2_10_”QCDを意識する”とは
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その昔、「うまい、やすい、はやい」というワードを全面に押し出したテレビCMを流していた、全国規模で飲食店を展開する企業をご存知でしょうか。はい。それは、かの有名な牛丼チェーンの『吉野家』さんです。現在は、タレントさんを起用して、”牛すき”などをお勧めするCMが放送されることが多くなっていますが、その昔は、「味の吉野家 牛丼一筋80年~」という歌詞の曲をバックに、「うまい、やすい、はやい」というコンセプトで企業や商品をアピールしていました。このコンセプト自体は、今でも掲げているようで、”吉野家文化”のWEBページで確認することができます。
この吉野家のコンセプトである「うまい、やすい、はやい」ですが、これに対して、あなたは、何か気が付いたことがありましたか?
この「うまい、やすい、はやい」を見て、「あれ?、もしかすると、このワードは、こういうことが考慮された結果として作られたものではないだろうか?」とピンとくるものがあれば良いのですが、もし、何も感じるものないのなら、このぶっちゃけ!『”QCDを意識する”とは』を読んでいただいて、今後のお仕事に役立てていただきたいと思います。なぜなら、
ぶっちゃけ!
「このワードには、日々仕事を進めていくうえで、非常に重要な考え方が凝縮されているからです。」
先に申し上げておきますが、この吉野家のコンセプトが、ここでお話しする考え方がベースになっているかどうかはわかりませんし、それを問い合わせたところで、「さぁ~・・・」と言われるのがオチでしょうから、直接、確認をとった訳でもありません。
しかし、最近、改めてこのワードを目にしたとき、このぶっちゃけ!でお話しすることが、コンセプトとして、しっかりと練りこまれているな、ということを感じましたので、そのような解釈に基づいてお話ししたいと思います。
さて、今回のぶっちゃけ!のテーマである、”QCD”。みなさんは、これまでに、この”QCD”という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
”QCD”のQはQuality(品質)のQ。CはCost(価格)のC。DはDelivery(納期)のD。これらの頭文字をつなげたものが”QCD”です。
この”QCD”。元々は、工場などの生産管理の現場で使われていた用語で、モノづくりの重要な3つの視点として、何をするにも、まずは、これら3要素を意識して、仕事を進めていきましょう、というものだそうです。
最近では、製造業だけでなく、サービス業などでもよく使われていて、この考え方抜きでは語ることができなくなっているほど大切な概念です。
そして、私が携わる、コンピュータソフトウェアの企画・開発の世界においても、この”QCD”のを意識することが非常に重要であり、常に頭の中でイメージしておかないと、妥当な判断ができていないのではないかと思うくらいになっています。
前置きが長くなりました。
ここまでのお話しで、言葉の意味だけはお分かりいただいたと思いますが、まだ、具体的なイメージを持つことができていないかもしれません。
そこで、”QCD”のことについて、具体的に理解したいという方のためにも、みなさんにも馴染みのある家電製品、ここでは洗濯機を例に、紐解いていくことにします。
まずは、”QCD”の”Q”。品質について、です。
品質と言えば、何はさておき、取扱説明書に書かれているとおりに動作することはもちろん、頑強で、故障することなく、製品寿命が長いということが重要です。
”このボタンで、洗い・すすぎのコースを設定することができます。”と記載されているのに、そのとおりに洗ってくれなければ困りますし、2、3回洗濯しただけで、モーターが回らなくなってしまってはもっと困ります。
このようなことが”品質”の意味するところであるということは、誰しも理解していただけることだと思います。
では、「洗濯だけでなく、乾燥もできる。」とか、「洗濯物の重さを測って、自動的に洗濯のコースを設定する。」とか、「洗濯に使う水の量が、従来に比べて約半分。」とか、こういうことはどうでしょう。私は、これも、品質の範疇に入れて良いと考えています。どのようなことができて、どのようなことができないか、といった、その機械の特性というか、機能というか、そういうことをスペック(仕様)という言い方をするようですが、そのような特性や機能も、”QCD”で言う”Q”の範疇であると言って良いと思います。言い換えると、”できることが多いから高品質”であり、”できることが少ないから低品質”という言い方をしても良い側面もある、ということです。
そして、もっと言えば、例えば、不幸にも、故障が発生してしまい、修理が必要になったとき、「いちはやく、丁寧に対応してくれる」というような、”保守性”という言葉を使うことが適切であると考えられるような、そんな側面についても品質に含めることができると思います。
次に、”QCD”の”C”。価格について、です。
最初に、最初に”QCD”のことに触れたときには、”C”のことをCostと記載しておきながら、”価格”と表現しました。
そのほうがわかりやすいと考えて”価格”と表現しましたが、正確に言うと、やはり、Costはコストなんですね。つまり、お金だけがコストではない、ということです。何か、事を起こそうとしたときに、必要なものがお金だけでなく、かかる時間や、要する人の労働力などもあるならば、それらはすべてコストになります。事を起こすためにかかったもの全てを総じてコストと言い、特に、かける前のものを”資源”(Resource)と言って、厳密に区別する場合もあります。いずれにしても、目的を達成するためにかかるものをコストと言うことにしておきましょう。
では、今、お話しするための具体的な例としている洗濯機について言うならば、そのコストとはいかなるものでしょうか。これは、洗濯機を作る側と利用する側。つまり、商品としての洗濯機で言えば、売る側と買う側の立場で、同じ”コスト”と言っても意味が変わってきます。
まず、製品を提供する側にとってのコストについて、です。
洗濯機という製品を製造する訳ですから、当然、材料費がかかります。これはコストでいいですね。問題ないと思います。しかし、材料だけ調達すればそれで製品が出来上がる訳ではありません。製造する人も必要なら、工場も必要です。洗濯機を製造するところからは少し離れてしまいますが、洗濯機を製造するのが会社なら、会社を維持・運営していくために必要なものだってコストになります。もっと言えば、今回の新製品をリリースするために、特別に必要だった研究開発だって、一人前の技術者として仕事ができるように教育訓練する人の労力や時間だって、すべてコストだと考えて良いと思います。
そして、お金ばかりがコストではなく、例えば、時間なんかもコストと考えることもできます。”新製品の企画から実際に発売するまでの時間”などがそれにあたると考えられます。当然、時間が短ければ短いほどコストはかかっていないと考えられる訳で、「すぐできるのならやってほしい。時間がかかるのなら結構です。」ということがよくありますが、あれは、時間をコストと捉え、かけるコストと得られるリターンの損得勘定を、無意識のうちにやってる、ということです。
ですから、一般的な消費財の場合、「なぜ、これが、こんなにも高価なの?」と思ってしまうことがよくありますが、そこには、我々が知らないだけで、それ相当のコストがかかっていて、実は妥当な値付けをしている、と言う可能性があることも十分に考えられます。しかし、それを妥当であると判断するか否かは、求める側次第ということになりますが。
次に、製品を利用する側、つまり、洗濯機を購入する側にとってのコストについて、です。
これは、もう説明するまでもないと思いますが、洗濯機を入手するために支払うお金がコストになります。しかし、もう少し考えてみるとこれ以外にもコストと呼べそうなものがあると思われます。先ほど、かかる時間もコストと考えることができそうだ、というお話しをしましたが、ここでも、それは当てはまると考えられます。例えば、洗濯機を購入しようと考えてから、実際に購入するまでの間に、数々ある製品の中から、詳細にスペックを調べたり、実売価格帯を調べたりして、時間と労力がかかっているかもしれません。このような場合は、これらもコストに含めることになります。
最後にに、”QCD”の”D”。納期について、です。
”納期”と言うとわかりにくいですが、ここでの考え方は、単純な意味での”時間の長さ”だと考えていただければ良いと思います。
提供する側の場合なら、例えば、工場で、「洗濯機を1台製造するときの製造開始から製造完了までの時間」とか、「メーカーから量販店に届くまでの時間」とか、そういう時間にあたります。
また、利用する側の場合なら、例えば、「注文してから、実際に家に配送されて、利用することができるようになるまでの時間」とか、そういう時間にあたります。
コストのところで触れた時間は、”お金や労力を伴いつつかかる時間”という意味が強いのに対し、ここで言う時間は、本当に単純に、幅というだけの意味、一般的に使われる”リードタイム”と同意だと考えて良いと思います。
さて、ここまでの説明で、QCDについてのおおよその意味は理解できたと思います。
そこで、冒頭の「うまい、やすい、はやい」です。これ、そのまま”QCD”になってますね。
飲食店にとっての生命線は「おいしいこと」ですから、何よりQが大事。そして、安くなければなりませんからコストも大事。そして、提供までの時間がはやい、つまり、納期も短いということも大事。そういう意味になります。
「うまい、やすい、はやい」が”QCD”を表現していることはわかりましたが、では、その順序はどうでしょう。
見ての通り「うまい」を先頭に据えています。何はさておき品質なのだ、という現れだと思います。
やはり、品質。私も、これが一番なのだと思います。
もちろん、ビジネスの世界では、状況に応じて優先度は変わるし、そのことにより、”QCD”のバランスも変わってくることはあると思いますが、特別な条件がなければ、”QCD”のうち、一番に来るのは、品質だと思います。
そして、ここで言う品質は、”高スペック”という意味での品質よりも、圧倒的に、”きちんと動くこと”という意味の品質です。吉野家さんの場合で言えば、”高スペック”にしようと思えば、高級な食材を使うとか、高級な製法を採用するとか、いくらでもできると思いますが、そうすると、当然高コストになるでしょうし、素早い提供ができなくなってしまうことでしょう。誰が見ても、「そりゃ高品質ですよね」となるだけですし、「そこまでコストがかかるのであれば、そこまでのスペックは必要ない。」というバランス感覚も働くことでしょう。ですから、できる限りコストを抑え、できる限り早く提供する中で、いかにして高い品質のもの、スペックではなく、同じスペックでもクオリティの高いものを提供することができるか、ということが重要なのだと思います。”安かろう悪かろう”では困りますし、”早かろう不味かろう”でも困ります。
吉野家さんが、「うまい、やすい、はやい」を掲げるとき、このコンセプトを策定するのが先だったのか、それとも、QCDのことを意識することが先立ったのかはわかりませんが、お客様に提供するモノやサービスに対して、という意味はもちろん、それを担う、自分達の仕事がどうあるべきか、という指針にもなっているのだと思います。
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