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「多重構造」是正の動き 改正運送法成立

 参議院は4月26日の本会議で「貨物自動車運送事業法(運送法)」を与党などの賛成多数で可決し、法案は成立した。運送法の改正により、運送の元請けには、実運送業者名を記載した取引管理簿(「実運送体制管理簿」)の作成が義務付けられる。多層下請構造についての規制的措置である。


 取引管理簿には荷物、実運送業者名、請負階層(取引が何次下請けになるのか)が明記され、契約外の作業が発生する場合は、それに掛かる料金を記載した契約書面も作成しなければならない。
 昨年、国土交通省・経済産業省・農林水産省が運送会社4401社を対象に行った「トラック輸送における多重下請構造についての実態把握調査」によると、運送会社の7割以上が「下請け運送会社を利用している」と回答している。
 仕事を委託する金額は「受託額の9掛け(1割引き)」が7割、「8掛け」は2割、「それ以下」が1割だった。
 逆に、「下請けの仕事を受けたことがあるか」という問いには、8割の運送会社が「ある」と回答。また、こうした下請け運送会社の半数(49%)が、さらに他の運送会社(孫請け)へ仕事を委託していた。
 仕事の請負階層についての質問では、資本金1000万円以下の中小運送会社の33%が「2次請け(下請け)」として、15%が「3次請け(孫請け)」として仕事を受けていると回答している。会社単位ではなく事業所・営業所単位で計算し直すと下請け・孫請けの割合はさらに増えるという。
 こうした運送の多重構造の是正を図るため、実運送を行っていない利用運送事業者の存在意義を問い直す動きが表面化してきている。


 全日本トラック協会は3月22日、多重下請構造のあり方に関する提言を公表した。
全ト協は、実運送事業者における適正な運賃の確保によるドライバーの賃金水準向上の実現に向け、多重下請構造の是正に向けた方策や利用運送事業者のあり方について検討するため、昨年10月に同協会坂本克己会長の諮問機関として「多重下請構造のあり方検討会」を設置した。
 提言では下請の制限について、多重下請構造は実運送事業者に支払われる運賃の低下につながるトラック運送業界の大きな課題とし、中小運送事業者を含めたトラック業界全体として、2次下請までに制限すべきとしている。
 これにより、多重下請構造の解消を図るだけでなく、荷主や元請が実運送事業者の実態を容易に把握することができる、としている。


 関西のある実運送会社は、「運賃が安いから数を走るため時間オーバーする。日本の名だたるメーカーは物流子会社を持っているが、その抜き率は大きい。抜き率を決める。1次までしか認めない。繁忙期は2次までとか。実運送トラック業者は取り扱いやってもいい。取り扱いのみは廃止など規制は必要」と話す。
 一方、関西のある利用運送会社は、「長距離、地場を問わず、我々はトラックの積載率アップに貢献してきた。そうした実績は評価されず、一方的に『運送の諸悪の根源』のように叩かれるのは辛い。これまで荷主や元請けは、繁忙期には我々を頼ってトラックを確保し、閑散期には我々を隠れ蓑にして、安い運賃で仕事を委託してきた。言い換えれば、利用運送を使って楽して儲けてきたということ。逆に我々が業界からごっそり排除された時、果たして荷主や元請けはこれまでと同じように荷物が運べるのか、必要な利益が出せるのかと問いたい。
 一番の問題は荷主や元請けが自分たちのことしか考えていないこと。そもそも、途中で1割中抜きがあっても下請けの経営が成り立つくらいの金額で仕事を出せば済む話ではないのか」と憤る。(5月6日号)

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