COLITIS

仕事(保険、福利厚生、InsurTech)、社会保障、読書感想、旅行記、バレーボール等。

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バレーボールのルールを人類学的に読み解く

球技とは贈与の反復である  先日、東京オリンピックの男子バレーの決勝戦を見ていた。ROC(ロシアオリンピック委員会)とフランスの一戦はフルセットの大激戦となり、最終的にはフランスの勝利となり、大会は幕を閉じた。今大会は、男子チームが29年ぶりに予選を突破するなど、自分のようなバレー好きには象徴的な大会であった。そして、そんな大会で多くのバレーの試合を見ていて、ふと気づいたのであるが、バレーボールは「贈与」の反復運動であり、極めて人類学的にみると面白いルールに基づいている。

    • 総合格闘技の魅力について考える

      昨年頃から、総合格闘技にのめり込んでいる。 まだ具体的な戦術論や技術についてはわからないところも多いが、できる限りその魅力を言語化してみようと思う。 主に、今自分が総合格闘技に感じている魅力は2つに集約される。 1つはバックボーンが異なる選手たちが、総合格闘技という舞台で生き残るために積み重ねる戦略の部分、そしてもう1つが、リングという舞台の外での格闘家たちの言動における幻想の魔力である。 まず、1つ目の魅力である各選出の戦略の部分から考えてみる。 総合格闘技をやっている

      • 西加奈子『サラバ!』を読む~欲望の三角形的解釈~

        1人の男性が、苦しみもがき続けながら自分自身の信じるものを見つけていく過程を描いた物語。 子供の時から、癇癪持ちの姉に悩まされ、共感性が高く、内省的な性格となった主人公は、常に周りを気にしながら、そして自分自身の見られ方を考えながら生きてきた。そのような中で、学生時代は狂人の姉と言う存在を煙たがりながら、一定の地位を築いてきた。その間、カイロへの引っ越し、父母の離婚と日本への帰国、姉の新興宗教通い、阪神淡路大震災、父の出家など、目まぐるしく環境は変わっていく。上巻や中巻では

        • 上海・西安紀行(2023.8.9-14)

          8月9日から14日まで夏季休暇を取得し、上海・西安に渡航した。諸々受けたカルチャーショックを忘れないうちに、書きとどめておきたい。 今回の旅行では、GW頃からビザ申請の準備をはじめ、渡航2週間前にやっとビザ取得。行くまでの労力はこれまでの海外旅行でも最も大きいものかもしれない。同時にビザなしでほとんどの国に行ける日本のパスポートの有難みを再確認する。 ビザが必要なこのタイミングでわざわざ上海へ行く人も少なく、行きの中国東方航空はほとんどが中国語が飛び交う機内。福岡の台風を避

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          中島岳志『テロルの原点』を読む〜日本におけるJOKERを復活させぬために〜

          以下、中島岳志『テロルの原点』の読書感想文です。 凄い本を読んでしまった。少なくとも2023年では暫定1位である。 個人的に、今年の年始にタモリが番組内で「2023年はどのような年になるのでしょうか」と聴かれた際に、「新しい戦前になるのではないでしょうか」と発言したことが、ずっと印象に残っている。 そうした中で、今年に入ってから同じく中島岳志氏の『血盟団事件』、小島俊樹氏の『五・一五事件』、そして本書を手に取った。なぜなら、新しい戦前の起点をどこにするかということの参照点は

          中島岳志『テロルの原点』を読む〜日本におけるJOKERを復活させぬために〜

          台湾紀行2023.1

          1人旅の際は記録を残すことにしているので、今回も例に漏れず残しておこうと思う。旅の楽しさは他なるものを経由し、自らを省みること、そして日常的な感覚や考え方を脱構築し、「いま・ここ・わたし」を再構築することである。旅先で「常識」が剝がれ落ちていく快感を、忘れぬうちにここに記しておきたい。 今回は自身が2016年に体育会バレー部の伝統である海外遠征で渡航先として企画し、実際に友好試合を行った国立台湾大学(以下、NTU=National Taiwan University)に、新

          台湾紀行2023.1

          企業の福利厚生制度は「四苦」をHackせよ

          私は企業の福利厚生制度の設計やその実現に向けた保険手配を専門とするチームで日々、人事の方とお話し、最適な制度提案を行う仕事をしている。 福利厚生制度と言えば多岐にわたるが、私は特に従業員が亡くなってしまった場合の遺族保障や働けなくなってしまった際の所得補償の制度を指す。(保険業界的には「団体保険」と呼ばれるものである)。企業によっては従業員の医療費の補助も会社が行うこともある。また、老後の資金のための退職金制度も保険ではないが、重要な制度である。 私の仕事は特に保険部分

          企業の福利厚生制度は「四苦」をHackせよ

          保険業界がESGに取り組むべき理由

          はじめに自社でESGに関するアンケートに答えることで、ESGスコアを算定するESGリスクレーティングツールの日本版をローンチすることもあり、2022年から自分が通常業務の傍らでESGに関する取り組みを行っていることについて、現状考えていることをまとめたいと思う。 今回このnoteを通じて訴えたいことは、保険業界がなぜESGに取り組むべきなのかということであるが、これは保険会社が株式市場において機関投資家の地位を担っていることなどという社会的な立ち位置による理由などではなく

          保険業界がESGに取り組むべき理由

          『レヴィナスの時間論: 『時間と他者』を読む』内田 樹 (著) と「天上天下唯我独尊」

          はじめにGWは1日の出勤を挟んで、10日間まとまった時間ができたので、待ちわびていた内田樹(以下、内田老師)の『レヴィナスの時間論』をじっくり読むことができた。 以下、本書の感想と、内田老師について、そして本書を読んで思い出した高校時代のエピソードについて書いていく。私の高校は仏教校で、当時は言語化できなかった宗教的実感というものを、本書を通じて言語化することに取り組むことができたと思っている。後半で詳述するが、「他不是吾」というエピソードを初めて聞いた時の衝撃や、「天上天下

          『レヴィナスの時間論: 『時間と他者』を読む』内田 樹 (著) と「天上天下唯我独尊」

          駒崎弘樹さんの『政策起業家』を読む

          駒崎さんの本は読むたびに勇気を与えられる。駒崎さんについては『「社会を変える」と仕事にする』を読んで以来、FBやTwitterでフォローし、応援させて頂いているが、本書は、病児保育のフローレンスの事業を起点に、小規模保育園、医療ケアが必要な子供用の保育園、男性育休の義務化など、社会課題への政策面での支援を求めるムーブメントを起こしていく過程について、駒崎さん自らが記した奮闘記である。駒崎さんはFBなどでも拝見するが、口調は非常に優しいのだが、不条理に対しては断固として戦い続け

          駒崎弘樹さんの『政策起業家』を読む

          職域分野の保険制度の重要性と展望~ワクチン職域接種による再評価~

           最近、とあるベンチャーキャピタルが単体ではワクチンの職域接種の申請基準に満たないベンチャー企業を申請基準水準の人数規模まで集め、大規模合同接種を実施しているというニュースを見た。正直、職域接種は大企業と特権であり、中小規模の企業の職域接種に悲観的であった私にとって、このニュースの重要性は非常に高く、私が現在取り組んでいる職域での保険制度運用の価値を再認識する形となった。  「スケールメリット」というものはビジネス、経済学における第一原則だろう。個別にサービスを提供するより

          職域分野の保険制度の重要性と展望~ワクチン職域接種による再評価~

          【読書感想】『コミュニティ・オーガナイジング』を読む

          先日、『コミュニティ・オーガナイジング』という新刊を読んだ。内容は、簡単に言えば社会課題を解決する手法とでも言えるであろう。問題意識に対して、仲間を集め、目標とする社会の在り方をゴール・セッティングし、そこに到達するための戦略を考える。日本ではあまり良い意味に捉えられていないように感じる社会運動をどのように起こしていくかということが平易に書いてある。実際、お昼休みの自由を奪われた小学生たちが、その自由を取り戻すために小学校でムーブメントを起こすというストーリーに合わせて折に触

          【読書感想】『コミュニティ・オーガナイジング』を読む

          MEMENT COLI

          2020年の年末は2019年の年末から比べると、隔世の感がある。  世の中の2020年の印象は、「一瞬で過ぎ去ってしまった」「何もできなかった」という印象がほとんどだろう。ただ、自分にとっての2020年はあまりの多くのことが変化し、揺れ動いた1年であった。 なぜなら、結婚、そして転職(おまけに引越)という2つの転機をこの1年間ですべて行ってしまったからである。2019年12月31日は、毎年恒例の里帰りで、父親の実家である長野県東御市に帰っていたが、まさか今年1年間で

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          死者論としての『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』#読書の秋2020

          1、この本を届けたい想定(潜在)読者 読書感想文は書評もレビューでもない。 この投稿を通じて、私はこの本を評価するつもりもなく、ただ一人の人間として、この本を読んだ感想を述べていきたいと思う。 しかし、私の第一の感想は、この本を多くの人に読んでもらいたいということであった。 であるからには、この本を読んだことのない未来の読者を自分なりに考えて、そこに発信していきたい。 そして、その想定(潜在)読者層は、「近しい人の死に直面したことのある人」だ。 なぜかと言えば、この本は

          死者論としての『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』#読書の秋2020

          事故発生時に損害保険会社の営業マンは何をするべきか。

           私は損害保険会社で営業担当者をやって3年目になるが、ここのところ自分自身の行動・対応に悩んでいる点がある。それは、端的に言うと表題の通りで事故発生時に営業担当者がどのように振舞うかということである。   自分の悩みを、一般の人々に理解してもらうために、気づくと非常に多くの「前提」に字数を割いていた。個人的な見解であるものの、保険会社の中のことについて比較的平易に書いたつもりであるため、前提を読むだけでも、保険会社の理解に繋がるかもしれない。そして、この悩みについては、保険会

          事故発生時に損害保険会社の営業マンは何をするべきか。

          少し真面目な政治の話

           先日、仕事終わりに一緒に呑んだ友人が、研修の講師が昨年の香港での一連の出来事を「暴動」と表現したことに対して、抗議のメールを送ったと話していた。幸いにして、講師も立派な人で、明確に発言をした記憶はないにせよ、誠意のある謝罪をしてくれたと話していた。確かに、香港での一連の出来事を「暴動」と発言することは、いささか一面的な見方であり、発言ではあるが、正直わざわざ抗議のメールを送るほどではないと私は思っていたし、彼の行動が不思議であった。 彼は、講師という立場の人間が表現したこ

          少し真面目な政治の話