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綿業会館の喫茶付き見学会に参加してきた

大正後期から昭和初期にかけて、大阪が東京を凌ぐ世界有数の大都市だった「大大阪時代(だいおおさかじだい)」。その時代の大阪の栄華をよく物語るのがこの船場に建つ綿業会館です。

本町駅より徒歩5分程度

こちらは紡績・繊維業界関係者たちの会員制倶楽部である日本綿業倶楽部の建物であり、会員たちの交流のためのサロンなので普段は一般の人は入れませんが、見学会というのを月イチで開いてくれてます。

コロナで見学会も中止になってましたが復活し、さらに今年TVドラマで取り上げられ認知度が上がったことで見学会の回数も増えたので、これを機に申し込みをいたしました。

回数は増えたものの、希望者も増えたので申し込めば参加できるというわけでもなく抽選制になっており、私も一度ランチ付き見学会で落選し、今回の喫茶付き見学会でようやく参加となった次第です。

昨年までは内部の写真をSNSで公開することは基本禁止だったとのことで、見学会参加者のレポートなどもあまり見られませんでした。なので、せっかく写真もバシバシ撮ったのでnoteにまとめようと思いまーす。

重要文化財です

本館1階 会員食堂

スキップフロアになってます

入り口で受付をし、まずは入って右側にあるこちらの会員食堂に集まり喫茶タイム。いきなり麗しすぎる空間でビビる。

ミューラル・デコレーションの装飾天井が目を引く
草花の曲線と直線&幾何学の組み合わせが絶妙。色遣いも可愛い。
透かし彫りのガラス窓。

館内の時計は配線を通じて一括で時刻調整ができるシステムが整っているらしい。また、照明は近年LED化を進めてるとのこと。この会員食堂もなるべく以前の電球に近い色を選んだけど、昔からの会員様からは、やはり全然違う、と言われるとか。特に夏の日差しが差し込む時にはLEDだと白っぽくなりすぎるそうです。

文化財なので、LEDに変更するなど変更・改修するには逐一文化庁の許可が必要みたい。

また、石のように見える壁は吸音材を用いた壁になってて、カトラリーの音が響きにくい仕様になっているなど、かなり当時の最先端のつくりのようです。叩くと確かに石ではない軽〜い音がしました。

…というようなガイドを受けつつ館内をめぐるツアーだったんですが、色々ウロおぼえだし、この調子で説明していく自信がないのでもっと適当にいきます。ここに書かれている内容をあまり信じないでください。

こちらがいただいた喫茶メニュー。

喫茶タイムが終わり次第、館内をめぐるガイドツアーが始まります。

玄関ホール

外観と同じイタリア・ルネサンス様式だとか。3階まで吹き抜けになってて広々。
左右対称の空間の中央に東洋紡績・岡常夫氏の銅像が鎮座します
絨毯の柄も素敵。これも建築当時からのものだそうです。
階段の手すりのこの滑らかな曲線が気持ちイイ
2階の新館側から玄関側をみたところ

銅像になってる岡常夫氏の「日本綿業の進歩と発展を図るため」という遺言と100万円(現在の価値で50億!)の寄付、そして業界からの醸出金50万により、この綿業会館は建設された…と聞くと、ちょっとお金の使い方間違ってませんか??という気にもなるが、お陰様でこうして伊達や酔狂でできるようなレベルじゃない建築物を楽しませてもらってるのでありがたいっちゃありがたい。それに人のお金の使い方にとやかくいうものじゃありませんね。

この玄関ホールにある岡常夫氏の銅像は、戦争中の金属供出で国に没収されたんだけど、どっかに型がちゃんと残してあったので戦後無事そのままの形に復元できたそうです。シャンデリアもそんな感じでもってかれちゃったので、こちらは復元できずに当時とはもうデザインが異なっちゃってる…という話だった。確か。さらに、没収対象ではない錫を使った手すりは当時のままだそうです。

見学時には、そういった時代背景や歴史にも思いを馳せましょう。

本館3階 談話室

イギリスルネッサンス初期のジャコビアン・スタイル。最も豪華で綿業会館を代表する部屋です。
見事なタイルタペストリー
照明のデザインとの相性がまた良い
種類としてはわずか5パターン

この部屋は入った瞬間ド興奮した。圧倒的豪華さ…!
奥の壁一角に、天井までびっしり泰山タイルが貼り付けられてます。
タイルは設計者の渡辺節が1枚1枚貼る場所を決めたとか。こだわり方がすごい。というか怖い。

泰山タイルについては詳しくはコチラを↓

私が先日見学に行った橋本遊郭の建物にも泰山タイルが使われているらしいけど詳しくはわからん。たしかにそれっぽいタイルはあった。

左右で全然雰囲気違うけど、不思議と違和感がない
竹編みみたいな暖炉の上にパイプオルガンみたいなデザインの装飾
暖炉の前の絨毯がso cuteだった!これも建築当時のものですって
椅子やソファもご立派。家具も含めて文化財なので見学者は座るのNGです。
窓はなんと耐火ガラス!

先見の明というかなんというか、このフランス製の耐火ワイヤーガラスを使用していたおかげで昭和20年の大阪大空襲で周辺が焼け野原になっても、この綿業会館はほぼ無傷で済んだそうです。

タイルタペストリーの逆側には、これまた優美な階段がついてます。

支えのない空中階段。
登りたいけど登れません。
手すり部分のデザインも美しい〜
シャンデリアの根元部分には送風口が開いてて空調ができるようになってる。ハイテク!
会員専用。リットン調査団(かざあなダウンタウンに出てない方)も訪れたとか。
ちなみに、人が写ってない写真ばかりアップしてますが、見学会は30人程度が参加してるので、かなり部屋いっぱいにいます。

本館3階 貴賓室(特別室)

この部屋はクイーンアン・スタイル、とのこと。

そう広くない部屋の中央のテーブルまわりに見学者全員が集っていたので、部屋全体の写真を撮り逃した。クイーンアン・スタイルのお部屋はどんなだろ?と気になる人は各自ググってみてください。

猫足になってて曲線が優美なテーブルとチェア
家具類も当時のものです
天井の鳥や草花の漆喰細工が繊細でエレガントこのうえない
ドア周囲は直線的な装飾が施されてます
床も寄木でめちゃくちゃ凝ってる!

本館3階 会議室

フランスのアンピール(エンペラー)スタイル

貴賓室のお隣、ドアを閉めると会議室側のドアは鏡になってて、鏡が向かい合わせになる形になるので通称「鏡の間」と呼ばれるそう。

鏡になってるドアの上部に時計
このドアの横の部分、木材っぽいけど木目調の石なのです!触るとひんやり硬い。
雷文?中華感ある天井が個性的
段通(中国の絨毯)の柄と色遣い、可愛い〜。
部屋の端から端まである長〜い1枚ものになってます。
床の大理石にはアンモナイトの化石も!
赤に金鋲がアンピール(ナポレオン皇帝)感です
送風口のデザインもいちいち凝ってるんだよな〜

本館7階 大会場

こちらはイギリス建築様式のアダム・スタイル、とのこと

ステージ部分や床の色、アーチ状の天井などが昔の小学校の体育館を思わせるからか、これまで見てきた部屋に比べて地味に見えるからか、見学者の多くがあんまり興味なさげで、そんなにカメラも構えてなかったんだけど、私はここのステージまわりのデザイン震えるくらい好き!めちゃくちゃカワイイ!!!

配色も完璧
可愛い〜可愛い〜
籠編みみたいな天井模様もいい。音楽室の壁みたいな小さい穴がいっぱい開いた素材だった。
柱型を並べた壁のデザイン
ステージと床の色が惜しいな、と思う

急にここだけ普通の会議机とパイプ椅子が並べてあって雰囲気を壊すんだけど、この辺がリアルに今も日常的に使用されてることを物語ってて、それはそれで喜ばしい。

新館側にも大会場があるようだけど、そちらの見学はナシ。というか新館側の見学は一切ナシ。新館側には普通にテナントとして色々な会社が入ってるそうです。
では本館と新館の間部分にあるロビーを通ってエレベーターに乗って1階に戻り、次は本館地下へと向かいます。

7階ロビー部分の床は戦後のものだそう。この戦後昭和っぽい雰囲気もこれはこれでいい。
1階エレベーターの装飾された扉
エレベーター脇の郵便ポスト。上の階から繋がっててここに集まる。
玄関ホール左側のラウンジを通って地下へと

本館1階〜地下 螺旋階段

地下へ行く階段。ぱっと見で洗練されたセンスを感じさせる
手すりに籐編み?オシャレ〜
スッキリとモダンなデザイン
降りま〜す
グルリぐるぐる
絵になる〜

渡辺節事務所にいた村野藤吾が綿業会館の建設に参加していたのもあり、この階段は村野藤吾デザインと思われていたようですが、村野藤吾研究者の大学教授の指摘により、この階段は戦後の渡辺事務所による改修で設けられたものであり、村野藤吾風にデザインされた渡辺節の息子の手によるものと最近になって訂正されたそうです。

本館地下 グリル

会員と同伴者専用のレストラン
このグリルは何度か改修されてるそうです
深海をイメージした青のグラデーションのモザイクタイル部分は建築当時からのもの
奥側の壁のタイルづかいが可愛い
見てきた本館の他の部屋に比べるとやはり時代の新しさを感じる(気がする)
バーカウンターもありました。

こちらのグリルは会員&同伴者専用ですが、見学者は「会員食堂利用券」がもらえました。これを使えば会員風の顔をしてこちらに潜りこめます。ただし会員より10%値段はアップ。メニューももらったので見てみると、「広島産牡蠣フライ ソースタルタル(スープ・サラダ・デザート・パン・コーヒー付き)」3650円、「ハンバーグステーキ 特製デミグラスソース(同)」4000円…って感じです。1回くらいなら来てみたい。またこの建物に入れるし。

以上で、ツアーは終了。ケーキを食べた最初の会員食堂に戻って荷物を引き上げ退散します。喫茶30分、ツアー1時間15分程度の見学会でした。

今回の喫茶付きガイドツアー、ガイドの方のお話がうまくて非常に楽しくあっという間の2時間弱でした!素晴らしい建築物を撮影OKで見させていただき感謝です。

あと参加者がみなさんちゃんと建物の見学目的に来ている落ち着いた方々ばかりでそれもよかったです。最近こういった素敵建築物に行くと、「素敵な場所にいる自分自身」の撮影ばかりに熱心になってる人がいて、こちらが写り込まないよう無駄に気を使わなきゃいけなくて見学が楽しめないこともあるので…。

ここにしたためた以外にも、美しい調度品やガイドさんの詳しい説明がたくさんありますし、実際に見てみるとより当時の空気感が感じられるので気になったかたはぜひ参加してみてください!

https://mengyo-club.jp/blog/event/room-tour


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