1日後の報酬を受け取るために

「マシュマロテスト」は
1960年代にアメリカで行われた実験だ。
就学前の子ども達の「意志力」をテストするもので
その結果によりその子の将来を大方予想できると報告された。
けれど追跡調査の結果が予想と外れた子どももいた。
つまり4〜5歳時の「意志力」は大人になるにつれて
変化もするということがわかった。
どうすればどのように変化するのかについては
「習慣」の獲得によってコントロールできるのではないか。
佐々木典士氏が著書「ぼくたちは習慣で、できている。
にまとめている。

我々人間が「目先の利益」に走りやすいのは
狩猟採集時代の遺伝子のままで現代に生きているからだ。
特に食欲の抑制が難しいのは
食べることが生き残ることに直結していたから。
先進国の大多数の人は
「目の前のものを食べなくては
明日の命がわからない人」ではなくなった。
マシュマロテストでは
「大好物からの誘惑をいかに避けるか」が鍵だということもわかった。
子ども自身の発想や大人からの助言で
「待てる時間の延長」が認められた。

「待つといいことがある」を習慣として身につけると
人生で得られるものが豊かになる。
目の前の簡単に手に入る報酬
(そのときは良くても後で後悔するような)ではなく
その向こうにある報酬
(自分の未来にとって望ましいこと)を得るのが
難しくなくなる。
「安かろう悪かろう」と
全てのものに対して言えるかはわからないが
大抵のことには当てはまるのではないだろうか。

私も目先のすぐ手に届く報酬を選ぶときもある。
けれど「待ってから得る報酬」もしみじみと嬉しいものだ。
「高加水生地製法」をご存知だろうか。
いわゆる「こねないパン」生地である。
クランペットやチャバタ、ホットクが好きなので
ときどき作る。
こねるパンのレシピでは粉200gに対し
イースト3gと案内されることが多い。
私が気に入っている高加水生地は粉300gに対し
イースト1gで作ることができる。
ここに粉の80%の水(240ml)を加えるので
なかなかのボリュームになる。
そしてそれを仕込んでから焼くまでに
24時間前後の「待つ時間」がある。
「待つ」からイーストが3分の1で済む。

「待てない」「待ちたくない」ときは
水とイーストを合わせてから電子レンジにかけるやり方がある。
これは昔1度やったことがある。
出来上がるのはもちろんパンだ。
けれど私はこれをしない。
「待ってこそ得るもの」に喜びを感じるから。
パンに限らず、「待つ時間」のいる料理が昔から好きだ。

50g入りのイーストを毎回3gずつ使っていたら
17回しかパンを焼けない。
1gずつしか使わなければ50回焼ける。
1日待つことによって
高加水でないと作れない独特のパンを食べ
買い物にも頻繁に行かなくていい状況を得る。
「こねなくていい」は、単純に楽でもある。

頭では分かっていても
行動が追いつかない時がある。
それはそれとしてきちんと受け止め、
次によりよい選択ができるよう作戦を立てる。
そうして自分を「運営」していく。
運営には目標、計画、試行、分析、改善と
いろいろな観点で明確にしていくべきものがある。
人間は忘れる生き物なので
考えを文字で残す必要もある。
言語化できないものは認識もできず、
運営を助ける材料になり得ない。
「習慣を見直す」「望ましい習慣を身につける」
習慣にまつわることは自分の頭で考え、
自分の言葉で記していかなくては我が事として
脳が認識しないのだろう。
言語をうまく操ると行動が変わってくる。
戦略的に自分を運営し、
望ましい未来へ繋がる「報酬」を選択できるようになりたい。



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