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日本初 トラック事業者による貨客輸送

tuc  一台の車で貨物と旅客 両方から運賃収受

 京都の運送会社㈱tuc(吉田知史社長、京都市)が今年5月末から貨客輸送を開始した。これまでタクシー事業者やバス事業者による貨客混載は行われてきたが、トラック事業者による貨客輸送は昨年の制度改正以降全国初となる。

 貨客混載は1台の車で貨物と旅客を乗せることで、合法的に運賃が収受出来る。ドライバーの必要数の削減、環境負荷の軽減などが期待できる。これまで日本では、過疎地に限定する形で行われてきたが、昨年5月30日に制度が改正され、全国で貨客混載による輸送が行えるようになった。
 だが、1年以上が経過しても、貨客輸送を行う事業者は増えていないのが現状だ。
 国土交通省が公開している貨客混載実施事業者の一覧では、今年3月末時点で貨客混載を行っているタクシー事業者は14社。バス事業者では、乗合バスが3社、貸切バスが1社。制度改正以降に参入した事業者はタクシーが1社のみで、ほとんど増えていない。
 また、トラック事業者で貨客輸送を行っている事業者は、制度改正以降ではtucが全国初となる。
 貨客混載を行うには、事業者が「貨物自動車運送事業」と「旅客自動車運送事業」の両方の許可を取得する必要がある。この2つの許可は取得の条件が異なるが、特に「旅客自動車運送事業」の許可取得は参入障壁が高い。
 tucでは、一般貨物輸送の他にも、京都での映画やTV番組の撮影を対象としたロケバス事業を展開している。出演者やスタッフをロケバスで送迎する以外に、撮影機材をバスの中に積込み、輸送することもある。
 これまでは、トラックで人を運ぶ行為や、タクシー・バスで荷物を運ぶ行為はサービスと見なされ、運賃を取ることができなかったが、貨客の許可を得たことで、両方で運賃を取ることが可能となった。

 同社では、当面はこれまで通りの運賃で行いつつ、今後の契約更新で運賃交渉に使っていく予定だ。
 吉田社長は、「主役級の俳優さんに、ふさわしい車格の車に乗ってもらいたかったのが貨客輸送許可の一番の取得理由。これまでは自前でそういった車種を用意できなかったので傭車していたが、都市型ハイヤーの資格を得たことで、自前で用意できるようになった」と話す。
 これまでは都市型ハイヤーの資格を取得するにはハイヤー車両を10台確保する必要があったが、制度改正によりトラック9、ハイヤー車両1の比率でも可能となったため、今年の2月に運輸局へ申請。5月30日に申請が通り、貨客輸送が可能となった。
 貨客輸送を行うにあたり、新たに社員5名に2種免許を取得してもらい、2種免許所持者は計10人となった。
 
 貨客輸送が持つ可能性について吉田社長は、「トラック運送の貨客輸送は、ロケバス以外で需要があるかは未知数。例えば精密機械を運ぶ時に、セッティングなどの作業をするエンジニアさんが、わざわざ別の車に乗って現地集合をしていたりするのは無駄が多いように感じる。トラックの助手席に乗ってもらえれば、車は1台で済むからはるかに効率的。まずは都市型ハイヤー事業での通常の送迎がメインとなるが、やがてダブルキャビンでの貨客輸送やその先は貸切バスで貨物のトレーラーをけん引するとか色々と新しいアイデアに挑戦したい」と話す。(9月116日号)

 【写真】貨客限定と書かれたトラック

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