猫の名前
9才から二十歳くらいのときに、実家で猫を飼っていた。死んだときは、本当に悲しかった。
ある日、僕が縁側で納豆掛けご飯を食べていると、猫はひょいと隣家との柵から顔をのぞかせ、こちらを見た。3秒くらい見つめ合っていたように思う。そして猫はそのまま優雅な足取りで僕のほうまで来て、膝の上に乗ってごろんごろんとじゃれた。試しに、僕が食べていた納豆掛けご飯をあげたら、こういうの前から食べているよという風に食べた。もしかしたら彼は長旅を経て、我が家にやってきたのかもしれない。彼にはなんだか安堵感みたいなものが漂っていた。
彼の名前は“なっとう”にしようかと思ったが、なんだか猫の名前としてはしっくりこないなと思い、同じく食べ物ということで“トロ”にした。
そのようにしてトロは家族になった。
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