ」のメタファーとともに描かれた脱ぎ捨てられた靴→足で侑の足を縋るように挟むの、見てる側の感情がめちゃくちゃです。

 絵面のセンシティブさに目が行くより先に詰められた心の切実さというか、積み上げてきた描写と共に襲いくる息苦しさ絶望にも似た感情があの小さな動きから滲み出てくるようで、とてつもなくしんどかったです。

 また、今話でちょくちょく気にかけ、また本人にダイレクトに色々聞いてもいたせつ菜についても、対照が目立ちました。
 顕著なのは侑の夢に対する態度。前話のせつ菜は

いつか侑さんの『大好き』が見つかったら、今度は私に応援させてください!

 と、明確に侑へ伝えています(せつ菜の「大好き」は広範に意味を持つので「夢」と同視しても良いと判断しています)。
 対する歩夢はどうかというと、下記に述べますが、侑の夢を聞くことそれ自体を拒否しました

 そもそも関係性の前提から違うので、態度の違いが現れること自体はそんなに不思議ではありません。
 侑にとってせつ菜はきっかけで、せつ菜にとって侑は自身を引き上げ、「大好き」に対して背を押してくれた存在。せつ菜の視点からすれば、いつか背を押させてもらうことで与えたものと与えられたものの均衡が取れ始めます。
 歩夢にとって侑は、共にずっと隣で同じ夢を追おうと誘った存在。すでにこの段階で均衡がとれているはずでした。
 ただそれが、歩夢視点では崩れてしまった。侑の支えが歩夢にとっては足らない、あるいは望ましい形から見ると不完全になってしまった。

 独自文脈での表現になってしまいますが、せつ菜が侑との関係で望んだのは均衡を取ること、歩夢が望んだのは均衡を戻すこと。

 せつ菜は働きかけ、歩夢は引き留める。
 似てはいますが、内実と過程が非常に異なっています。

 だからこそ、前話でのせつ菜ー侑の会話を見た後の今話の終盤はより心にずっしりと……重みを……もたらしてきましたね……。


高咲侑

 ピ……ピアノ買ってる!!!! いつの間に!?
 前話でピアノが上達していたことについて、感想内で「1話で映っていた自室にはピアノやキーボードはなかったにも関わらず、」と書きましたが、知らないうちに買ってた……!


 電子ピアノ、安めでもたぶんだいたい3万円くらいはかかります。中古だともう少し費用は抑えられるかもしれませんが。
 それにしたってバイトをしていない高校生からしたら結構な金額です。ある程度の覚悟か「欲しい」という強い気持ちがなければなかなか手が出ないでしょう。


 3話で初めて映り、10話で目覚しく成長が見え、11話でより明らかに描かれたピアノと侑の関係性。
 ただこれ自体が侑の夢なのかと言われると、どうやらそうでは、あるいはそれだけではなさそうです。

侑「あのね、歩夢に話そうと思ってたことがあるんだ。ただ、自分でも自信が持てなくて、もっと弾けるようになってからって思ってたら、時間経っちゃってさ」
歩夢「それってピアノのこと?」
侑「え? うん、それもあるんだけど……
侑「私ね、夢が……」
歩夢「嫌っ!!」

 歩夢の声に遮られた、彼女の見つけた「夢」。それがなんなのか、彼女以外にとってどんな意味を持つのか。
 ずっと気になっていた「なにか」でもあるのだろうそれを言葉にして聞く日が遠からずやってきます。その瞬間がとても楽しみです。
 上に書き出した会話は全くそれどころではありませんが詳しくは次の項で触れます。


 そして一度歩夢関連からは離れた話として、スクフェスについて。
 侑の描いたビジョンは具体的に、より壮大になっていきました。

 その原動力は「スクールアイドルが大好き」という気持ち
 可愛くってかっこいいスクールアイドルから受け取り、幼なじみの勇気と願いを渡されて息づいた「ときめき」にあります。

 自分がもらったような感情や、自分が出会ってきた物語で生まれてきた気持ちや夢をお互いに与え合える場。
 ひとつのステージで行うライブという形式にすらこだわらず、街一つを巻き込んで、スクールアイドルが大好きな人たち、これからそうなる人たちが楽しめるお祭りをしたいと宣言しました。

 好きなものへの真っ直ぐさがとにかくものすごい。(心底想定外だっただろう歩夢の蓄積していった感情以外は)人の機微にも聡く、見れば見るほど凄まじい人です。


 たった一つ明確に指摘できる問題があるとしたら「歩夢のことを気にかけるのなら、はっきりと言葉にして尋ねるべきだった」くらいしかありません。そもそもこれ自体、彼女と侑の付き合いの長さや信頼関係を前提にしたら結構な無茶を要求しています

 では侑は精神が成熟しまくっている完璧ガールかと言われると、これはそうではないと感じています。
 関係が近いが故に歩夢と見ている景色が違うことを見逃していた、というものもありますが、ごく普通の人間、高校生が持つ弱さも持っているように思えるからです。

 とても分かりやすいのは前話から引き続き今話でも言っていた「ピアノが全然上手くならない」「自信が持てない」という発言。

 ほぼ触ったことがないので詳しいことは言えませんが、ピアノ始めた時期と練習に当てられただろう時間からしたらむしろかなり上達は早い方なのでは……? 前話でせつ菜が褒めてたのも絶対に嘘じゃないと思うけど……という感じですが、やはり侑からしたら自信が持てない様子。
 それは大抵のことは言えそうな幼なじみに対しても、「まだ言うのはやめとこう」と考えてしまうほど。

 初めて自分の意思で打ち込み始めたものについて、その上達に自信が持てない。
 少なくとも自分から積極的に人に見せるほど思い切れない、というのは、さほど珍しい考え方ではないように思えます。

 確かに侑は聡明です。自分の弱さを自分で口にできるし、他人の心にも寄り添えます。下で書きますがとてつもなく誠実な人間でもあります。
 ただ完璧ではない。言葉で言われなければ気づけないことだってあるし、全てを他人にさらけ出せるわけでもない。なによりここ最近まで、自分の本当にしたいことを分からずにいました。

 ジャージの着方が気まぐれだったり美味しい炭水化物に釣られたり夏休みの宿題を最終日までため込んだり笑いのレベルが赤ちゃんなところ以外にも、ちゃんと等身大のところがある

 それは結果として終盤の爆発の遠因にもなり続けていたわけですが、侑もきちんと高校生で人間なのだなと思える部分でもありました。


上原歩夢と高咲侑

 歩夢視点からしたら、スクールアイドルに出会ってからの侑の変化は恐ろしいものだったのかもしれません。
 意識的に恐ろしいとは思っていなくても、自分が当たり前のように思い描いていた未来とは異なる場所へ進んでいるのではないか、と不安に感じてしまってもおかしくはないと思います。

 1話で垣間見えた今までの彼女たちは、なんとなく目の前にある日常を消費しながら楽しんでいく普通の高校生でした。
 特に目指すものもなく、部活よりウインドウショッピングを楽しんで、もう少ししたら一緒に予備校に通う。
 この年齢で明確になりたいもの、やりたいことを思い描けている人は珍しいとは言わないまでも、多いとも言えません。ふたりも同じでした。歩夢から見る侑もそうです。
 はっきりした夢はないけれど、ゆっくりと、それなりの起伏を共有して生きていく。
 そう思っていた日々にとてつもない出会いが降ってきて、けれど、だからといって変わることなく本当に「今まで通り」を望むのだったら、歩夢はそうできたはずでした。

 廃部を知って諦めた侑と共にマンション入り口への階段を登って、いつも通りに帰るだけで良かった

 予備校へ通うときに使おうとパスケースを差し出すだけで終われば良かったはずです。
 でもそうではありませんでした。
 侑にとって、スクールアイドルにまつわる全てを具体的に始めたのは歩夢の言葉、歌、勇気です。
 歩夢が望んでいたのはそういった意味での「今まで通り」ではない。変化は望んでいたはずです。

 ただ、変化の中で彼女はなにが受けいられれなかったのか。
 それは上述したように、その夢がふたりだけのものではなくなること。
 幼なじみが強烈な速さで変わっていき、次々新しい場所へ飛び込み、人と出会い、自分を置いて遠くへ行ってしまうことなのではないかと感じました。


 執着や依存という文脈も無いとは言えませんが、小さな頃から同じスピードで歩んでくれ、ずっと隣にいると言ってくれた存在が、次々に新しいことを始め、ある日突然「夢を見つけた」と伝えてきたとき、焦りや恐れを感じることは不思議ではないと思います。

 上で少し触れ、下でも触れるピアノについては、理由でもあると同時に、それ以上に爆発のトリガーとしての意味合いが強いように感じました。


 では爆発した歩夢が吐露したように、侑は歩夢の隣にいなかったのか、夢を共に追っていなかったのか。
 前話感想でも書きましたが、やはりこれは全てNOだと思っています

 夜の侑の部屋。ピアノのことを初めて侑の口から知らされ、せつ菜は既に知っていたのに自分にはどうして、と詰め寄る歩夢。

歩夢「……だったら、どうしてせつ菜ちゃんには教えたの? 私には言えなくて、せつ菜ちゃんには……!」
侑「え? なんでせつ菜ちゃんが出てくる……」
歩夢「せつ菜ちゃんの方が大事なの!?」
侑「違うよ」

 即答と断言。言い方だけにとどまらず、この言葉に嘘はありません。
 侑はせつ菜だけを特別扱いしているわけではなく、対面する相手全員と丁寧に言葉と心を交わしているだけです。

 歩夢のこともずっと大切にしていました。
 OP直後の手伝いを断った理由は「歩夢は他の準備で忙しいから」。会場についても歩夢の意見を聞こうとしていますし、彼女から発せられた言葉を蔑ろにしたようなことはありません。
 ずっと隣にいて、同じ夢を見ています。

 そもそもあの勢いで詰め寄ってくる相手に冷静に「違うよ」と即答できる段階で、歩夢の感情(第一段階)に対する理解度がすごい。

 直前の会話から「どうやらせつ菜と自分との関係になにやら抱えているものがある」と気づき、感情が爆発した瞬間に即座にそれを否定しました。

 前の日の会話(「せつ菜ちゃんとは一緒に帰らないの?」)にもヒントはありましたが、それにしてもすごい。
 ただ言葉だけを聞いていたら突如上がったボルテージにビビってしまっていてもおかしくないと思います。普段穏やかで優しい幼なじみが急に声を荒げたのなら尚更です。けれど侑はそうではなかった。
 戸惑わず、恐れず、当然ながら逆ギレなんてものも全くせず、真っ直ぐに応えました。

 「どうしてせつ菜ちゃんには教えたの?」の答えも単純で、弾いているところにせつ菜がやってきたからです。

 侑が積極的に聴いてほしいと誘ったわけでもありませんし、せつ菜からしたら廊下を歩いていて聞き覚えのある曲が流れていれば気になるでしょう。3話のときは立場からして無断使用を注意する必要もありました

 歩夢の想定にあり得るような意味合いでの特別な意図は、ふたりとも無かったのではないかと思います。
 侑はピアノにまだ自信がないので人には言わず、せつ菜もわざわざこっそりした演奏行為を吹聴するような性格ではありません
 結果としてふたりの秘密みたいな形になってしまっただけで、あえてそうしたのとは全く違います。


 前話の抱き留めについては、せつ菜も人間なので暗い廊下でつまづくことだってあるだろうし、体が反応すれば転ばないよう受け止めようとするのはそれはそうでは、という感じです。なんか色々と全てのタイミングが悪すぎただけで。
 せつ菜が転びそうなのに気づいてて受け止めず見てるだけとか、雑に支えようとしてたらそっちのほうが歩夢的にもなんか嫌なのでは……?


 むしろ、部屋で伝えようとしていた話の内容からして、侑が歩夢のことを特別に考えているのはあまり疑いようのないことじゃないかと感じました。


 せつ菜との会話ではまだ気づいていないか、気づいていても言葉にしていなかった「大好き」を、歩夢に真っ先に伝えようとしていました

 いつだって気楽に会えるし、それこそベランダに出ればすぐ済むけれど、わざわざメッセージで呼び出してまでです。

 今まで見つからずにいて探していた「何か」を、「夢」を言葉にして教えるというのは、きっと侑にとって大きな意味を持つことだったでしょう。
 そうしようとしていた相手はせつ菜ではなく、他の誰でもない歩夢です。
 ずっと隣にいると約束して、おばあちゃんになってもよろしくなんて言えるほど、当たり前のように共にいる未来を描いている相手。


 歩夢の心が立ち止まっていると知らない侑からすれば、「せつ菜ちゃんを歩夢より大事にしているとか、そういうことじゃないんだよ」と伝え、その先の話──侑が思い描くのだろう歩夢との未来──をするのは、誤解を解きつつ希望を広げる最適解。

 ただ、歩夢にとって侑の存在は、侑が自覚している以上に重かった。隣にいること、一緒に夢を見ることの範囲がちょっとだけ違っていた
 この数点だけが致命的な見落としでした。

 月明かりの部室で会ったとき、侑の顔は照らされ、歩夢の顔はほとんどが暗がりに落ちていました。

 前話の音楽室でせつ菜と侑が同じ月明かりに照らされながら話していた場面とは対照的です。

 ただそれでも、歩夢にもわずかですが月明かりがかかっている
 現段階ではなんとも言い切ることができませんが、彼女がただ暗がりに落ちるだけではない、同じ光の中で夢を語れるような関係になれるようにと願っています。


「スクールアイドル」

 仮の話、歩夢の願いが心底「侑だけのスクールアイドルでいたい」というもののみであって、今後においても変わらず唯一のビジョンだったとしても、それは「スクールアイドル」として何も間違っておらず、反してもいません。

 そもそも「スクールアイドル」とは何か。アバンにてメガネの似合う超かわいい茶髪ロングの生徒会副会長の

「すみません。私が疎いだけかもしれませんが、スクールアイドルとはどういうものですか?

 という質問に対し、中川菜々生徒会長はこのように答えていました。

一般の生徒たちが、学校の部活としてアイドル活動をするんです

 歩夢も学校の部活としてアイドル活動をしています。この定義からは外れていません。

 侑が3話でせつ菜へ向けた

スクールアイドルがいて、ファンがいる。それで良いんじゃない?

 という、ある種の今作におけるスクールアイドルのあり方についての指標ともいえる言葉にも反していません。
 ファンであり応援してくれる侑と、スクールアイドルの歩夢がいる。
 当事者ふたりがそれで良ければ、そこには何にも反さない、正しく「スクールアイドル」の姿があります。

 スクールアイドルだからってラブライブに出なくてもいい。それは人によって目標になるかもしれないけれど、絶対条件ではありません
 同様に、スクールアイドルだからといって、大勢のファンへ向かって歌わなければいけない訳ではありません。
 たったひとりの大切な存在のために歌うスクールアイドルがいても良い。それぞれに違う形がある中で、これだけが特段弾かれる理由はなにひとつありません。

 なので、例え歩夢が侑のためだけに歌って踊るスクールアイドルだとしても、それで良いのです。ただの個性であり、そういうあり方のひとつというだけ。
 それは「間違っている/間違っていない」という俎上に乗せられるものですらありません。問いを向ける必要すらない。
 物語も情熱も夢も、その方向に基づいて進んでいきます。
 他の同好会メンバーの物語や夢だってそれぞれに違っていて、その内のひとつとしてそうあるだけです。

 歩夢の願いがここだけに留まっているのなら、侑と歩夢の(現段階で明言されている)夢は相反することはありません。
 ただ、たったひとつの願いが、ふたりの夢と願い、あるいは「何か」の両立を妨げていました。
 それが上でも書いた、ED直前の歩夢のセリフ、その後段

歩夢「私、侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい。だから、私だけの侑ちゃんでいて……?

 前段はこの項で触れてきた通り、なんの定義にも誰の夢にも抵触することなく叶えられますそうあることは自由で、否定されるべきではありません。
 ただこの後段だけはそうはいかない。

 明言されていないものの、侑の追っている「何か」の射程には少なくとも同好会メンバーの存在が入っています。
 仮に歩夢を対象にしたものだったとしても、その前提段階に他者との対話やエピソードの存在が介入してくるはずです。
 なぜなら侑の物語はそうして進行してきたから。

 せつ菜と出会い、歩夢と踏み出し、同好会を復活させ、新しいメンバーを迎え、他校のアイドルとも関わり、大きなイベントを開きたいと瞳を輝かせ、具体的に動き出すに至ったこれまでの全てに、歩夢以外の存在が介在しています。

 侑の夢がなんであれ、歩夢の後段の望みをなんの抵触なく叶えることはおそらく不可能に近いことではないかと考えています。
 少なくとも、侑は何らかの形で何かを諦めることを強いられる

 それは同好会メンバーを全力で支えるという楽しみだったり、たくさんのファンたちの熱気をともに感じることだったり、他にも色々と挙げられるでしょう。
 いわば歩夢の願いを言葉通りに捉えて全てを叶えるのだとしたら、侑の何かを否定しなければいけない。


 こう書くと歩夢が超怖い子みたいになってしまいそうなのですが、そうではありません。膨らんで膨らんで弾けたからびっくりしてしまいますが、感情自体は特異ではなく、普通の人が持ちうるものです
 上でも触れた通り、焦りや恐れ、それと変われない自分への自己嫌悪もあるかもしれません(後ろめたさがなければもっと初期に言ってしまっていてもおかしくないので)。あとは一応嫉妬や独占欲というものも入ってはくるでしょう。

 そして人間、感情が爆発するときにばらまく言葉が全部本心ありのままかと言われると、案外そうでもありません。
 心や情緒が乱れたとき、思ってもないことをつい言ってしまうだとか、そこまでではなくとも、本当の心とはずれた言葉を口にしてしまう場合も割とあるものだと思います。

 そもそも平静時だって感情や気持ちを適切に言語化して伝えられるかといえば微妙なところ
 不定形な感情を無理やり言葉の型に押し込めるのですから、その辺りは対人コミュニケーションという行いの前提にあることでしょう。どれだけ語彙が増えようと、こればかりは完璧に克服するのが難しい問題です。


 また、同様に前提を疑うとするのなら、自分が自分の感情をはっきりと把握できるかどうかも怪しいと考えています。焦りや不安が胸にあるのならなおさら。
 喜怒哀楽やそれこそ散々このnoteで言い散らかしてきた「しんどい」くらいまでは把握できたとしても、その過程や内実をきちんと自分で理解できるかは別の問題です。

 つまるところ何が言いたいかというと、歩夢の心を丁寧に紐解いていった先の結論はまだ分かりませんが、「今話で彼女の口から溢された願望と感情の全てが本心そのままであり、揺らぐことのない根源的な考えである」とは、個人的には捉えていない、ということです。


 じゃあどういうことなの? となると、彼女の想いが花開くとき分かってくるはずなので、座して待つ!! という結論になります。今までもこれからも色々書きますが結局のところ全部こう!!


ほか、ここすきポイントなど雑記


・璃奈ちゃんと焼き菓子同好会の友達

 呼ばれ方が「天王寺さん」から「璃奈ちゃん」になってる〜!!!!!

 友達との会話中、感情が昂ったのだろうタイミングで瞳がふるふると震えています。ボードなしでも見えてくる感情がどんどん分かりやすくなっているように思えました。

 けれど応援に対して決意表明をするところでは璃奈ちゃんボード「キリリ」を掲げていて、やっぱり確実に届けたい感情をしっかり表現するには、もう一人の自分であるところの璃奈ちゃんボードは必須なのでしょう。

 これはネガティブなものではありませんし、ここまで進展している関係の中だとむしろ(璃奈視点からしたら必要というのは前提として)ちょっとしたお茶目のようにも思えます。
 ボードを掲げた後にまた顔を覗かせ(可愛い)、それに微笑む友達の反応からも良好な距離感が伺えました。

 スクフェス開催についてみんなにも伝えて良いか、という友達に対して一度は「生徒会の申請が通っていないから」と止めるものの、それを撤回し、「絶対に開催できるように頑張るから」と伝える璃奈、その意思の強さも最高です。

 6話ではできないことをできることでカバーする、という方法で一歩進んだ彼女ですが、その心に持っている「できないからやらないは無し」と言える熱さは変わらずブレずにそこにあることを感じられました。

 友達が持ってきてくれたクッキーが璃奈・歩夢・愛という6話のAパートで出会っていた同好会のスクールアイドル達というのも細かくて良いです。
 それと、わざわざ部室まで来てくれた動機が(もちろん璃奈を応援するためという目的も多分にあるでしょうが)「あわよくば愛先輩に会いたい」というのもリアル。
 なんだかうさん臭い表現になってしまいますが、こういう細かい会話や描写の集まりによってとてつもなく実在性を感じます

 あと今更になりますが、焼き菓子同好会の技術力がとんでもなかったです。サラッと出ていた服飾同好会もそうですが。
 虹と雲のマークとかは分かりますが、人物のデフォルメのアイシングクッキーをああも綺麗に量産できるとは……。
 製菓に詳しくないのであまり深くは言えませんが、全国から才能が集まる学園というのは伊達ではなさそうです。

 ということは1話で鮮烈な印象を残していった流しそうめん同好会もすごくスポーティーで芸術的な流しそうめんをしていた可能性が……?


・生徒会の皆さん

 上でもちょっと触れたんですが副会長めっちゃ可愛かったです。双子の生徒会役員も微笑みがデフォルトの子と真顔の子で個性が出てて良い。

 アバンでは「スクールアイドルとはどういうものか」も知らなかった副会長が、調べる中で(それも「生徒会長を見習って自分も勉強しなくては」という動機なのも超可愛い)好きになり、自分もスクフェスへ参加してみたいとまで言うほどになった。

 それはスクールアイドルの魅力ももちろんありますし、素直に良いと思ったものを好きだと受け入れられる感受性の豊かさもあるのだと思います。
 侑に推しを聞かれて「優木せつ菜ちゃん」と答えた後、

「でも私、好きになったばかりで、好きというのもおこがましいというか……」

 と言っちゃうの、歴史の長いコンテンツに途中からハマった人が結構言いがちな言葉で微笑ましくなりました。


 そしてその「好き」をカラッと肯定する侑と、代弁という名の推し本人からの同意が温かいです。
 ときにコンテンツの歴史の長さは「大好き」を言いづらくする要因にもなり得ます。
 こうして始まったばかりの「大好き」を実感を伴って肯定してくれる人が近くにいる、という環境は、きっととても心強いものでしょう。


 ところで、アバンで至極まっとうな指摘をされまくりのガバガバ申請書について。

彼方「そっかぁ〜、せつ菜ちゃんがいるからすんなり通るかと思ったけど、そういう訳じゃないんだねぇ」

 てっきりせつ菜は立場上かかわると公平性を欠くのでノータッチ、侑を中心としたフワフワ語彙のときめきビジョンで突っ込んでいった結果なのかと思いましたが、特にそうではなかったようです。


せつ菜「すみません、私も気持ちがはやっていました……!

 なら仕方ありません。
 前話でスクフェスについて相当ワクワクしていましたし、生徒会長中川菜々もスクールアイドル優木せつ菜もひとりの人間で、高校生です。楽しみすぎて足元を見失うときもあります。

 むしろフワフワなビジョンででかいプロジェクトをやみくもに動かそうとしたら大抵ろくでもないことになるので、ここで冷静なストップがかかったのは──その後に大きく広がった展望を見ても──僥倖でした。
 ここで菜々が会長権限で強引に通したら急にどうしたのかレベルの乱心にしか映らないでしょう。権力が適切に制御されています


・中須かすみ

 今話同好会メンバー内での個人的最大癒し枠。前話ラストに続き心の安定剤でした。
 ちょっと手の込んでるくらいのダンボール工作品「かすみんBOX」が良い味出してました。
 目安箱としての機能なら可愛い顔部分だけでも成立しますが、どうやら横方向への可動式っぽい手足がついているところもキュートです。

 それに対して真っ先に「か、可愛いです……!」と手を伸ばすのが3話まで価値観がすれ違っていたせつ菜なのも良いし、歩夢が可愛さにノーリアクションでこれは何かと聞くのも平常運転だし、そのあと愛によって顔面に合理的かつ無慈悲に紙を貼られて再設置されるところまで、ほどよいコメディが効いてて良かったです。

 また、生徒会への申請の際に侑と一緒に来たということは、やはり書類上の部長はかすみなのでしょうか。
 名探偵果林さんが2話ラストでつまびらかにしたように「優木せつ菜」という名前の生徒はいないので、書類には名前が書けなかったのかもしれません。というか今更ですが、廃部前のときはせつ菜が部長らしかったもののどうやって申請を……?

 さておき、他にもコメディタッチな表情や小動物っぽいリアクションも相変わらず可愛く、癒しになってくれました。
 ですが同時に、真剣な意味合いでの彼女のあり方を再確認できる言葉もあります。

侑「メッセージを読んで、みんなで話し合いました。本当にスクールアイドル好きのみんなが楽しめるお祭りって、なんだろうって。それはきっと、ライブをするだけじゃないんだって気づいたんです
副会長「ライブをするだけじゃない……?」
侑「はい、そうです!」
かすみ「だってかすみん達の夢だけ叶えるより、応援してくれるみんなのやりたいことも叶った方が、絶対楽しいじゃないですかぁ!

 2話でスクールアイドルとして「可愛い」を表現していたときから、かすみの目線の先には常に「ファン」の存在がありました。

色んなかわいいもカッコいいも、一緒にいられる。そんな場所が本当に作れるなら」
そこは絶対、世界で1番のワンダーランドです!

 そして、それぞれ違う仲間同士が一緒にいられる場を「ワンダーランド」と称した彼女。
 今回のセリフで、それがより広範囲に拡張したように感じます。

 範囲は前話の侑の言葉と同様。
 ユニットやソロ、学校、スクールアイドルとファンという垣根すらも超えて一緒にいられる、やりたいことを叶える場所
 それはきっと今までかすみが世界一だと思っていたものよりもさらに素敵で楽しい、最高の「ワンダーランド」でもあるはずです。

 ※投稿前の確認中にサイト見て気づきましたが、購買部でかすみんBOXがぬいぐるみ化して販売されるのは面白すぎますね。トレンドに入ってたのは知っていましたがまさかそういうことだったとは……!
 しかもどうやらBOXとしての機能は無さそうなのも面白いです。



・綾小路姫乃さん

 かすみ、はんぺん、生徒会副会長に続く今話癒し枠その4。出演時間は決して長くありませんが、その短時間で爪痕と和みと癒しを残していきました。
 虹ヶ咲(彼方、せつ菜、侑、果林)、東雲(遥、クリスティーナ)、藤黄(美咲、姫乃)でのスクフェスへ向けた出演の打ち合わせの場面。

せつ菜「スクールアイドルフェスティバル、参加していただけませんか?」
遥「やってみたいです! お姉ちゃんから話を聞いて、ずっと楽しみで!」
姫乃「私も賛成です。とても面白そうですし……また果林さんと同じステージに立てるなんて……光栄ですっ
果林「え? ……こちらこそ、そんな風に評価してもらえるなんて、光栄だわ

 9話から相変わらずの言葉選びで安心しました。
 ただ手の動きがなんだかもにもにとしていて、色々感情が漏れてしまっているのがかわいい。果林さんにはバレていませんが。

 ほら〜〜〜光栄とかいう言い方するからまた試されてるとか実力というラベルのついた量りに乗せて「評価してる」って思われてる〜〜〜!! となってしまいました。

 ただこの後、同じく藤黄の紫藤美咲さん果林さんのファンだということがバラされます
 これが無かったら相変わらず姫乃ー果林間の謎の関係性のすれ違いが続いてしまった可能性があるので、たいへんファインプレーでした。


 その後の果林の対応はお昼の人前ですべきか危ういラインのセンシティブな雰囲気漂うものでしたが、彼女らしいですし、なにより姫乃が満足そうでなによりです。良かったね……!
 ふらつく姫乃を受け止めつつ、美咲がめちゃくちゃ冷静にスクフェスへ賛同しているのも温度差が面白くて良かった。本当に癒されました

 またこの話し合いの部分、せつ菜が会話を主導していて、もしかしたら7話の彼方のステージについてもこんな感じで彼女がメインで交渉したのかな、と思いました。
 あのときは侑とせつ菜のふたり行動でしたが、やはりスクールアイドルとして実績のある彼女がメインで話し、侑が補足やサポートに回る、という構成だとスムーズに話が進められそうな気がします。



・同好会メンバーと同好会の成長

 かすみと侑の申請リベンジにて、かすみんBOXに集まった生徒達からのメッセージが読み上げられました。

「彼方ちゃんの歌に、実はずっと励まされていて、インターハイに出ることができました。フェスが開催することになったら、なにかお手伝いしたいです!」

「エマさんのPVに毎日癒されています! たくさん着せたい衣装があるので、フェスが開催するの楽しみにしてます!」

「スクールアイドル同好会が大好きで、クッキーを作っちゃいました。フェスがあるなら、みんなにも食べてもらいたいな!」

 先ほど璃奈について重点的に書きましたが、同好会のメンバーの今までの積み重ねもきちんと結実し、大きく広くなりながら今話まで繋がってきています

 遥を支え、夢を共に見るために歌った彼方の歌は、バスケに打ち込む生徒の心も励まし──もちろん彼女自身の練習と努力が基礎にあるのは当然として──インターハイ出場へと繋がりました。

 果林の心を解かし、素直な気持ちを引き出したエマの歌は、服飾同好会の子の心を癒し、彼女に衣装を着てほしいという願いを持たせました

 クラスメイトと友達になりたいとライブをした璃奈は、その心を掴んで、同好会まるごと含んだファンにさせました

 きっとメッセージの読み上げがなかったメンバーについても、それぞれに物語の広がった先があるのだと思います。しずくや果林などは特に放送話が近かったこともあり、記憶に新しいです。

 また、これについては歩夢も同様。
 本当にファンがおらず侑だけなのだとしたら、アップロードされた自己紹介動画に「女 神 降 臨」なんてコメントはつかないでしょう。

 クラスメイトでも部室棟のヒーローでもない歩夢のアイシングクッキーを手間暇かけて作ってくれる後輩なんていないはずです(その後全員分作ってはいたものの、真っ先に持ってきた試作品らしきクッキーに入っていたことから優先して作られた可能性があります)。


 彼女自身も璃奈とともに焼き菓子同好会の活動場所へ出向き、嬉しそうにクッキーを見ていました(甘いものが好きというのもあるでしょうが、今までに見せてきた歩夢の感受性とリアクションの取り方からして、それだけではないと考えています)。
 歩夢自身がどんな感情を持っていたかにかかわらず、彼女の言葉だってときに同好会のみんなの心を支え、背を押し、気持ちを癒していたはずです。

 パッと浮かぶだけでも、かすみのぴょんハラスメントをうまく挨拶に取り入れたり、璃奈の良いところをすぐ言えたり、遥との関係に悩む彼方を励ましたり。

 侑との物語だけではなくて、同好会の物語の中にも、確かに上原歩夢は存在しています。繋がりも広がりも、彼女の今までと今とこれからに影響しています。

 その広がりを彼女はどう捉えているのか、どう考えていくのか。
 次話で花開く歩夢の未来に今までの積み重ねがどう関わっていくのかも興味深いです。


 あと、上述の「スクールアイドルとしての広がり」という点において、かすみはランニング中に手を振っていたくらいの描写にとどまっており、案外アニメ本編内では謎に包まれ気味

 ですが彼女は2話以降に見える通りスクールアイドルとしての信念を強固に持っていて、会場選びの際に「もっとファンと近い場所がいい」とはっきり意見を言えるくらいにライブのビジョンもはっきりしています。

 常に「ファン」の存在を認識している「生き様」の人なので(だからこそ個人としての意見をぶつけた8話が映える訳で)、本編内での明示が少なくても割と安心していられます。
 このアニメは良い意味でなにしてくるか分からないので全ての事象において断言できることなどなにもありませんが、とりあえず今はそうです。

(あとアニメ本編外のことはなるべく触れないようにしていますが、他のとあるものの存在というか文章を理由として、大丈夫だろうという確信があります)


 以上、11話を見た直後のオタクの感想です。
 先週、今話で歩夢の問題は解決して12−13話ではマクロの話をしていくと思っていたのですがそんなことはなく、次話に持ち越しとなりました。

 ずっと前の段階から小出しにされてきた描写の結晶みたいなところがあるので、今話で歩夢の今まで押さえ込んでいた願望、祈り、縋りつきたくなるほどの苦しみを丁寧に描き、次話まで繋げるというのはたいへん良いと思います。

 ただでさえ恐ろしい情報量を丁寧にさばき体感5分の爆速で進んでいくアニメなので、きっとこの1話で終わらせるには足りなかったでしょう。
 なので、重ねてになりますが次まで持ち越しでよかった。1週間待つ身としては「嘘でしょ……」となるほど心がメチャクチャで超絶しんどいのは別の話ですが。

 次回は「花ひらく想い」。タイトルはライトピンク、歩夢の色です。
 予告のカットではせつ菜と歩夢が隣り合って歩き、歩夢が何かに気付くような、目の前が開けたような表情をするカットがありました。

 このアニメの積み重ねを信用し信頼しているので、彼女の出すものがどんな結論でも帰着でもきっと納得がいくのだろうと思っています。
 どんな未来が待っているのか。怖くもありながら、心の底から楽しみでいます。歩夢……幸せでいてくれ……


 前話の感想の終盤、「虹ヶ咲アニメを信用しているので展開は怖いものの絶対大丈夫という安心感がある」という心境を「人気遊園地のジェットコースターに乗る前」と称しました。
 今話においては、乗ったジェットコースターが動き出した感じです。
 遠心力で内臓は浮いたり押さえられたりするし、速度や高さが出て怖いけど、ほぼ絶対に大丈夫だろうしこの先も楽しみ、といったような。

 ただ、それはそれとして今後一週間とうてい平常とは言えない精神状態で過ごすとは思うので、この感情のかき乱され方も楽しみつつ座して待とうと思います。


 いやーーーーさっきもちょっと言いましたが、こんなにどんな感情で聴いていいか分からず半ば放心状態で聴いていた「NEO SKY, NEO MAP!」は初めてです。前話ですらこんな感情にはならなかった……。


 最高イントロが流れたときこのアニメを見始めて初めて「今ぁ!?!?」となってしまいました。
 いつもは満足感と「終わってしまった……」という一抹の寂しさとともに聴いていまいしたが、こんな動揺しきりで見ることになるとは
 NEOはNEOでも文脈がオリオン座の方に近くなっちゃってる……。

 あと地味にせつ菜の身バレフラグも立ってるようで怖いのですが、残り2話でうち次話は歩夢のメイン回。ど、どうなるんだ……!?


 この放送3日後(12月15日・火曜日)にLoveLive Daysが発刊されるの素直にありがたいです。
 信頼と安心感があるとはいえ、ハチャメチャになった心にはカンフル剤が必要なので……。

 いやすごかった。決めたと思った覚悟の上をいともたやすく超えていかれました。感情が24分のアニメでここまでシェイクされまくるとは……。


 あと最後に本編に関係のないしょうもない悪あがきを申しますと、事前振り返り生放送、ゲストが3人だとしたら放送時間も3倍の120分になっていなければおかしいのでは?
 最高なことにTOKYO MXでは1月2日から、BS11では1月3日から再放送が始まるので、それに合わせて事前振り返り生を改めてもう一周……いや厳しいか……そりゃそう……でも見たいですね……。

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