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【ルール破りは、最高の結末だった!?】現役テレビⅮが、バチェロレッテを制作者目線で考えてみた。

ひとつ前は、一視聴者による表面的な部分の考察でした。
今回は、番組制作者目線で分析してみたいと思います。

後半のテーマは、「バチェロレッテのスタッフは、なぜ福田萌子の最後の決断をOKしたのか?」についてです。

この番組を作っている身になって想像してみると、ローズセレモニー前にどっちも選ばないって結論を聞いたら、
普通は「はぁ!? 萌子さん、どっちもなしなんてあり得ないっすよ! 2on1の時はわがまま聞きましたけど、このルール違反は困りますって! あくまでショービジネスなんです。いい加減にしてください」ってなるはずです。

だけど、認めている。お膳立てもきっちりしている。

「人の人生や心は、縛れないからなぁ・・・仕方ない」というヒューマニズムでの妥協も部分的にあったと思うけれど、それよりも「最後の一人を選ばない」という結末を作ることは、実は番組にとって“旨味”があることに気づいたからなんですね。
実は、「無理矢理どっちかを選ばせる」よりも、「萌子のわがままを聞いてあげる」方が、番組制作サイドにはメリットが多いんです。

番組の根幹をなす最大のルールを破ることを超えるメリット…どういうことなのか。解説していきます。

最後のデートを終えた後、今回あり得た結末を並べてみると、けっこう簡単に分かります。
①萌子、スギちゃんを選ぶ
→(心の中では愛せていないけど、それは胸にしまって暫定1位なので選ぶ)
②萌子、黄皓を選ぶ
→(黄皓は萌子のことを愛していないが、萌子はゴリ押しで選ぶ)
③萌子、どちらも選ばない
→(どちらも真剣に結婚を考えられないから、選ばない)

①は萌子さんが本音を暴露しなければ分からないことなので、おそらく理想のエンディングだったかと思います。視聴者の納得感も高かったと思います。けど、自分に正直な萌子さんですので、じつは実現する可能性は1番低かったんです。

では、②はどうか?
ここが重要なのですが、実は②「黄皓を選ぶ」ことは、③「どちらも選ばない」よりも、視聴者の納得度が低かった可能性があるんです。つまり、②が最悪の結末なんです。

なんでかというと、②になった場合、見ている人は「黄皓はラストディナーで、好きって言えてなかったじゃん! 破綻しているのに何でコイツが選ばれるの? 結局、ハイスペックな金持ちが勝つのかよ」ってなるはずなんです。
ルールを守っているけど納得がいかない…これが前回「後味悪い」って言った意味になります。バチェラー3レベルのバッシングも起きる可能性が十分あると思います。
萌子さんが、そんなリスキーな②を選択する可能性は、①よりはるか高かったと思います(スギちゃんより黄皓のことが好きなので)。

③は、すっきりしないけど「萌子さんらしい!」と言って、一定の賛同は得られる可能性が高いんです。現にそうなっています。
3の友永・岩間ペアは番組枠外で裏取引しているけど、彼女は番組内で堂々とルール違反をやっているので、個人攻撃される可能性が低いんですね。

繰り返しますが、番組ルールを順守しなければならないということで②になった場合、“真実の愛信者”からは「結局カネか!」とバッシングが来る可能性があるんです。
福田萌子本人への批判もあるだろうけど、男性陣に経済格差を持ち込んでしまった制作サイドの落ち度を指摘される可能性もある。結局金持ちが選ばれるんだと幻滅させてしまうと、「駄作」と言いふらされて、これから見る視聴者が減る可能性がある。さらに、新作作っても見る人が減るかもしれない。

そんな「不買運動」は、ビジネスとして絶対に避けなければならないんです。

なので、実は制作サイドにとっては、②こそが真のバッドエンディングだったと考えるのが妥当なんです。
憶測ですが、制作スタッフは最後のデートが終わったあと、内心ひやひやしていたのもしれません。「萌子は絶対スギちゃん選べないじゃん? だけど、これで黄皓選んだらヤバくね? 撮れ高的に絶対に納得いくようにするの無理だぞ。編集でどうにかなるレベルじゃねえよ…」。
そんな中で、萌子さんが「どっちも選ばない」って言ってきたときは「は、あり得ないっすよ!」と言いながら、内心「(ほっ、助かったぁ…)」って感じだったのかもしれません(笑)。
(もしかしたら、そもそもスタッフが③になるようにナチュラルに促したのかもしれません。そこはわかりません)

ルール破りの③がもたらすメリットについて、もう少し書いていきます。
バッドエンドを回避している時点で、それが一番のメリットとも言えるのですが、いくつか書きます。

まず、気高き女・福田萌子ファンの支持を得られたまま終われます。男に媚びずに番組にも媚びないということでスカッとするという、これまでにない層の新規女性ファンを獲得できる面もあります。
さらに。

僕はこれが最大のメリットだと思いますが、バチェロレッテ2、およびバチェラーシリーズに主人公として参加応募してくれる人が増える可能性があがる。
分かりのように、この番組は人材不足に苦しんでいるんですね。特に主人公。
そりゃみんなが求めるような魅力があり、かつ結婚願望がある人を見つけなければいけないわけなので、探してくるのが大変です。そういう人は実社会で結婚できるから番組に出る意味がないので、出てくれないんです。
そうなると、「魅力があるけど、結婚願望がない人」か「魅力がないけど、結婚願望がある人」の中から選ぶことになります。
後者は出てもらえる可能性があるけど、ポンコツなので内容的に厳しくなりますね。
前者は願望があるふりをしてもらえればいいだけなのですが、本当に心が動かされなければ「番組後に別れる」というイベントがやってきます。
リアリティショーのための疑似恋愛だとしても、交際相手を振るのは結構精神的にダメージはあるはずです。いくら売名で出ても、そういうことをしたくないというのが人情じゃないでしょうか。
「番組が終わったあとに、最後に選んだ人と結婚しなくていいですから。別れていいですから」ってスタッフに言われても、参入障壁はやはり高いんです。

ところが。
今回で「番組の収録中であっても、最後の最後、気に入る参加者がいなければ、無理に選ばなくてもいい」という前例ができてしまいました。
主人公に負わされる責任は激減するので、「試しに出てみて、いい人がいたらいいな」くらいのノリで出てくれる「魅力的な人」が増える可能性があるんです。

ライトに参加できるようになる。
これ即ち「量産化」への道が見えてきます。

真剣みが薄れると緊張感が減るかもしれませんが、どうせ元々下世話な婚活バトルなので、好きな人はグダグタ言いながら見ます(僕もずっと見ると思います笑)。
ビジネスとしては継続できるので、ものすごく大きいメリットです。
そういう意味では、実によく出来たシリーズです。「内容は失敗」でも「ビジネスとしては成功」と言えるものだからです。

ここまで、制作者の意図を分析してきました。
唯一の懸念は、MCが真剣に見てくれなくなるというのはあります。ナイナイの岡村も半分本気で怒っていたと思います。ちゃんとコメントできる人ほどカネや立場に困っていないので、次は出ない可能性ありますけどね(笑)

これで終わりにしようと思ったのですが、最後にちょっと怖い話があるので、また後ほど。

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