ショートケーキの生クリームを削ぎ落とすような人生
幼い頃、生クリームが苦手だった。
糖分をたっぷり含んだ生クリームは、幼い私の舌には「異物」だった。少しならまだしも、美しく絞られた装飾用の生クリームたちは、私にとってはあくまで「飾り」であり、「食用」ではなかった。
だから、誕生日ケーキも、クリスマスケーキも、フォークでせっせと生クリームを削ぎ落として、「フルーツを挟んだスポンジ」状態食べていた。「じゃあ、ケーキなんか食べなきゃいいじゃん」という話なのだが、当時の私には「ケーキに」生クリームが付着しているのであって、「生クリームを含めてケーキ」という概念がなかった。
振り返ると、「生クリームを含めたケーキ」を美味しく食べられるようになっても、その独特の思考はちっとも変わっていないことに気がつく。
恋愛で相手の嫌なところが見えてくると、「嫌なところ」と「好きな人」は別だと思って、「嫌なところを治してもらえば完璧になる」と必死に改善を求めた。ひどくなると、年上の恋人に叱責(喧嘩ではなく、親が子を叱るような物言いだった)をしたことさえあった。当然、そんなこんなで恋愛でいい思いをしたことはほとんどない。落ち着いている恋人は今の人ぐらいなものだ。
「三つ子の魂百までも」。私はこれからもこの"独特な思考"で幾度もつまづくのだろうか。まったく、難儀な感性で生まれたものだ。
あなたにも私と同じような「遡れば昔からそうだった」はないだろうか?遡って、より単純で滑稽な「原点」を見つけられれば、今のあなたが抱える問題の本質が見えてくるかもしれない。