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【ネタバレ有】アニメ・虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会第9話「仲間でライバル」感想


今(1−8話)までの感想はこちらから


 2020年11月28日、22時30分。ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のアニメ第9話が放送されました。

 当初から掲げられていた「仲間で、ライバル!?」の「ライバル」について、その内実が丁寧に説明された回だと感じました。
 ライブシーンの直前、果林のモノローグ、

「仲間だけど、ライバル」
ライバルだけど──仲間!

 に、この回や、ひいてはこのアニメのテーマのひとつが表れていると思います。

 詳しくは下で触れますが、「ライバルと競うこと」はただ他者を押し除けるということではないし(それはもはや「敵の排除」)、相手を単に傷つけることでもありません。
 「ぶつかり合い」という性質ももちろん持つでしょう。敗者と勝者が生まれ、その片方や双方が傷つくこともあります。

 けれどこのアニメにおいては、競う中にある支え合いと、その先のそれぞれの成長に大きく比重を置いているように思えます。

 なので、戦いというよりも成長譚、青春譚の色が綺麗に出ているような。
 見ていてスーッと爽やかな気持ちになれる理由の一端が分かったような気がします。


 この記事はアニメ感想ですが、若干スクスタの各種エピソードのネタバレ(中核とかではない部分)を含む可能性があります。
 アニメの内容についてはネタバレし散らかすのでご注意ください。


 果林の1st〜3rdの持ち歌はそれぞれに色合いがガラリと異なっている曲で、アニメでどんな曲が来るかは正直まったくの未知数でした。
 強いて言うなら「1stの別側面のようなイメージの子が多いので、セクシーなEDM系のダンスミュージックかな〜」程度の予想。

 ただこれもどちらかといえば3rdの延長に近い前話のしずくや、完全なる予想外でぶん殴ってきた彼方もいるのであてになりません。

 結論としては、EDM系のダンスナンバーという部分のみは合っていました。
 ただ歌詞や曲調はセクシーというより「爽やか系クール」といった雰囲気で、(アニメ尺の範囲では)2ndほど内面に踏み込んではおらず、けれどとても等身大

 予想外だけれど彼女らしい曲で、いい意味で予想を裏切られました。
 振り付けにあるモデルウォーク、1stの「Starlight」を彷彿とさせてそこもすき。

 では以下より、限界乱文をしたためます。
 なおこれは感想であって、考察や解説とは全く異なります


ライバル、仲間、衝突、切磋琢磨

果林「衝突を怖がるのは分かるけど、それが足かせになるんじゃ意味ないわ

 Aパート中盤、1曲分という短い枠の中で同好会の誰が出演するのか決められず、膠着状態になった際に果林が口にした言葉。
 「怖がるのは分かる」というところからして、果林もただ考えなしに発しているわけではありません。
 事情や心境は察しているけれど、それでも決めなければいけない、向き合わなければいけないと言葉を繰ります。

 同好会は一度、衝突をきっかけに廃部になっています。
 だからこそそれを体験し、あるいは事情を知っているメンバーはそれを避けようと主張をしきれず、愛は視野が広いためひとりで突出した行動をするタイプではなく、璃奈も好き好んで誰かと競おうとするタイプではない。
 大舞台のチャンスに誰も手を上げきれない状況は、確かに足かせをつけられているようにも映るでしょう。


 翌日、果林の発言に対して、歩夢やせつ菜たちが答えを出します。

歩夢 「私たちはソロアイドルだもんね」
せつ菜「ええ! お互い切磋琢磨していかなくては、成長できません!」
   「それなのに私は、またみなさんに迷惑かけたくなくて、遠慮していました」

 せつ菜の言葉が「ライバル」の性質を表していました。
 「切磋琢磨」。意味合いは有名ですがもう少しだけ細かく見てみます。

学問や人徳をよりいっそう磨き上げること。また、友人同士が互いに励まし合い競争し合って共に向上すること。

▽「切」は獣の骨や角などを切り刻むこと。「磋」は玉や角を磨く、「琢」は玉や石をのみで削って形を整える、「磨」は石をすり磨く意。「磋」は「瑳」とも書く。

───「三省堂 新明解四字熟語辞典」より


 ぶつかることで共に輝いていく「ライバル」の形。
 切り刻むことも、物をやすりや紙で磨くことも、のみで削ることも、上手くいけばそれらの対象物をより美しくすることができますが、方法や加減を誤れば傷つけ、壊してしまいます。

 しかしそれを恐れるあまりろくに刻まず力を入れず削りもせずであれば、対象物はそれ以上傷つくことはないにせよ、それ以上に美しくなることもありません
 ぶつかり合いをただの衝突で終わらせず、切磋琢磨まで昇華すること。
 対立の先に互いの成長があることが、「ライバル」という関係の条件なのではないかと感じました。

 ただ今話で触れられた関係性はそれだけではありません。
 「仲間」の側面は、「ソロアイドルはステージで独りなのか」という点から見えてきます。


 「ステージに立つのは一人だけど、独りじゃない」という結論に到達していたメンバーはすでに存在していました。
 それは4話の愛で、彼女は「ステージを見て一緒に楽しんでくれるみんな」がいるから、ソロでも独りではないと結論づけます。

 今回はそれとはまた別の観点から、果林は一人で舞台に立つその背を支える存在に気がつきました。

 誰もが立候補し出たいと願ったステージへの参加権を手に入れ──いわば「ライバル」たちとの「争い」に勝ったとも言える──にも関わらず怖気付いてしまっている自分に対して、大丈夫だと手を握り、私たちがいると声をかけ、ソロでも独りじゃないと伝えてくれる同好会のメンバーたち。

 限られた枠を(当事者内による他薦の集計という比較的平和な手段ではあるものの)争った「ライバル」ではありますが、ひとたび誰かが舞台に立てば、その成功を心から願う「仲間」
 だからこそ出番前に姿が見えなければ走り回って探すし、落ち込んでいれば励まして背中を押す。
 ハイタッチでパワーを貰い、その力と共に舞台へ立つ。
 それが仲間でありライバル、ライバルであり仲間という、虹ヶ咲のソロアイドルたちの在り方です。

 今話に至るまで丁寧に「仲間」としての同好会を描いてきたからこそ。
 「ライバル」としての側面が出てきたとしても、その中にある仲間としての支え合いや、相手の長所を認め合った上での競争と成長に強い説得力を持たせられていると感じました。


朝香果林の強さと弱さ

 1話からうっすら強キャラ感を出し、2話のCパートで衝撃を生み、3話で風格を見せつけ、4話でツンデレ風味を匂わせ、5話で頑なさを融かし、6話で少し子供っぽい部分を垣間見せ、7、8話では頑張る仲間たちの物語の傍らで、時にさりげなく寄り添い、時に見守っていた果林。

 ところどころボロというか抜けている面も出てはいます。
 が、基本的には3年生という立場と、読者モデルという激しい競争の中にいる人間としての経験から、言うべきことを言うべきタイミングで発してくれる人です。
 状況を進めるために厳しい言葉を言える人。あるいはシビアな視点を持って、それを活かせる人といっても良いでしょうか。

 そしてもうひとつ。ストイックで地道な努力家というところも、彼女の長所であり強さです。

果林「……努力しなきゃ、ライバルに追いつけないからね」
  「あなたたちのことよ」
歩夢・せつ菜「!」
果林「なんていうか、手を抜けないのよ。せっかく部活に入ったんだから、楽しみたいって気持ちもあるんだけど……」

 エンジョイ勢になれずガチ勢になってしまうというのは、その空気に乗り切れない集団の中だと短所になり得ます。
 ただそうでないのなら、彼女の姿勢は周囲へ刺激を与える好例です。

 そして、これはアプリ版の性格からの類推になりますが、彼女は(今まで武器にしてきたプロポーション以外の)自身のポテンシャルや努力に対しての自己評価が低く、それがストイックさに拍車をかけています。

 その上に目指す場所は「スクールアイドルとしてもモデルとしてもトップになる」というバリ高目標なので、これはもう大変。
 まだ足りない、もっと上へ。その一心で努力と練習を積み上げます。
 弱さを受け止めてくれる居場所でもなお上を目指し続ける。冒頭モノローグには果林の向上心に満ちた性格が詰まっているように感じました。


 具体的な行動として、部活動でダンスをしているところに追加でダンス教室のレッスンを入れるというところからも、その本気さが伺えると思います。
 ただそのことについて

果林「たまたま仕事でここの先生に会ってね

 とか言ってしまうところは素直じゃないというか、それが自主的に習い始めたのではなく偶然のきっかけだとしても通うことを選んだのは果林自身の判断だとか、こういうところは弱みや強みというよりも可愛いポイントといったところです。
 いわゆる「そういうとこやぞ」というやつです。

 ところで余談ですが、読者モデルの人も仕事に必要だとダンスを習うことは割とあるそうなので、その点だと果林さんは両どりでお得な習い事をしているのかもしれませんね。


 他方、彼女の弱みはなにか。

 今まで描かれてきた分かりやすい弱みといえば、ちょっと漢字が怪しそうなところや、方向音痴なところ。それら弱みを意図的な「隙」として使わないピュアさ
 そして今話で描かれた、ごく普通の、巨大なプレッシャーに対する恐れの感情。


 とはいえ、あの鬼みたいなセトリなら大抵の人はビビるのではないでしょうか。

 自身は人前でライブをするのは初めて
 会場の観客は基本的にスクールアイドル以外のジャンルを見にきていて、それでも自分の前にはその観客たちにも訴求力があると運営に判断されてオファーを受けた知名度のある学校が2校、グループパフォーマンスを行う。

 そして最後、スクールアイドル枠のトリとして、3000人の観衆の前でたったひとりでライブをする。

 改めて考えても怖すぎる状況です。
 しかも彼女は新設同好会の一番後に入部したメンバー。
 1年単位で考えれば誤差かもしれませんが、スクールアイドルとしては最も経歴の浅い人がこの状況下に立たされています。これは鬼。


璃奈「……具合悪いの?」
果林「……ビビってるだけよ
果林「我ながら、情けないったらないわね。こんな土壇場で、プレッシャー感じちゃうなんて」

 Bパート中盤。プレッシャーを感じ、楽屋テントや舞台袖へ向かうことができなくなってしまっていた果林は、そうして自分の弱さを口にします。
 5話でのいじっぱり具合からしたらこの素直さは相当に意外なもので、そうしてしまうほどに彼女は弱っていたのでしょう。

 そしてそれが、自分が「手を抜けない」と思うほどに認めているライバルたちからの他薦で手に入れた機会なのだから、なおさら自身に覚える情けなさは強かったのではないでしょうか。

 余裕そうに振る舞ってはいるけれど、彼女の持つ弱さはごく普通に等身大のもの
 その「普通」をエマだけでなく同好会メンバーの前でも吐露できたのは、彼女にとって大きな変化。
 それだけ弱っていたというのをさておいても、同好会が彼女にとって大切な場所であることの証左でもあると感じます。


 なお個人的には土壇場でビビってしまった原因の半分くらいは、舞台裏にいる果林に

「この会場にいる人みんながスクールアイドルに興味があるわけではなく、いわばアウェイ
「そこに一人で立ち向かうあなたを尊敬している」

 と全力で空回ったワードチョイス本心からのリスペクトを伝えた綾小路さんにあると思います。


 ともあれ。
 仲間/ライバルたちに励まされ、舞台袖へ現れたときの果林は、挑戦的な表情とはうって変わった穏やかな笑顔を浮かべていました。

 肩肘を張りすぎていないリラックスした表情は、「一人で立ち向かう」のではなく「舞台上には一人でも、自分には仲間がいる」と感じているからこそのものだと感じました。

 綾小路さんと言葉は交わさずただ笑顔ですれ違っていくの、少年漫画とかの文脈じゃん……となります。熱かった。


 果林さんはクールなようで大分ホット。ぱっと見冷静な雰囲気な割に相当な負けず嫌い。
 といった闘争心に満ちた感じの人で、そういう強くあろうとする人間を見るのが大好きな筆者のようなオタクに大変刺さります。


 あと書くべき場所が定まらないのでここに書くのですが、5話(エマさん回)のアバンでは下級生から「モデル朝香果林」のサインを求められていたのに対し、今回はスクールアイドルとしてサインを求められるという描写。
 同好会の人気もそうですし、学園における彼女への視線の変化みたいなものが分かって良いシーンだと思いました。


 ところでモデルとしてのサインはどんな感じなんでしょう。英字とかでおシャレなやつとかでしょうか。いつか見てみたいです。


綾小路姫乃さん

 藤黄学園所属、スクフェス転入生組。落ち着いた物腰と丁寧な言葉遣いが印象的です。

 意味深なこと言いまくってくるライバル枠だと思ったら果林さんの大ファンだったんかい!!!

 このアニメは周回するたび新しい発見や発想、考え方が出てくる作品だと捉えているのですが、ここまで初見と2周目以降で印象が変わった人は初めてでした。
 特にライブの話を持ちかけてきたときのセリフ、2周目からやたら面白く感じてしまいます。

姫乃「特に、朝香果林さんは雑誌でよく拝見していましたし!」
  「人気の読者モデルがスクールアイドルもするなんて、すっごく魅力的じゃないですか!」

 まるでスクールアイドルとしての魅力は読者モデルとしてのネームバリューありきというか、その肩書が魅力の根拠だとか、モデルが片手間にアイドルをしてるなどと受け取られかねない言い方です。

 実際、自分のファンに対しては一貫して大人な対応を取り続けていた果林さんも、この言葉に対しては少し表情を変えただけで無言
 言い方さえ違えば笑顔で「あら、そうかしら? ありがとう」とか返してくれそうなのにこの反応、完全に喧嘩売られたか試されてるかといった感じのやつでした。

 「私にとっては」って言わないから……! 「ファン」じゃなくて「拝見していた」ってちょっと遠回しに言うから……!
 「モデルのときから大ファンだった人がスクールアイドルにもなるなんてファンの私にとってめっちゃ最高! ライブ見たい!!」って言わないから……!! 一人称省いて主語デカくして遠回しに喧嘩売ったみたいになってる……!!


 もちろん、ソロという同好会の性質ゆえに舞台に立つのが1人に絞られる可能性が高い以上、外部の人間がその判断に介入しうる発言をするのは慎むべきだと思います。
 なのでここでファンだと明かさないという判断自体は正しい。のですが、言い方!! 
 わざと焚き付けている可能性もありますが、だとしてもやり過ぎです。


 また、枠が狭いのに9人ソロの同好会を誘うべきか迷った、という遥の文末にかぶせるようにして発した言葉。

姫乃「でも、できたばかりの同好会にとっては、悪い話ではないですよね?」

 完全に強者からのお言葉になっています。
 実際知名度からしてそうなのでしょうが(果林が7話で「虹ヶ咲とは知名度が天と地ほどの差」と言っていた東雲学院と近いくらいでしょうか)。

 8話Cパートの意味深なポスター内の果林さんのズームカットも、もしかすると綾小路さん視点でめっちゃファンだからガン見してたとか……いやでもこれは流石に綾小路さんをなんだと思っているんだという話になってしまいますね。


 舞台裏で声をかけたときのやりとりも面白かったです。

姫乃「朝香さんが出られるんですね」
果林「ええ。虹ヶ咲学園の代表として、恥ずかしくないパフォーマンスをしてみせるわ」
  「モデルではなく、スクールアイドルの、朝香果林としてね

 ほらもうあんな意味深な言い方するから試されてるって思われて根に持たれてるじゃん〜〜〜「スクールアイドル」をめっちゃ強調されてる〜〜〜!!! となってしまいました。この言葉を受け止めたときの綾小路さんの表情、感情が分からなすぎる。
 目元を隠して斜め構図で上下に黒いもやを携えて登場なんてするから……!!

 この会話、姫乃視点だと

ずーっと大ファンの読者モデルさんがスクールアイドルになっていて、所属している同好会にイベントの話を持っていった結果、彼女が出てくれることになった
 アウェーな場でソロのパフォーマンスをするなんて凄い! お互い頑張ろうって伝えよう!」

 みたいな状況なのになぜこんなバトルじみた会話になってしまうんだ……。

 あと筆者はあまり声優さんに詳しくはないのですが、声質と口調も秀逸です。こんなの絶対腹に一物あるじゃん……と聞く人に思わせるような喋りでした。

 と、ここまで面白いと連呼してはいますが、果林さんのファンという部分をさておいたとして。
 スクールアイドルとしては自身より新人の相手に対しても真っ直ぐ敬意を言葉にしているところ、そもそも(私欲の疑惑があるとはいえ)大きな舞台の話を遥とともに新設の同好会に持ってきてくれるところなど、聡明な人ではあるのだと思います。

 あと果林のライブ後に見惚れている顔やからかわれてるときの反応はめっちゃくちゃ可愛かったです。
 彼女が面白い感じになった原因はすなわち、登場から延々その言動の全てがむやみやたらに意味深すぎただけ……!

 その意味深さも過度ではなく「もし相手が腹に一物持ってるのだとしたら丁度良いくらいの描写」の加減だったので余計にでした。

 ナチュラルな人間を丁寧に描くアニメだとこんな独自性のある個性を持ったキャラも生まれるのですね……自分はこのアニメ綾小路さんが一発で大好きになりました。


ほか、ここすきポイントなど雑記


・遥ちゃん!!!

 音楽フェスのオファーも来る人気急上昇中の東雲学院のセンター(立ち位置を見るに7話に出ていた支倉かさねちゃんとのダブルセンターでしょうか)を見事に務めていました。
 姉のいる同好会にイベントの参加権を持ってくるなど、お互いにスクールアイドルとして頑張ろうとしている意思も伝わってきます。

 綾小路さん曰く「アウェー」であるフェスの場でトップバッターとして立ち、

遥「ここからはスクールアイドルの時間ですよ!

 と宣言するところ、可愛くもかっこよくて最高です。
 礼儀正しく実力も確かで宣言もかっこいいときたら、やっぱりこれは7話の侑曰くの「天使っ!」に同意です。

 同好会メンバーだけに限らず、他校のメンバーの成長も地に足を着いている描写で描かれてるの、めちゃめちゃ好き。

 あと時系列的に休日の昼間から2段ベッドの下でのんびりしながら彼方とスマホ覗いてるの、姉妹の何気ないゆっくりした時間が取れていると分かって素晴らしかったです。近江姉妹に無限の幸あれ



・よりハッキリと自我が出てきた桜坂しずく

 まだまだ自分の独自の意見をガンガン主張する、とまではいきませんが、他の人への意見に同意するときの力強さが増しているように思えました。
 例えばCパートの

果林「次があるでしょ。私たちのライブよ」
エマ「そうだねっ」
しずく「やりましょう!

 というハッキリとした力強い同意
 この口調だけでも確かな変化だと感じました。逆にいえばこの言い切りの同意すらもほぼしていなかった8話以前……。

 いきなり全てが変わり出したらキャラ変が速すぎてヤバく、下手したら「また演じてるのでは疑惑」すら出てきてしまいそうなので、まずはこうした小さな変化からでちょうど良いと思います。

 最後のところで触れますが、次回は色々自我を出せそうな感じの回なので、そこでの彼女がどんな風に過ごしていくのかも楽しみです(次回予告のしずくかわいかった)。


・中須かすみ

 アバンで見せてきたピンクのパンダに囲まれたルームウェアかすみん、5000兆点なので無限にお裾分けして欲しい。果林さんの返しに対するリアクションも含めて最高。

 相変わらずコロコロ表情の変わる賑やかで楽しい振る舞いをしていましたが、一貫した舞台への意思の強さも最高でした。
 ずっと「やっぱりかすみんも出たかったですぅ!!(迫真)」と言っていて、本当に心の底からそうなんだろうなと伝わってきます。

 ではそれだけ渇望していたかすみが、どうして最初に自分が出る! と言いきれなかったのか。
 恐らく、2話と3話での気づきと成長を受けたからこそ、ここで手を上げ切ることができなかったのではないかと感じました。
 視野が広がり、他者が見えたことで、他のメンバーと同じようにためらいが生まれたのだと思います。

 ただそれだけ自分が歌いたかった彼女でも、しっかりと仲間として果林のことを支えていました。
 果林が決意を固めた後、少し膠着した空気を振り払うように。

かすみ「ほら、タッチですよ! かすみんのエネルギー、分けてあげますっ!

 やっぱり出たかった! と言っていたかすみが真っ先に手を上げます。
 そこから全員とのハイタッチになり、パワーをもらった果林は文字通り舞台袖へ向かって駆け出していきました。

 きっとこれがなくても、果林はステージへ歩いてはいけたのだと思います。
 ただ、仲間の力と気持ちとを携えて駆けていけたのは、ハイタッチで勢いづけてもらえたから。そうであったら良いなと思っています。

 でもその後、Cパートでも「やっぱり出たかったです〜!!」と言い続けているところもかすみらしさ。
 確かに、3000人の観客の前でライブとなったらそりゃあ度胸さえあれば挑戦してみたいと思っても不思議ではありません。

 名を売るにはうってつけですし、そもそもかすみはスクールアイドルとしての公式というか、非身内のライブは未経験
 果たしてアニメでそういったライブを経験する姿は描かれるのか。ここも今後の楽しみポイントです。


・高咲侑は応援の先に何を見るのか

 果林がステージに向かい始めると同時にひとり違う方向へ走り出した侑。歩夢に「どこに行くの?」と問われた彼女は、迷いなく答えました。

侑「ちゃんと果林さんを応援したいんだ!

 そして向かったのは、袖で彼女を見守る同好会メンバーとはひとり離れた客席舞台を見上げる位置です。

 スクールアイドルとして同じ位置にいるメンバーは舞台袖、ファンとして、マネージャーとして彼女たちを支える侑は客席へ。
 これが侑の考える「ちゃんとした応援」の立ち位置ということなのでしょう。

 今話Bパートは、観客たちの背中とその先に見える大きなステージを見つめ、その横顔の瞳がきらめくところで終わり、EDに入りました。
 このアニメのBパートのラストは大抵担当回のメンバーか、それに準ずるキーパーソン(5話の果林)のカットやセリフで締められます。
 それが今回は果林ではなく侑だった。

 確かに果林がやるとひとりだけ2回目になってしまいますし、まだ当該カットになっていないエマが出るには今話のキーパーソン感は足りていませんが、それにしても。

 つまるところ、(一人当たりの回数というメタはさておいて)それだけ大きな発見や、応援の先の「何か」を見出すか、その切れ端を掴むことが出来たのかもしれません。
 次回予告になにやら侑がなにかを宣言していそうなカットがあったので、来週なにか彼女について動きが出るのかも、と楽しみにしています。


・この先の話数でのせつ菜が不安

 アバン冒頭から眼鏡をかけた状態で果林さんの元へ走ってくるというガバガバ変装で現れたせつ菜。

 こんなことを言うと各方面から怒られそうですが、賛否両論とはいえ「眼鏡が本体」などという言葉もあるほどで、眼鏡キャラの眼鏡はもう名刺のようなものです。
 つまり練習着+眼鏡優木せつ菜が中川菜々の名札をぶら下げているような状態だった可能性があります。

 ……とまでは流石に乱暴としても、眼鏡なしでせつ菜=菜々を見破った愛という実例があるので、眼鏡を掛けた状態だといくら遠くから見られていてもバレるリスクは割とあるのでは……という気がしてしまいます。

 そこからなんだかんだ親バレしそうで怖いですね……! 中川家の教育方針と内緒のスクールアイドル活動が相反しているという点は3話で示唆されつつも一切の解決も(今のところは悪化も)していないので……!



・この先の話数での歩夢も不安

 カケラのように記憶の端に引っかかる不穏な描写をこぼしていく彼女。杞憂かもしれませんが、今回も少し気になる部分がありました。

 果林のライブ前に侑がほぼフェイントじみた勢いで走っていったとき以外は、大抵侑と一緒に行動しています。

 衣装を着て彼女たちがカーテンを開いたときにも、ひとり他のメンバーたちとは少しだけ独立した位置で侑の真正面の延長戦に立っていました。
 空白の場所をいい感じに減らすにしても、とちょっとだけ思います。でも流石にこれは思い込みかもしれない。

 なんと言えばいいか悩ましいですが。
 1話で自分の意思で大きな一歩を踏み出し、2話で更にスクールアイドルとしての視点を手に入れた歩夢ですが、その先で彼女の世界は広がっているのでしょうか
 担当回(?)がひとまず現段階では1話で済んでいるせいか、彼女の変化だとか、視野の広がりだとか、そういうものの実感があまり伝わってきていない気がします。
 人間そうそう変わるものではありませんが、それにしても。

 ただ7話のアレが露骨すぎてこっちが勝手に色々想像してしまうだけ可能性は割とあります。そういう感じです。でもやっぱなんだか怖いなあ!


 ちなみに今話、OPのせつ菜と侑が買い物をしているカットに酷似した状況が歩夢を追加した形で描かれていましたが、彼女たちが歩いてきた方向とOPでふたりがやってきた方向は正反対。なので、これは私服のローテーション被りを利用したトリックである可能性がありますね。何の?


 以上、9話を見た直後のオタクの感想です。

 アニメの果林さんの強さと弱さを見ながら、ソロであるが故にいつかはぶつかるだろう「身内での競争」という出来事に、その落としどころの作り方のひとつ。そしてこのアニメにおける「ライバルという言葉の意味を教えてもらえたような回でした。

 彼女にとって読者モデルのお仕事ってどんなものなんだろう? とか、そもそもどうしてスクールアイドルに興味を持ったんだろう(「親友のエマが楽しそうにしている」以外にも、彼女自身どこかしらに動機や憧れの理由があるのでは)? とか、彼女を知るたびにもっと知りたいことが増えていきます。


 次回は「夏、はじまる」。10話にして同好会メンバー大集合の合宿回です。やったー!!!!!
 現実時間だと冬に突入する時期に夏がはじまっちゃうの、ロックンロールですね。

 今までは個人にフォーカスし、縦方向への掘り下げを丁寧に行ってきた虹ヶ咲アニメ(その中で担当回以外の子たちの成長や繋がりも描かれているのも素敵)ですが、次回はいわば全員が主役、という感じになるのでしょうか。

 個性派集団の個性が発揮されまくりだったら嬉しいなと思いつつ、逆に内容の予想が全然つかないのでただただ楽しみにしています。
 タイトル文字が侑のカラー(黒)なのも気になりポイントです(唯一モノローグが来ていないのは歩夢ですが)。

 あの短い予告で手羽先とチーズたっぷりピザという飯テロ予告がなされたので、視聴後における夜間のカロリー摂取と、合宿に出かけることでせつ菜のスクドル親バレフラグが立たないかという2点が結構心配です。
 外泊の理由をどうやってごまかしたんだろう……。


 今週も面白かった〜!! という充実感と、9話が終わって次は10話という時の流れの速さと、このアニメが1クールで全13話構成という事実に心が震えています。
 あと3分の1もない……? 年内に最終話が来る……? ちょっと冗談キツいですね……。

 正直に言うと今からロスに震えていますが、逆にあと1ヶ月楽しめる! 楽しんだらときめきらんらんるんるんGO! があるしそれを過ぎたら数日で年明け! また1年生き延びたぞ! というポジティブシンキングで頑張っていこうと思います。

 大抵の人は時間足りないって言ってるし、担当話振り返り生放送をアニメ最終回後にもう1、2周ずつやるとか……ないでしょうか……最後まで見た後に見返す担当回はまた違ったものを見出せるのではないかと思うのですが……。


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