自動車整備の2024年問題とは?

電子制御整備認証  整備業者の4割が無認可

「物流の2024年問題」はある程度全国的にも知られるようになったが、実は自動車整備業界にも「2024年問題」が存在する。これは、時間外労働の規制で整備時間が減少するといったものではなく、電子装置を整備できる事業者数が不足するという問題だという。一体どういうものなのか。

 2016年にトラックへの衝突軽減ブレーキの装着を義務付ける法令が施行され、現状、2021年以降に発売された総重量3・5t以上の新車には、すべて衝突軽減ブレーキが装着されている。
衝突軽減ブレーキなど車の電子制御装置を整備するには、2級自動車整備士や車体整備士の資格者が「自動車電気装置整備士」(特定整備士)の資格を持っておく必要がある。
また、電子制御装置の整備は専用の機器を使って行わなければならない。
破損したフロントガラスを交換する場合、カメラの位置や角度の調整(エーミング=機能調整)が必要になる。衝突被害軽減ブレーキを正常に作動させるには、カメラやミリ波レーダーというものが修理後も正常な状態でなければならない。
例えば飛び石でヒビが入ったフロントガラスや、事故でバンパーを交換した場合、カメラやミリ波レーダーが修理前と同じ方向を向いていなければならない。そうでないとカメラが対向車などに反応し、急ブレーキがかかる現象が起こってしまう。

 交換後にカメラの位置や角度が交換前と同じになっているかを調べる作業が必要になってくるが、これが「エーミング」というものだ。
エーミングは、衝突被害軽減ブレーキの他にも、車間距離制御、レーンキープアシストの機能が正常に働くか調べるためにも必要になってくる。
エーミングはドライバーや歩行者の命に関わる作業になるため、専門知識のない整備士が安易に行うことはできない。
 そこで、整備業者に対し、2024年3月末までに「電子制御装置整備認証」を取得するよう2020年4月に通達を出していた。
しかし、国土交通省自動車局整備課によると、今年1月時点の電子制御装置整備の認証件数は累計5万3134件。
 現在、国内には9万1946者(自動車整備振興会データ・2023年度)の整備業者が存在するので、業者の6割が認証を取得し、残りの4割はいまだに無認可ということになる。
 無認可工場が全国に4割あり、それらが事業を継続している。これが自動車整備業界の2024年問題なのだ。
 国交省の担当者は「現状、トラックも含め、国内で販売されている全ての新車に電子制御装置が装備されており、こうした車両が整備の現場へ修理や車検で入って来ている。認証申請については、通達開始から4年の経過措置を設けており、期限の延長は行っていない」と説明する。

 同認証を取得しなくても分解整備を行うことは可能である。ただし、電子装置の付いているフロントガラスやフロントバンパー等を交換することはできない。
 ある整備会社では、「認証を取得しない理由として考えられるのは、有資格者がいないこと、分解整備の認証工場であることの条件もあるが、もう一つ、認証がなくても保険会社が修理費の支払いは行うという点も大きい。無認可でも(通常の分解修理などの)修理費を支払ってもらえると安易に考えている。その無認可工場に仕事を紹介する損保のコンプラ意識もどうかと思う」と話している。(5月20日号)

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