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マッチングは盲目(short short)

それは数値から始まる恋。
そこに目をつけ、悪さを企む、クリスチャンロバード(偽名)自称35歳。
ラテン系のなかなかのイケメン、そのことは自覚していた。
彼は、企業のサイトに侵入し、データを盗む、ハッキング集団の一人。
次にロバートが目をつけたのは、世界中で人気の出会い系サイト“ファストキューピット”。
それを使って、女性たちからお金を騙し取ろうと考えた。
“ファストキューピット”は、最新のアルゴリズムを使って相手との相性を分析、
わずらわしい恋のはじまりを省いて、より早くより効率的によりスムーズに目的を達成できるので、時間のない現代人に最近人気の時短出会い系サイトである。
ロバートは、ターゲット女性たちとの相性を95%に書き換える。
そんなことは朝飯前だった。
高いマッチングパーセンテージを見た女性たちは、
「やっと巡り合った運命の人(しかもイケメン)」
「時短でこんな最高の人と出会えるなんて」
一瞬で恋に落ちた。
女性たちはみなキャリアだ。
ウェディングプランナー、エステティシャン、デパート勤務、など。
とにかく時間がない。でも効率良くいい人と出会って、早く結婚したい。そこにつけ込んだ。
それからは簡単だった。
「結婚しよう。でも今、お金に困っているんだ」
1.美容師のロバート。独立したい、店舗資金が必要
2.パティシエのロバート。独立したい、店舗資金が必要
3.牧師のロバート。教会を作りたい、教会資金が必要
などなど。
あらゆるキャラクターを創作して同情をかい、言葉巧みに騙した。
女性たちはあっさり、ロバートに貢いだ。
あまりにも簡単だったので拍子抜けしたくらいだ。
ここからは、詐欺がバレないよう自然に彼女たちとお別れしなくてはいけいない。
そこでロバートは考えた。
本物のパートナーを見つけて、
「ごめんね、別の人を好きになった。」と、別れを告げよう。
そろそろ身を固めようとも考えていたし。
ロバートは、“ファストキューピット”でその相手を探した。
最初にヒットした女性。正直ロバートのドンピシャタイプの女性だった。
容姿端麗、育ちも良さそうなお嬢様タイプ。
プロフィールには、ミッション系の大学卒業、ファイナンシャルプランナーとして大手銀行勤務。
趣味はバイオリンと日舞、両親は共に教員、実家は成城。
ロバートは速コンタクトを取り、ホテルのラウンジカフェで待ち合わせた。
現れた彼女は写真で見るよりずっと美しく、思った通り理想の相手だった。
「やっと巡り合った運命の人」
ロバートは一瞬で恋に落ちた。
彼女は、父親が病に倒れたのをきっかけに、親を安心させたく結婚を考えたとのこと。
なんとやさしい。
彼女と結婚したい。すぐに結婚したい。
数回デートを重ね、早くも結婚を取り決め、式の日取りも決定した。
こうしてロバートは、犯罪から足を洗って、再出発しよう、そう心に決めた。
結婚資金も式の資金も、全ての資金はお金のプロ、ファイナンシャルプランナーの彼女にお任せ。
とりあえず自分がと、男気を見せようと、事前のお金は全てロバートが払った。
式場の予約金、エステに指輪、全部払った。
結婚式当日。
まだ別々に暮らす二人は、それぞれ式場に向かうことになっていた。
ロバートは一時間も早くに着いてしまった。
窓から見えるランドマークタワーを眺めながら、ゆっくりコーヒーを飲みながら、美しい未来の妻を待つ。幸せだなあ。
がしかし、彼女は時間になっても現れない。
彼女だけではない、担当プランナーも、彼女の両親も親戚も、友人も、誰一人現れなかった。とロバートの元に、スーツ姿の男たちがやってきた。
彼らは警察だと言った。これはどっきり?ああ、多分、余興のリハーサルだ。
ロバートは、騙されてあげようと、オーバーリアクションをした。
残念ながら、彼らは本物の警察だった。
ロバートは、美しい未来の妻に、騙した女性たちにはめられたのだった。
さらに、騙し取られたお金は、女性たちの手にちゃんと戻った。
美しい未来の妻は、式のお金をロバートに全て支払わせるよう言葉巧みに騙し、
見事、奪い返したのだった。
The end.

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